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見える場所

 そんなこんなで、ミシルの町の宿についてから。

 女子部屋と男子部屋の二部屋を頼み、現在男子部屋の方に四人は集まっていた。

 秀人の隣にはノエル姫が座っており、秀人ににこっと微笑んだ。


「秀人、凄かったね。でも、次は私に弓を使わせてね?」

「……ノエル姫が安全な場合には、よろしくおねがいします」

「もう、一緒に援護してとか戦ってっていってくれないの?」

「いえ、やっぱり……格好良い所を見せたいですし」

「誰に?」

「ノエル姫に……なんて、ははは」


 冗談と誤魔化そうとした秀人だが、ノエル姫にきらきらした目で見られた。


「やっぱり秀人は素敵。私の事、女の子扱いしてくれるし、優しいし……よし、私も頑張るぞ!」


 ノエル姫がやる気を出すのを微笑ましく見ながら、秀人は彼女の父親に念を押されていた事を思い出した。

 けれど、まあ、これくらいなら良いかなと自分に甘く秀人は考えて、ノエル姫から目の前の正樹とメアに目を移した。

 その正樹は顔を青ざめさせており、メアはいつも通りほんわかしていた。

 けれど正樹が少しでもメアから逃げ出そうとしているその様子に、そういえばメアは切れると怖いといっていた事を秀人は思いだした。 

 なので、メアを秀人は見てみるが、


「どうかなさいましたか?」

「あ、いえ、可愛いなと」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 はうっ! そんな事は無いです、と焦ったような態度ではなく、そう大人な対応をされてしまい秀人は黙った。

 ドジっ子ってもしかしてこのメアはわざとしているのではないかという疑惑が浮かんできて、秀人は考えるのを止めた。

 ノエル姫も秀人を睨んでいるし。

 というわけでようやく本題を秀人は正樹に聞いた。


「それで、どうして一般人がいると都合がいいんだ?」

「人間て、見えない所でも良い事をするのが大切だっていうけれど、見える場所しか評価してもらえないんだ。まあまれに気づく事もあるけれど、アピールしないと」

「つまり?」

「同じするなら、そういう風に見える人がいる所でやらないと、勇者は何もしていないじゃないかって事になるんだ。これだと、不安を抑えるという意味での勇者の存在意義がなくなってしまうから」

「ああ、なるほど。でも、そんなに倒していないんだが良いのか?」

「倒しているだけましだ。どうでも良い、見かけの良さそうな事ばかり言ったりやったりしていて、そういう本当の意味で必要な部分は大変そうだからとやら無い奴等よりは、ましだからね」

「お、おう。……でも勇者って、そういうのなのか」

「どの道、秀人の力と僕の力、ノエル姫の弓やらで、チート装備だから、けが人はほぼ出ないだろう」

「う、うん、そうだな」


 なんだか正樹の目が据わってきたので、秀人はそこで話を止める。

 代わりに別の質問をした。


「それで、馬車で正樹は何か変なものを使っていただろう。そうしたら“賎しき者共”が現れた気がするんだが」

「うん。呼んだからね」


 あっさりと頷く正樹に秀人の目が険しくなる。

 そんな、“賎しき者共”を操られるって……前は出来ないといったのにこんなに簡単に矛盾が生じる。

 そうなってくると、答えは、


「……やはりお前らが黒幕か。操れないんだろう?」

「ち、違う、そうじゃなくて……。ほら、呼ぶだけだしこれもまだ試作段階だし」

「それを信じろと?」

「操れるだけの“賎しき者共”の知識は僕たちにも無いよ。あんなもの初めてだって皆言っているし」

「……でも呼び寄せるんだろう?」

「呼び寄せるというか、“賎しき者共”の感じる、所謂“人間の気配”を強めて集めるだけだから」

「……それだと確かに操るとはいえないか」

「そうそう。で、どうしてこれを使うのかというと、“賎しき者共”の巣が街道沿いにあるとは限らないじゃないか」


 言われてみればたまたま襲われただけで、街道近くにあいつらがいるとは限らない。だが、


「でも餌が人間なんだろう? だったら街道沿いにいるんじゃないのか?」

「遠すぎるとその“賎しき者共”は人間を探知できないようなんだ。そして移動する事もあるけれど、だからといって街道近くに辿り着けるかは別なんだ」

「……その現れる場所に規則性は無いのか? “賎しき者共”の巣は」

「今の所見つけられてはいないな。唐突に現れるからね。そんなわけで、あちらから出て来た所を叩くのが良さそうだろう。それに、その呼び寄せ機の力がどの程度の“人間の気配”の大きさで、どの程度の魔力量の“賎しき者共”を呼び寄せられるのかが確認できる。また、探知レーダーには移動と魔力量が反映されているのかを確認が出来る。そうすれば更に装備が良くなるんだ」

「一石二鳥という事か。というか、その呼び寄せ機も試作品なのか……」

「奴らが現れたのはつい最近なんだから、仕方が無いじゃないか」


 そうむっとしたように正樹はコップに手を伸ばして、けれど飲む必要が無い事を思い出したのか手を引いた。


「それで、他に何か聞きたいことがあるかい?」

「……伝説の剣て言っちゃっていいのか?」

「……この世界に時空操作系の魔法があるかは知らないけれど、そうでないと劣化していて使えないだろうからね、昔の武器は。加えて、本当に存在するか分らなくて、偽物を掴まされる可能性のある武器よりも、技術の進歩の面でも、最近の技術で作られた剣なり何なりの方が安全でも実用面でも良いだろう」

「……確かにそれはそうだよな。昔よりも、携帯電話だって進歩しているし」

「そうそう。いざとなったら新しい伝説の剣を作ってしまえばいい。そうだ秀人、その剣に名前をつけておくといいかもしれない。そうすれば新しい伝説の剣だ」

「……ああそうだな」


 そう答えて、秀人は夢も何も無い話を終わらせた。

 確かに名前をつけて、勇者としての秀人が使えば、この剣は伝説の剣になるような気がしなくもない。

 でもそうなった場合、『俺の伝説の剣、○○○○の力を受けてみろ!』と叫んで突進する羽目になりそうである。

 嫌過ぎるだろう、常識的に考えて。

 なので、これから名前について聞かれたらはぐらかしてしまうと秀人は決める。

 

 それらの話の後は城から持ってきたお茶菓子と、この世界の茶葉のお茶を楽しみながら四人で雑談して終わる。

 

 そして……その夜の出来事だった。


次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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