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可愛いし

 お城に着きました。

 そして現在、秀人は城の中を歩いていたわけだが。


「ゲームに出てきそうなお城、そのものだよな。装飾品とかも。赤い絨毯のひいてあるし……」

「どれもとても高価なもの……という事になっているわ」

「なっている?」

「……私が通る場所は全部強化された偽物なのよ? 察して」


 そう笑うノエル姫だが、今の話からもかなり活動的なお姫様に思える。

 秀人は、好みのお姫様だな……と思っていた。

 一応、秀人は健全な男子高校生なので、尽くしてくれる女性もハーレムも魅力的だ。

 但し、現実で考えるならば、そんな従うだけの存在はつまらないように思う。

 とはいえお姫様が現実的に考えて、異世界のぽっと出の自分みたいな人間を相手に出来るのかと考えると、やはり高嶺の花だなと思った。そこで、


「どうしたの? 私の顔を見て」

「いや、さっきのお付の子は来ないんだなって」

「メアの事? あの子なら、貴方が泊まる客室の用意に行っているわ」

「そうなのか」

「何? 貴方もメアの事が気になるの?」


 そう何処か拗ねたように口を尖らすノエル姫に、秀人は首をかしげる。


「いや、居なかったから聞いただけだが……彼女、人気があるのか?」

「そうよ。可愛くて女の子っぽくて、少しおどおどしているのが小動物ぽくって守ってあげたくなるそうよ」

「そういう趣味の人なだけだろう」

「……でもちょっといいかなって、私が思う相手は皆メア目当てだから。なによ、私が女と思えない、よ」

「……一体お姫様は何をやっていたのか、そちらの方が俺は気になるな」

「……言いたくない」


 ぷいっとそっぽを向いてしまうノエル姫。

 けれどその様子を見ると、膨れた表情で美少女が台無しだが、逆に愛嬌があるように思う。なので、


「そうかな、見る目が無いんだろう、ノエル姫は可愛いし」


 と、フォローのつもりで恥ずかしいのだが秀人はノエル姫を褒めた。

 随分と気に病んでいたようだったので、という単純な気持ちだった。 

 けれど次の瞬間、一緒に案内してくれていた兵?の人も含めて、ノエル姫が驚愕の表情で秀人を見る。


「……今なんていった」


 そんなに特別な事を言っただろうかと秀人は不安になりながら、


「えっと、あの……ノエル姫が可愛いと」

「……可愛い、だと?」

「……はい」

「この、羊の皮をかぶった狼どころかドラゴンだ! と言われる私を可愛いですって!」

「は、はい」


 若干押され気味な秀人は、ノエルのその言葉に、この子本当に何やっていたんだろうと不安になりながらも、美人だから許すと思った。

 というか、こんな綺麗なお姫様に、そういう悪口を言う奴の方が酷いなと秀人は心の中で思う。

 それに先ほどから秀人を見るたびに、ノエル姫が顔を赤らめていて……もしやこれは人生初の恋愛フラグと言う奴ではなかろうかと秀人は思い、よっしゃー、と心の中で叫んだ。

 そこで大きな扉の前にやってくる。

 いかにも王様が座っていそうな雰囲気のある部屋だった。


 



「あー、ちょっと待ってまだ準備が……」


 入った早々王様らしき人が慌てたように偉そうな服を着て、玉座に着いた。

 

「あれが私の父、ミース王です」

「ミース王だ。すまない、突然の事に用意に手間取って……まさか本当に勇者が来るとは思わなかったから」


 そう笑うミース王は、確かにノエル姫に似ている。

 けれど勇者がくるとは思わなかった、の下りに秀人は疑問を覚えて、


「どういう事ですか?」

「いや、何、勇者召喚に使う藁人形が、魔道研究所が襲撃された際に随分と破壊されてしまって。一応何体かはこの世界の何処か放り出す形で保護していたのだが、まだ回収はできていないし、それを作る研究所の復旧にも時間がかかりそうだから当分無理だなと諦めていたのだよ」

「そうなのですか……俺が藁人形……」


 なんだか変な設定が出て来たなと秀人は冷静に思ったが、しかし藁人形とは思わなかった。

 そうか、俺は藁人形なのか。

 藁人形と聞いて真っ先に思い浮かべるものといえば、呪いの藁人形だがあれなのか。


 ……。


「……冗談が面白くないです。どう考えても俺は藁人形なんかではないでしょう」

「いや、本当なんだ。きちんと彼らに見せてもらったし、彼らの説明ではこの世界の君は藁人形だ。でもって勇者だ」

「……夢ですね。異世界に来た気がしましたがこの展開のおかしさは、どう考えても夢だ」

「いや、本当だって……ああそうだ。彼はまだ来てくれないのかね?」


 そう傍の衛兵に聞く王様に、衛兵は首を横に振る。

 そんな王様に、秀人は夢だと思ったので不躾に聞く事にした。


「彼とは誰ですか?」

「なんか、異界の貿易会社の方です」

「は?」

「何でしたっけ名前は……タナカマサキだったような気が」

「……夢確定だこれは」


 そう、秀人はあの変な紙を渡してきたクラスメイトを思い出す。

 同時に、部屋のドアが勢いよく開かれたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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