最低レア転生者は、胸だけが目立っていた
※最低レア転生者視点
最初に言われた言葉を、
ミレイナは今でも覚えている。
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「……でかいな」
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それが、
彼女の転生後、
最初の評価だった。
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ステータスを見られる前。
スキルを確認される前。
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胸だけを見て、
そう言われた。
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「……あ、すみません」
反射的に謝ってしまう。
なにが悪いのか、
自分でも分からないのに。
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ミレイナのステータスは、
惨憺たるものだった。
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攻撃力:最低
防御力:最低
魔力:ほぼゼロ
スキル:生活補助(微)
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「最低レアだな」
「戦闘は無理だ」
「後方支援……も微妙か」
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そして、
最後に付け足される。
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「見た目はいいんだけどな」
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それが、
一番きつかった。
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胸が大きい。
顔立ちも、たぶん悪くない。
でもそれは——
戦えない理由の言い訳にしかならない。
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「……役に立たなくて、すみません」
気づけば、
そればかり言っていた。
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今日も、
後方で荷物を持つ役目。
戦場の端。
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遠くで、
魔物と転生者たちが戦っている。
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「いいな……」
ぽつりと漏れる。
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「戦える人は」
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その時だった。
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魔物が、
こちらを向いた。
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「——っ!?」
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逃げ遅れた転生者が、
一人。
陣形が崩れる。
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「来るな!
そっちは——」
叫び声。
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ミレイナの体が、
固まる。
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(無理……)
(当たらない……)
(私、
なにもできない……)
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でも。
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なぜか。
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「……一回でいいから」
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声が、出た。
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「一回だけ……
当たって……!」
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震える手で、
短剣を振る。
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——当たった。
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刃が、
魔物の腕を裂いた。
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「……え?」
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魔物が、
はっきりと怯んだ。
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「い、今の……」
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周囲が、
ざわつく。
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「当たった?」
「最低レアだろ?」
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ミレイナ自身が、
一番驚いていた。
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「……私」
もう一度、
踏み出す。
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今度は、
逃げない。
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「……っ!」
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二撃目。
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——当たる。
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魔物が、
倒れた。
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静寂。
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【討伐補助確認】
【経験値取得】
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「……あ」
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体の奥に、
熱が走る。
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【レベルアップ】
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「……え?」
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「え、ええっ!?」
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一気に、
視界が変わる。
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「私……
生きてる……?」
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その時。
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少し離れた場所で、
一人の青年が立っているのが見えた。
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静かで、
目立たない。
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でも。
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なぜか、
“そこにいる”だけで
安心する存在。
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(あの人……)
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彼は、
こちらを見て。
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小さく、
頷いた。
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それだけ。
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なのに。
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ミレイナの胸が、
ぎゅっと熱くなった。
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(……私)
(弱いままでも、
立っててよかったんだ)
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遠くで。
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勇者側に、
新たな報告が届く。
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【異常傾向】
【低レア転生者の成功率上昇】
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誰かが、
呟いた。
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「……世界、
おかしくなってないか?」
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ミレイナは、
まだ知らない。
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この日から。
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「最低レアなのに強い」
「胸だけじゃなかった」
そんな噂が、
広まり始めることを。




