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ヒント

 さてさて、そんなわけで次の町へとやってくると、夕暮れ時になっていた。

 

「これじゃあ、秀人と遊びに行けないわね」

「え?」

「なによ。空いた時間はデートしてくれても良いじゃない」

「あ、はい。そうですね、はい……」

 

 それに、秀人は焦って答えた。

 先ほど戦闘していたりしたので、意識を少し他の方に移していたのだが……そうなのだ。

 秀人はこのノエル姫と恋人になったのだ。

 そう思った途端、昨日の夜、悶々としていたのと同じ感情が浮かび上がり、秀人は顔を赤くした。

 いつも同じ風なデートばかりだと飽きられてしまうかもしれないし、けれどこの世界のデートってどんなものか秀人には分らない。

 元の世界であれば、映画館とか、遊園地とか色々思いつくのだが、この世界の娯楽ってなんだろうとしばし考える。

 やっぱり公園デートと喫茶店で話をするのが、妥当だろうか。

 でも、あまり同じパターンだと飽きてしまうだろうし、もっと違うコースを考えたり、やっぱり女性をエスコートすべきなんだろうか……と、秀人は真面目に延々と考えた。と、


「秀人ってばぁ!」


 気がつけば、すぐ傍でノエル姫が秀人の顔を覗き込んでいた。

 あ、可愛い。

 そのノエル姫の顔を見て、秀人はそう思ってしまった。

 先ほどから秀人が答えないので、少し頬を膨らませているのも可愛い。

 ではなくて……答えないとまずいと秀人は思って、


「えっと、はい。すみません」

「……どうしたの? やっぱり秀人は私とじゃ迷惑?」

「いえ、あの、その……」

「……もしも無理に合わせているんだったら私……」

「いえ、その……ノエル姫が可愛いなと思って見とれていたというか、すみません! 俺、恋人とかの経験は初めてで……ノエル姫?」

 

 そこでノエル姫の様子が何処かおかしい事に秀人は気づく。

 ノエル姫は顔を赤くして、口が少し半開きでとても驚いているようだった。

 そして、そのまま秀人にノエル姫は抱きついてきた。


「秀人、可愛い! もうなんでこんなに可愛いの!」

「え! ノ、ノエル姫」

「男ってこんなに可愛い生き物だったのね! あ、でもさっきの“賎しき者共”と戦う秀人も強いっていうか男らしかったし……もう、大好き!」


 そうぎゅうぎゅう、ノエル姫は抱きついてくる。

 もう勘弁してくださいと秀人は思った。

 今現在、ノエル姫の胸が顔に当っているのである。それもむにゅむにゅと。

 大好きと繰り返し言う事にノエル姫は夢中になっていて、秀人のその惨状というか、ご褒美に気づかないのだ。

 正直秀人も、こんな可愛い子にこんな事をされるのって天国だろうかと思った。

 そこで、ノエル姫はようやく秀人に抱きつくのを止めて、


「それで、どうする? 明日のデート」


 そして、ここまでされたのなら、男としてノエル姫のエスコートをすべきと秀人は思った。

 なので正樹に、


「……俺はこの世界の文字が読めるんだよな?」

「そういう翻訳機能は付いているよ。つまり本屋に寄りたいって事か」

「察しが良いな。ノエル姫、俺が、明日のデートコースを決めます。ノエル姫が楽しめるように頑張ります!」

「私のために?」

「はい!」


 ノエル姫がとてもとても嬉しそうな顔をして、秀人に少し恥ずかしそうに微笑んだ。

 やっぱり笑った顔が可愛いなと思いつつ、秀人は馬車が町に着くなり本屋へと飛び込んだのだった。






「なるほど、この建物か。ふむふむ。あ、ここの花が今の時期見ごろだ……」


 ガイドブックを五冊ほど購入し、ついでに傍で売っていたペーパーナイフも買った。

 そして現在、秀人は宿のベットの上で、ペーパーナイフでページを切り分けながら、ぶつぶつと独り言を呟きながら読んでいた。

 夕食を食べた後のこの時間、ずっとヒデトは悩んでいた。

 その一方で、田中正樹がスマホもどきを見て心なしか顔を蒼白にしながら秀人に、


「程々にした方が良いよ」

「……わかっているさ。ここが異世界だって事くらい」

「いやまあ、女の子に追い掛け回されるのも大変だよって話」

「……女の子とそういうイベントがないんじゃなかったのか?」

「……僕にだって好みがあるんだよ。僕は大人しくて清楚な子が好きなんだ。間違っても初対面で、男を捕まえて婿にしようとする女の子は嫌なんだ」

「どうしたんだ急に」

「……なんでもない」


 そのまま黙ってしまう正樹。

 そこで、秀人は聞いてみる。


「……ノエル姫とかの武器も含めて、こんなチートっぽいものばかりで良いのか?」

「僕達は勇気と努力では勝てない事を知っているんだ。要は現実主義者だって事さ」

「夢も希望もないな」

「夢見がち過ぎても困るだろう?」

「……やっぱり夢を見るなら物語の中か……でも俺、ノエル姫との今は、凄く幸せだ」

「いいんじゃない? お互いが好き合っているんだし」

「そうだな……所で、正樹ならデートに何処に誘う?」


 それに正樹は少し考えてから、


「共感できる場所かな」

「共感?」

「そう、好きな子が楽しいと思っているのを自分も楽しんで、ついでに好きなこの笑顔が見れる所、かな」

「なるほど。共感できる場所か。でも、ノエル姫って何が好きなんだろうな」

「さああ。基本的に女の子は可愛かったり綺麗だったりするものが好きだから、それをえらんだらいいんじゃない?」

「そうか。可愛くて綺麗なもの……お花とかかなやっぱり」


 そう今のをヒントにページをめくる。

 結局三箇所ほど決めて、そのページの端を折り、秀人はその日眠りに付いたのだった。

カテゴリーをファンタジーから冒険に少し変えます。すみません

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