失敗作の魔方陣
正樹がやけに楽しそうににこにこ笑っているので、秀人は聞いてみた。
「何が分ったんだ?」
「彼らは、“賎しき者共”が出現する場所に数回遭遇していたんだ」
「知ってるが……それがどうかしたのか?」
「結構前から、自前でこの国の魔道研究所は異世界償還の魔法の研究をしていたのは前に話したよね?」
「ああ。でも失敗なんだろう?」
「そうだね、でも……失敗だと思われていた、が正しいかな」
「どういう事だ?」
そこで、正樹が何やら紙を取り出した。
紙にはゲームか何かに出てくるような魔法陣ぽい絵が描かれていた。
「これは?」
「失敗作の魔方陣。ようやく一つだけ出してもらえてね。というか、失敗作の資料がこれ一枚しかなかったのもあるけれどね。魔道研究所が襲われた事で」
「なるほど。でも失敗作を調べてどうするんだ? 失敗だったんだろう?」
「正確には、失敗作だと思われていた、という事なんだ」
その言葉に秀人は、そういえば魔道研究所の周辺に“賎しき者共”が多いと聞いたのを思い出して、
「まさか、別の場所に召喚していた、と?」
「そう、飲み込みが早いね。幾つかの要因を計算して、出現ポイントを割り出してみたら、その地点に一致してしまったんだ。その時期に使われていた他の魔法陣の資料が分れば、更に確実な証拠が分るはずなんだ」
「でも、どうして“賎しき者共”が召喚されたんだ? もっと違うものを呼べばよかったのに」
「違うものというよりは……まずは何かを召喚できる様にというのが当初の目的で、“賎しき者共”を呼ぶつもりはなかったらしい」
「なるほど。選んで呼び寄せるだけの魔法技術がこの世界にはないと」
「うん。ただ、その魔法陣の概念が僕たちのものとは違う概念で作られたから、見たうちの会社の人は、なるほど、賢いなと驚いていたらしい」
「そうなのか。それで、次はどうするんだ?」
何となく行く場所の目的が決まった気がして、秀人は尋ねると、
「魔道研究所を目指す事になりそう。ただ、襲撃もあって今まで以上に大量の“賎しき者共”がそこに集まっているみたいで、先発の人たちも……彼らの場合別の理由があるのだけれど、引き換えして今城に戻ろうとしているらしい」
「じゃあ、その人達に話を聞いた方が良いな」
「うん。ちなみに、その人達にノエル姫のお母さんがいるけれどね」
「え……」
秀人はえっと思った。
現在ノエル姫とお付き合いする事になっている状態で、ノエル姫の母親に会うのである。
別に特に問題はないはずなのだが、それを考えると緊張してしまう。
それが分っているのか、正樹がにまにま笑って秀人を見ている。
そんな秀人に、ノエル姫が肩を叩いて、
「秀人、お母様にも気に入られるように頑張ってね?」
「……はい」
そうノエル姫に言われて、秀人は更に重圧を感じて、何とか話題を変えようとして……そこで気づいた。
「魔道研究所にそんなに“賎しき者共”が多いって……最後の方は、特に強い魔法陣というか、大量に召喚するようなものじゃないのか?」
「それなんだよね。最近やけに“賎しき者共”がこの国周辺で増えた気がするし」
「そういえば、ノエル姫と出会った時に沢山の“賎しき者共”に襲われていたよな。確かそれまではあんなに多くなかったって……」
「……早めに調べたほうが良さそうだ。その魔法陣が、襲撃された事によって破壊されているならまだしも、まだ機能していれば面倒だから」
その正樹の言葉に頷きながら、秀人は何か引っかかるものを感じた。
それが何だろうと先ほどの話しをまとめて考えてみて、
「でも、そういえば、そうなってくるとこの国周辺以外でも“賎しき者共”が現れているのはどういう事なんだ?」
「……技術って、他でも大抵同じようなものを研究していたりするんだよね」
「なるほど、だから一つの会社がある技術を発表すると同じようなのが幾つも他の会社から出てくるわけだ」
「そうそう。とまあ、多分そういう事だから、そちらの方は僕達ではどうにも出来ないので、まずは魔道研究所のお掃除かな」
「そうか。ところで、その魔道研究所って何処にあるんだ?」
「地方の森に近い場所かな。都市近郊は土地の値段が高いから、というのと、色々資源が調達しやすい場所が良いから」
「……そうか。そういえばその魔道研究所は、その……死体は転がっているのか?」
「運の良い事に、全員怪我はしたものの命に別状はないって」
それに秀人はほっとした。
やっぱりそういうものを見るのは、秀人は精神的にきつい。
そこまで話して、大体それで良いかなと思っていると、メアと目が合った。
けれどすぐにぷいっとそっぽを向かれてしまう。それを見ていた秀人が正樹の傍で、
「おい、メアに何したんだ」
「えっとまあ、色々と。ついでに秀人が言っていたように、危ないから勘違いしないように善意で丁寧に、“賎しき者共”が貴方達の力では召喚出来ませんよって説明したんだ。善意で」
「……何故そこを強調する」
「……善意が、その人にとって善意として取られるかは別の話なんだ。でも」
「でも?」
「僕が寝不足だから、それでメアが苛立ったとしてもザマーミロとしか思えない、僕の心の広さって素晴らしいと思うんだ」
「……分った。もう寝ろ、正樹。お前は良く頑張った」
「はあ。そうさせてもらうよ。所で、明日は少し先に進むと思うから、その次の次の町で、多分ノエル姫のお母さんと会う事になるから」
「ああうん、分った」
「他に何かあるかね? ないんだったら僕は寝るけれど」
「そうだな……そういえば、この体が以上に丈夫で力があるみたいなんだが、普通にスプーンとかもてるのはどうしてだ?」
「意識すれば弱くは出来る、そういう便利な体なんだよ。僕達の魔力で出来ているし」
「今一原理が良く分らないが、そういうものか」
「そういうものだよ。駄目だ、眠すぎる。結界張って寝るから、後は好きにしてくれ」
「おう……分った」
そう秀人が答えると、正樹は自分のベットに潜り込んで結界を張り、すぐに穏やか……ではない寝息を立てていたのだった。
次回更新は未定ですがよろしくお願いします。




