神と仕様書
※本作はバトル主体ではなく、世界設定と選択を軸に進みます。
光は、圧力だった。
形を持たないそれは、空間そのものを押し潰すように存在している。
だが俺には分かった。
これは世界の内側にいる存在じゃない。
——神だ。
「お前は、誰だ」
声ではない。
思考に直接、問いが流れ込んでくる。
俺は少し考えたあと、正直に答えた。
「……仕様書、だと思います」
沈黙。
世界が一瞬、静止したような感覚が走る。
「それは、我らの管理領域だ」
淡々とした言葉。
だが、その裏に戸惑いが混じっているのが分かる。
「管理してないから、バグってるんでしょう」
俺は、そう返した。
⸻
神は、世界を俯瞰する。
不死者が処理された村。
作物が枯れ始めた地域。
魔力循環の歪み。
「……お前が触れたな」
「はい」
否定する理由はなかった。
「一行だけ、修正しました」
神の光が、わずかに強くなる。
「世界に触れるな」
それは警告ではなく、命令だった。
「触れれば、必ず別の場所が壊れる」
俺は頷く。
「もう体験しました」
そして、続ける。
「でも、触れなければ、もっと壊れる」
⸻
神は、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「世界は、完全ではない」
「だから我らは、転生者を呼んだ」
やはり、そうだったか。
俺はログを展開する。
【転生者パッチ Ver.3】
【高魔力付与】
【転生者パッチ Ver.7】
【勇者自動生成】
【転生者パッチ Ver.12】
【魔王復活ループ】
「延命処置ですね」
神は否定しない。
「成功していた時代もある」
俺は、淡々と返す。
「“動いていた”だけです」
「仕様の矛盾は、全部先送りされてる」
⸻
神が、俺を見つめる。
「お前は、何者だ」
「転生者でもない」
「神でもない」
俺は答える。
「世界の土台です」
「あなたたちが、何度も触れて、
そのたびに書き換えてきた“仕様”そのもの」
神は、明らかに動揺していた。
「仕様が……意思を持つなど……」
「想定外、ですよね」
俺は皮肉を込めて言う。
⸻
沈黙のあと、神は条件を提示した。
「ならば、制限を設ける」
「お前は、一度に一行しか修正できない」
「修正は、世界的に論理が通らなければ反映されない」
俺は、すぐに理解した。
「承認プロセス、ですね」
神は答えない。
だが、それが合意だった。
⸻
光が、薄れていく。
去り際、神は言った。
「お前が直しているのは、世界ではない」
「世界の寿命だ」
俺は、静かに返す。
「ええ」
「だから、最後まで付き合います」
⸻
神が消える。
世界は、再び動き出す。
新しい警告が表示される。
【予測:魔力過剰地域における
人為的戦争発生確率 68%】
俺は、それを見つめる。
「……次は、これか」
誰にも知られず、
誰にも感謝されず。
それでも、仕様書は開かれる。
世界が続く限り、
俺の仕事は終わらない。




