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にゃー

 さてさて、秀人達は暫くここを拠点にする旨を異世界貿易会社ゴランノスポンサー開発部の女性達に話すと、


「試し打ちには丁度良いんじゃない?」

「色々頑張ってやったものねー」

「そうそう、“賎しき者共”だけに設定はしてあるけれど……」


 そこで、彼女達は少し黙ってうーん、と考えてから、


「……一応矢を打った後は、矢と“賎しき者共”の間には入らないようにしてね」

「……入ると何が起こるのでしょうか」


 不安を覚えて、秀人が問いかけると、


「万が一の事が起こらないように。こういった矢とかの魔道具は、確かに“賎しき者共”を攻撃するようにはできているけれど、だからといって適当に扱うのは良くないわ」

「危険なものを扱っている自覚を持てと?」

「うん、ほら、薬品とか危険なものが多いでしょう? それがどういった性質を持つのかを知らないと危ないでしょう? 危険なものを扱っている自覚や知識を持ちながら、何が起こるかを推定して防備して、正しく取り扱う……結局、自分の身を守るのは自分でしかないからね」

「……説明書は、ありますか?」

「それは新開発の矢だから無いわね。でも試し打ちは何度かしたから後は実践によるかな」


 と言われてしまった。そして秀人はノエル姫を見て、


「危ないからその矢は……」

「試し打ちして大丈夫だったんだから大丈夫でしょう。でも、さっきの話を聞くと、前の矢よりも強いように聞こえたけれどどうなんですか?」


 けれどそのノエル姫の問いに、異世界貿易会社ゴランノスポンサー開発部の女性達は笑うのみだった。

 つまり前回よりも火力が上がっていることになる。でも、そうなってくると、


「……俺、必要なんだろうか?」

「良いじゃない。秀人が怪我をする可能性が減るんだし」

「それは、そうなんだけれど……ちょっと良い所をノエル姫に見せたいというか……うわぁあ」


 ノエル姫が抱きついてきた。しかもとても嬉しそうに、


「なに? 何で私の前で格好付けたいの?」

「う……うう……ごめんなさい!」

「あ! ちょっと待ちなさいよ!」


 秀人は判りきった答えを言うのが恥ずかしくて逃げ出した。それを楽しそうにノエル姫が追いかけていく。

 その様子を見ていた正樹が、


「ふ、未熟者め」


 と、偉そうに言っていた。ちなみにそれはミリーが何故か正樹の隣から席を立って何処かに行ってここにいなかったからであって……。

 ちなみにそのミリーは現在気配を消して後ろから忍び寄っていた。

 そしてそのまま正樹を後ろから抱きしめて、ミリーはくすくす笑いながら、


「本当にねー。この程度で声を上げるなんて、お子様ね……正樹?」

 

 ちなみにミリーは現在悲鳴を上げようとした正樹の口を塞いで、楽しそうに笑っていたのだった。






 そんな一連の事があり、一向は宿へと戻りつかの間の休息を得た。

 そして、実力を見るためというノエル姫の母カミーユ及び兵と共に秀人達は街道沿いに歩いてやってきた。

 正樹が方角を確認してから、


「じゃあこの辺で良いかな」

「……その道具は何?」


 カミーユの問いに、これは“賎しき者共”を呼ぶ機械だというと、何でそんな便利なものがあるのよ! 私達は森の中まで分け入って苦労したというのに! と正樹は怒られた。

 そんな事を言われても一応これも試作品なので、正規のものではないと言い返すと、お得意様への贈り物として寄こせと奪われそうになりながら、正樹が逃げ回っていた。

 といった経緯は良いとして、今度の“賎しき者共”は兎のような形をしていた。

 ただし耳が三本あるが。

 とはいえ、以前よりも炎の魔法やら何やらを使い、現れると同時に森林火災である。

 しかも魔力のようなものが以前よりも感じる。

 とりあえずは、凍らせてから倒すかと秀人が考えていると、ノエル姫が、


「早速だけれど私の矢を使ってみたいわ!」

「ノエル姫……どうぞ」


 ここでノエル姫を説得したりする時間は無い。

 それほどまでに、秀人達にその“賎しき者共”の距離が迫っていた。

 そして、ノエル姫が楽しそうに猫のマークのついた矢を引き、そのまま“賎しき者共”へと打ち込む。

 その矢は“賎しき者共”の手前の地面に突き刺さり、そして白い煙が回りに広がり鳴き声がした。


にゃー


 数十匹という色とりどりのとても可愛い猫ちゃんが、一列に“賎しき者共”の前に現れたかと思うとそのまま口を開けて、自分の背丈の数倍とも言うべき火柱を放出した。

 猫レーザー? 猫火炎放射? などというわけの分らない言葉が秀人の頭を駆け巡る。

 轟音と共に、“賎しき者共”の悲鳴が聞こえて……その炎が収まり、猫ちゃんがふっと消える頃には、“賎しき者共”の影も形もなくなっており、代わりに木々が燃えていた。


「氷の魔法を……」

「ついでに、結界を張って酸素の供給量を減らそう。確か物体に張り付くように結界を張る魔法があったはず。確か、“透明なラップの魔法”だったかな……空気が入らないバージョンの方」

「……酸素の供給とか、この世界の法則は俺達の世界と同じなのか?」

「似ているから応用が利くんだよ。早く!」


 そう正樹に急かされて、氷の魔法を発動させると同時に、変な結界の魔法を秀人は発動させた。

 変な結界の方は、食品の鮮度を保つのに便利と書かれていたが、それってこの中にいれる必要があるのだろうかという疑問を抱くものの……そういえば秀人が使っているのはマッチに火をつける魔法だったと思い出した。

 使えれば良いかと割り切って、秀人はその魔法によりどうなるかを確認する。

 確かに、凍らせ損なった火も消えているようだった。


「……そういえば、火に水をかけて火が消えるのって、水が気体になるときに体積が膨張するから、それによって酸素と結びつけなくならからだったよな……水の冷却効果ではなく」

「そうそう、それそれ。でもまあ……このノエル姫の矢、えげつないな」

「そうだな。男性の作ったものよりも可愛くて容赦が無いとか……素敵な女性の方々だ」


 ある種の達観を覚えて秀人は呟く。

 けれどそれを聞いていたノエル姫が、


「秀人、何で私以外の女性を褒めるの?」

「え? 今の多分褒めていません」

「そう? そう……ならいいけれど……」


 そう、腕に抱きついてちょっと不機嫌そうなノエル姫。

 これは、恋愛にありがちな嫉妬というものですか! とちょっと秀人が嬉しく思っていると、そこで嘆息する声が聞こえた。


「……ノエル、貴方が倒したら秀人の強さが分らないでしょう?」

「で、でもお母様。私もまだこんなに威力があるとは知らなくて……」

「相変わらずあそこは予想を超えることをしでかすわね」

「それに、秀人はちゃんと魔法を使ったじゃないですか!」

「後始末をできるだけの力と頭がある事は分ったけれど、肝心の戦闘能力が分らないわね」

「うう、でもこの矢さえあれば自分の身は守れるよ?」

「約束は約束だから……なんですか? 勇者秀人」


 そこで、すみませんと秀人は声をかけてから、


「もう少し先にまた新しい巣があるようで、そちらの方が大きい魔力の反応がありますから、そちらで判断していただけませんか?」

「……好きな相手を、危険に曝す気?」

「好きな相手だから守れる所しか連れて行きません」


 そう、秀人は言い返して、ノエル姫は目を輝かせたのだった。


次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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