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コミュニケーション能力

 徹夜明けの朝の光がまぶしい。


「眠い……」

「僕もだよ。はあ、嫌になる」


 そう嘆息する正樹。

 メアは縛られたまま眠っている。気楽なものである。

 結局、軍も派遣してもらいすぐさまメアの仲間とも思える奴らを捕縛した。

 ついでに彼らのその、謎技術を確認しているらしい。

 あと彼らの組織についてだが……。


「なんか、確かにそこそこ大きいけれど、世界に影響を与えるレベルではないらしいね」

「……そうなんだ。それで、そいつら本当に“賎しき者共”を呼べるのか?」

「さあ。ただ、召喚に必要な魔法関係の知識はあるみたいだから、もしかしたなら出来ているのかも」


 それを聞いて秀人がイメージしたのは、薄暗い研究室で、おかしな笑い声を上げている天才何チャラのイメージだった。

 なので、試しに正樹に、


「あれか、一人の天才科学者がー、うんぬんみたいな、中二病心をくすぐる狂気の天才がいて、みたいな?」

「あれ面白いよね。現実には、複数人でやらないといけないから、会話やらなにやらせざる終えないし。ほら、うちの開発部の人たちみたいに」

「ああ……うん。言われてみればそうだな。一人で出来る事ってたかが知れているし」

「そうそう、例えば、パソコンだって中にあるのは、元をただせば金属だったり、半導体だったり、色々な物が組み合わさっている。それを全て一人でやるのは難しいからね。とはいえ、関連する知識は自然に必要にはなってくるけれど」

「そうだよな。イメージは怖いな。となると……コミニュケーション能力が問題か」

「どうだろう。基本、コミュニケーション能力なんて、そうせざる終えない場所に投入されれば、やらざる終えなくなるのにね」

「そうなのか? そうなると研究室に閉じこもってって言うのは……」

「学生はまず無い、そんな一人一部屋なんてお金が学校には無いし。社会人としてはまず無い、というか一人で一つの研究室もててってよほど優遇されているだろう? そうなってくると、有益なものを作るから社内の人と話す事もけっこうあるだろうから、その時点で、コミニュケーション能力が無いと無理だろうね。つまり一人の狂気の何チャラは、物語にしか存在しない面白生物というわけだ」


 言われてみれば当たり前の事だが、本当に現実にはロマンが無い。

 だが今の話となると、秀人は考えて、


「……じゃあ、コミュ障ってどんななんだ?」

「さあ。実際に会った事は無いから知らないけれど、単に『こいつコミュ障だな』って言っている嫌な奴と話したくないだけなんじゃないかな。他にあるとすれば、話したり出来ない状況に追い込んでおいてそういうレッテルを貼る、とか」

「どんな風に?」

「言ったら重箱の隅をつつくようにあら捜しをする……そんな感じで、徹底的にその人を否定する言動を繰り返す。そうする事で自分が優越感に浸れたり、優秀になりそうなのを潰す事で自身が安泰になるからね。しかも、怒鳴ったり色々すれば、その分教育したように見せかけられて、ストレスも発散、その時間仕事もしているように見えるんだ」

「……何かあったのか?」

「さあ?」

「……お前も大変だな」

「良い人も一杯居るんだけれど、変なのもいるんだ。えっと何について話していたんだっけ。ああ、コミュ障か。あとは……あれだな」

「あれって?」

「人間て結局自身の知識を基にして話しているんだ。無意識の内に」


 意味が分るが、それがどうしてコミュ障に繋がるかわからず、秀人は聞き返した。


「つまり?」

「幼稚園児の集団に、そうだな、火力発電の構造やらなにやら専門的な話をして伝わると思う?」

「そうだな……せいぜい、お湯を沸かして羽をを回すと電気が発電されます、くらいなんじゃないのか?」

「多分ね。それで、火力発電が作れるように、幼稚園児達に理解させて仕事をさせる事は可能か、そもそも会話は成立するのか」

「……よほどの天才なら出来る、か? でも、それが導き出される思考過程や知識は、暗記だけで務まるのか?」

「問題が起こった場合に対応できないし、問題に気づかないだろうね」


 そんな夢も希望も無い話をしていると、なにやら正樹のスマホもどきが、ちかちか光る。


「あ、連絡が来たよ。やっぱり動作しないものだって。呼べたのも偶然らしい。とりあえず全員を牢屋に放り込むんで、ついでに再教育する事になったって。とはいうものの、それを使ってもまったく呼び出せないので全員意気消沈だそうだ」

「そか。じゃあ、メアも牢屋行き?」

「どうだろう。ノエル姫のお世話に適任がいるかどうか……」


 そこでドアが開いて、ノエル姫が立っていた。

 彼女の目の前には、メアが縛られて転がっている。

 それを見てノエル姫が嘆息して、


「メアが何かしたの?」

「いえ、“賎しき者共”を呼ぶ事が出来る怪しげな組織があって、そこに俺が勧誘されて、しかもこの町に“賎しき者共”をけしかけたとか何とか」

「そうなの」

「驚かないんですね、ノエル姫は」

「んー、まあ、スパイみたいのはそこら中にうろうろしているのが城だから。今更かしら。それよりも、支度をして欲しいからメアを起こしてもらえる?」

「……はあ」


 秀人はそう、気の抜けた返事しか出来なかった。






「これからは、一生懸命ノエル姫に使えさせていただきます!」


 ノエル姫の、いつもと変わらないその行動に、メアが感動してそうなった。

 流石にこの展開は無いだろうと思ったが、世の中、想像する以上の事が起こることもある。

 とはいえ、秀人はぼやくように、


「怪しげな組織がっていうのも、ないのか?」

「この世界全体に広がる、怪しい巨大組織があると?。その利益は?」

「異世界からの侵略者」

「無難な考えだけれど、うちの利益確保のために色々やっているので、他の世界はそう簡単に手出しできないんだよね」

「……やっぱりお前たちなんじゃないのか? 異世界貿易会社ゴランノスポンサー」

「だーかーら、違うってば。うちじゃないよ。だからその汚名を晴らすためにも僕達が頑張っているんじゃないか」

「でもこの世界に広く同時に現れたのか?」

「うん“賎しき者共”は、ある時世界で一斉に現れたんだ。僕達がこの世界に来て暫くしてから」

「……お前達が来た事が原因とか?」

「時間差がありすぎるから違うだろうって事らしい。その影響が蓄積されている様子も、今の所無いって。そもそも他の異世界では起こっていないのにこの世界だけって理由が分らないんだよね」

「……他の世界に、“賎しき者共”はいるのか?」

「少なくとも、うちの会社と接点のある世界には無い。だからそれ以外の世界かな」

「そんなにあるのか? 異世界」

「アボガドロ数よりは遥かにあるかな」


 そこで、支度を終えたノエル姫がいつものように入ってきて、


「それで、秀人達は今日はどうするの?」


 そこで秀人はチラッと正樹を見ると、


「待機していてくれって。そのメアの仲間達から話をもう少し聞きたいから。あと、周りを散歩するのはいいって」

「そうなの? 私の弓の出番は?」

「……近いうちに用意しますよ」

「そう。じゃあ待っているわ。あと、秀人、二人で何処か行かない?」


 話を聞いていた秀人に、ノエル姫はそう声をかけたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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