お手伝いするよ?
その言葉に振り返った正樹に抱きついている女の子は、ノエル姫を見て、
「あら、ノエルちゃん、お久しぶり。……そういえば勇者様が来たんだって?」
そこで彼女は秀人の方を見て、ぱあっと、目を輝かせた。
「何だか強い魔力を感じるわ! 貴方も私のお嫁さんにならない!」
「えっと……え?」
「素敵な男性を捕まえるために私は日々努力しているの!」
その話を聞きながらミリーとやらを秀人は見て、にっこりと微笑む。
ノエル姫とはまた別のタイプの美少女だ。
そして彼女にとって正樹は素敵な男性という事になる。
世の中色々な女の子もいるし、それに綺麗な女の子に好かれるなら別に良いように秀人は思うのだが……。
というよりも、正樹が贅沢すぎるような気が秀人にはした。
とはいえ今の発言を聞いていると、二股宣言に聞こえるが……いいのか?。
そもそも嫁って何だ嫁って。婿だろ? と、秀人は悩む。
そこで、ノエル姫が焦ったように、
「ひ、秀人は私の恋人なんだから、手を出しちゃ駄目!」
「ええ! ノエルちゃん、恋人が出来たの? うわー、羨ましい……私なんて全然正樹は相手にしてくれないどころか逃げ回りやがるし……」
「……ミリーちゃん、秀人に手を出さないなら私もお手伝いするよ?」
「えっ! 本当? だったらこいつ連れて、何処かのホテルでも……」
「分ったわ! じゃあ私、足を押さえるわね!」
「やめてー!!!!!」
正樹が涙ながらに叫んでじたばたする。
それに手伝いにいこうとしているノエル姫を、流石に秀人は可哀想に思ったので、
「ノエル姫、流石に正樹が気の毒です」
「なんで? やっぱり愛は素晴らしいいものだと思うの。だからミリーちゃんのお手伝いをしたいの」
「……正樹が嫌がっていますから」
「……嫌よ嫌よも好きのうちだって、ミリーちゃん前に言っていたけれど」
「……えっと、ミリーさん、そういう事されると正樹に余計に嫌われますよ」
その言葉にミリーがはっとしたように秀人を見て、それから正樹を見て、
「でも、最近の男子って自分から女の子に声をかけられないから、女の子からアタックしないと手に入らないでしょう?」
「……正樹、正論を言われているような気がするんだが」
それにしばし正樹は考えてから、
「……尻に敷かれて首根っこつかまれそうなんだもん。もっと大人しい子が良いです」
「正樹、女の子が大人しいはずないからね? 大人しく装っているだけなんだから」
夢の無い説得力の有る発言に、正樹は必死になって抵抗する。
「でもこの世界のどこかで僕を待っていてくれる、大人しくて清楚な女の子がいる気が……ぎゃああああ」
そこで正樹は、ミリーにぎゅうっと捕まれた。
「いい加減諦めて私のお嫁さんになりなさいよ!」
「嫌だぁあああ」
正樹がじたばたじたばたしている。
それを見ながら、そういえば、異世界人なのでそこそこ魔力が強いはずなので、その力を使って正樹は逃げられるはずだと秀人は気づいた。つまり、
「正樹は、自分から捕まっているんだな」
「本当! だったらそう言ってくれれば良いのに! さあ行きましょう旦那様!」
「秀人の裏切り者おおぉぉ」
「いや、だって、本気になれば振り払えるだろう? 異世界人で正樹だってそこそこ魔力はあるんだろう?」
そんな秀人の言葉に正樹は少し黙ってから、
「……女の子に暴力はふるえないじゃん。男として、最低だし」
「やっぱり正樹、好きだわぁ! 優しい男って好き!」
「放せえええええええ」
ミリーは顔を赤くして、嬉しそうに正樹に抱きついた。
反対に正樹は焦ったようにもがいて、けれど心なしか頬が赤い。
そんなミリーにそういえばと秀人は思い出して、
「所で、俺に嫁になれってどういう意味ですか?」
その言葉に、ぴたっとミリーは動きをやめて苛立ったように、
「……貴方も私の事、男らしいって言いたいの?」
「え? だってさっき俺に嫁になれって、言っていたじゃないですか」
「だから、お嫁さんだってば」
「お嫁さんですよね?」
「だから、嫁だってば……分らない人ね!」
そう怒り出すミリーに、秀人は少し考えてから正樹に、
「正樹、嫁と婿の変換が逆になっているみたいなんだが」
「……なるほど。それで、ミリーは嫁って言っていたのか。はあ、もしかして女の子に囲われる羽目になるんじゃないかと僕は不安だったけれど、この可能性はないのか……」
何処かほっとしたような正樹。
それにミリーは正樹に向かってにっこりと微笑み、
「別に私は、正樹を囲っても良いけれど?」
「放せぇぇぇえええ」
正樹がもがいた。
とはいえ、嫁と婿が逆となると、プロポーズする時、彼女に向かってようは『僕のお婿さんになってください』となるわけである。
もしかしてというその時にそうなれば、往復ビンタの応酬を受けるのは仕方がない。
しかもされた男も、どうして彼女がそんな行動に出たのかわからないという……恐るべし、誤変換、そう秀人が考えて、ついでに先ほどの二股発言についても聞いておこうと思った。
もしかしたら誤変換かもと思って秀人は、
「何で俺にも二股宣言したのですか?」
「うちの国の法律で、女は男三人と結婚できるの。女性の個体数が減っちゃってどうしようもなくて」
「……そうなんですか」
「それにうちは不景気でね。技術の頭打ちなんて言われていたけれど、そんな簡単な問題じゃなかったのよね」
そう、ミリーが疲れたようにポツリと呟く。
その話に、良い事思いついたというかのように正樹が顔を上げて、
「僕、一夫一婦制が好きなんです!」
「あら、正樹が私の事を最後の女にしてくれたら良くってよ?」
「いやあああ、止めぇええ」
ふふっと笑って病んだように正樹を見つめるミリー。
正樹は更に顔を白くしてじたばたしている。
そしてその話を聞いていて秀人は気づいた。
「ノエル姫、この国は女性は何人でも結婚できるのですか?」
「うちは違うわ。でも、ミリーはそうね。魔族……それも、魔王の娘だから」
ノエル姫は、秀人の質問にあっさりとそう答えたのだった。
次回更新は未定ですがよろしくお願いします。




