世界は、理由を知らない
※本話は「転生者視点」です
俺がこの世界に来て、三年が経つ。
剣と魔法。
レベルとスキル。
そして、神託。
「……はずだったんだけどな」
焚き火の前で、俺は小さく呟いた。
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最初は、分かりやすかった。
努力すれば強くなる。
強くなれば、役割が与えられる。
世界は、
ちゃんと“答えを返してくれる”場所だった。
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だが、最近は違う。
神託が、曖昧だ。
はっきりした言葉が降りてこない。
夢で聞こえる声も、途切れ途切れ。
「……保留、かよ」
冗談めかして笑うが、
内心は笑えない。
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村では、噂が広がっている。
「神様が、黙ったらしい」
「最近、奇跡が起きない」
「代わりに……変なことが起きる」
変なこと、というのは——
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戦争が、途中で止まった。
理由は、分からない。
将軍が、急に撤退を命じた。
兵士たちが、理由を考え始めた。
「……そんなこと、前はなかった」
以前なら、
「神の御意志だ」で終わっていた。
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酒場で、学者と話す。
「世界が、説明を放棄している」
彼は、そう言った。
「いや、正確には……」
「説明できない現象が、増えている」
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「神の奇跡じゃない」
「でも、人間の技術でもない」
「誰かが、
“調整している”ように見える」
その言葉に、
俺は息を呑んだ。
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「……それ、誰だと思う?」
学者は、首を振る。
「分からない」
「だから、怖い」
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別の街では、
こんな話を聞いた。
「神は、世界を見ているだけだった」
「最近は……考えている“何か”がいる」
祈りの対象が、
少しずつ変わっている。
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俺は、思う。
この世界は、
神に任せすぎていたんじゃないか。
考えることを、
やめていたんじゃないか。
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夜、空を見上げる。
星は、変わらず瞬いている。
だが——
意味が、減っている。
運命も、神託も、
絶対じゃなくなった。
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「……なあ」
焚き火の向こうで、
仲間が言う。
「最近、世界が
“俺たちに考えさせてくる”よな」
俺は、頷いた。
「逃げ道が、なくなってきた」
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ふと、頭をよぎる。
もし——
この世界に
•神でも
•魔王でも
•勇者でもない
別の“視点”が存在しているとしたら?
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「……いや」
「考えすぎか」
だが、
胸の奥がざわつく。
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世界は、黙っている。
でもそれは、
無関心じゃない。
問いを、
こちらに投げ返してきている。
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俺は、知らない。
この変化の中心に、
“管理者”と呼ばれる存在がいることを。
ただ一つ、確かなのは——
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この世界は、
もう「答え」をくれない。
代わりに——
理由を、求めてくる。




