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恋愛フラグ

 現在秀人は眠気が吹っ飛んで、同時に自分が何かを聞き間違えたのではないかという衝動に駆られた。

 なので、秀人はノエル姫に、


「ノエル姫、今、何とおっしゃられましたか?」


 敬語になってしまうのも仕方がない。

 だって、初めてなのだ。

 異性と二人で出かけるという、伝説のイベント。


 その名は、“デート”。


 すでに都市伝説ではないかという疑いの眼差しを持ちながら、けれどどこかで希望的観測を持ち続けて幾星霜。

 とうとう、そう、とうとうやってきたこの俺の時代がぁあああああ。

 ……。

 そこまで考えて、秀人はまだ舞い上がるな、まだデートと確定したわけではなく、そう、そう、例えばお買い物の荷物持ちをお願いしたいなというお姫様からのお願いとか、護衛してくれという話なのだという解釈も成り立つ事に気づいた。

 所謂、解釈の相違というやつで、それは秀人の望んだ意味ではないという悲しい現実が目の前に、それこそ切り立った崖の上と下のような差があると如実に示されていると言う……そろそろ秀人は自分でも何を考えているのかわからなくなってきた。

 そんな顔を赤くして慌てて聞き返す秀人に、ノエル姫が、


「秀人と二人っきりで散歩したいなって」

「ぜひ、お供させていただきます」


 そんな即座に答える秀人に、ノエル姫も何処か嬉しそうだ。そこで、メアが、


「では私がお供を。二人きりなど危険です! 男は野獣なのです!」

「秀人は大丈夫だよ。そうだよね?」


 速攻で大きく秀人は顔を縦に振る。

 その様子を冷たい目で、メアに見られたが、そこで正樹が


「あ、メアからも事情聴取するから今日一日ここで待機だって」


 そんな正樹を恨めしそうに見るメア。けれど正樹は正樹で、


「君達のおかげで今日は徹夜だよ。文句を言われる筋合いはないよ」

「……この世界に突然やって来て、変な技術を振りかざして……お前達の方が、“賎しき者共”よりもよほど危険に私には見えるわ!」

「あのね……例えば、君みたいな一般人が、王様と対等に出来ると思う? 出来ないだろう? けれど、王は確かに怖い存在かもしれないが、同時に君達を守る存在でもあるだろ?」

「何が言いたいのか分らないわ」

「力が強い弱いで考えるのではなく、有益かどうかでも考えて欲しいな」

「お前達が我々の世界に有益だと?」

「そちらにも旨みがあるんだから有益だと思うけれど」

「信用できるか」

「出来れば信用して欲しいけれど、それはゆっくりとで良い。今は、君からお話を聞くことの方が先だからね」

「私が素直に話すと思うのか? その考え自体が浅はかだと思わないのか?」

「へー、うん。いいよ。ふーん」


 とか何とか言って、正樹がメアに何事かを囁くとメアが顔を蒼白にして大人しくなった。

 それを確認してから、秀人とノエル姫はこの部屋を後にしたのだった。





 外に出たのは良い。

 昼間のせいか、人が多く、そこら中にカートやらなにやらで、花やアクセサリー、果物、野菜が売られている。

 現在秀人はノエル姫に手を引かれながら、町を歩いていた。

 理由は、この町に秀人は来て事がなく、手を放して道に迷わないようにと、ノエル姫に握られたのだ。

 柔らかくて、温かくて、そして少し小さいノエル姫の手が、秀人の手を握っており、


「次はあそこのアクセサリーのお店を見に行きたいな」


 と、微笑みながら、嬉しそうにはしゃぐ可愛いノエル姫。

 秀人は、そんなノエル姫の笑顔に魅せられながら、やっぱりこれってデートだよなと思ってしまう。

 途中、クレープのような甘いお菓子を買って、二人で食べあいながら、やがて公園のような場所に出た。

 座れるベンチのようなものもあり、そこで一息つこうかという話になる。

 そしてベンチに座ったままでもノエル姫は、秀人の手を放さなかった。

 だから、秀人も無下に振り払うわけにも行かない……という理由で自身を納得させながら、秀人はノエル姫の手を握っていた。

 そしてそのまま暫く無言で二人でいる。

 空は、上空では風の流れが速いのだろうか、白い綿菓子のような雲がみるみるうちに流されていく。

 そこで、ノエル姫がポツリと、


「ごめんね、私ばかり楽しんでしまって」

「いえ、でも、はしゃぐノエル姫も可愛かったし……それを見ているのも、俺は楽しかったというか……」


 そんなノエル姫に気を使わせてしまったと、秀人は慌ててそういうも、そこでのエル姫は、


「……秀人、私ってそんなに可愛いかな」

「……えっと、その……俺にはそう見えました」

「じゃあ、秀人の前だから、私は可愛くなっているのかな」

「え、あの……」


 それはどういう意味かと聞こうとして、秀人はそれを言わせるのは失礼なんじゃないかと思って口をつぐむ。

 多分、ノエル姫は秀人の事が好きなのだ。

 それが分らないほど秀人は鈍感ではない。けれど、


「俺、異世界人で、この世界では藁人形らしいです」

「うん、知ってる。いずれもとの世界に帰っちゃうんだよね」

「僕の帰る場所は、あちらですから」

「帰る場所があるから、帰っちゃうんだよね。はあ……よし、決めた!」


 そこで、ノエル姫はすくっと立ち上がり、新緑の色をした瞳が面白そうに瞬いて秀人を見た。


「……秀人、この世界に居る間、秀人は私の恋人というのはどうかしら」

「え? でも姫様は、許嫁とか……」

「私があまりにも落ち着きないから、皆断られてしまったわ。それに、どうせ帰ってしまうのだから、ほんの少し秀人がこの世界にいる時間を頂戴?」

「あ、ええっと……」

「……皆散々私の事を言うからさ、秀人のその素直に真っ直ぐに褒めてくれた事……嬉しかったんだ」

「あの、その程度の事で?」

「駄目かな。それに、彼氏も、私も一度経験してみたいし……それが秀人だったら嬉しいな?」

「ぜひ、お受けさせていただきます!」

 

 秀人は、異世界だという言葉が頭を過ぎったが即座に頷いた。

 活発で可愛くて美人なお姫様恋人……物語のように出来すぎた設定だが、一応この世界には秀人達と同じように感情があるのだ。

 つまり、ある種の現実的なイベントなのである!。

 そんなノエル姫は、秀人のその答えに、それはそれは嬉しそうに微笑んだのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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