勇者会議、そして討伐指定
「——結論から言う」
重厚な円卓を囲み、
最上位勇者の一人が口を開いた。
「白縫ユウトは、危険だ」
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ざわり、と空気が揺れる。
誰もが、
あの光景を思い出していた。
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Sランク魔物。
街を滅ぼした災厄。
それを——
触れずに消した存在。
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「未来予知だとしても異常だ」
「いや、あれは回避じゃない」
「魔法干渉? 世界操作?」
議論が飛び交う。
だが、
一つだけ共通していた。
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「……理解できない」
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「理解できない力は、管理不能だ」
別の勇者が、冷静に言う。
「そして管理不能な存在は——」
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「世界を壊す」
その言葉に、
誰も反論しなかった。
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神託が、久しぶりに降りる。
【世界安定のため、
優先度外存在の排除を推奨】
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「来たな」
誰かが、低く笑う。
「世界も、同意見ってわけだ」
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勇者たちは、
安堵していた。
自分たちの判断が、
正しかったと保証されたからだ。
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「討伐対象、白縫ユウト」
「脅威度:測定不能」
「優先度:最上位」
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その瞬間——
世界が、はっきりと敵を定義した。
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一方、その頃。
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「……あ、指定されましたね」
ユウトは、空を見て呟いた。
隣には、
“誰も見えないはずの存在”。
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「早かったな」
管理者が言う。
「思ったより、ずっと」
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「ですよね」
ユウトは、
どこか楽しそうだった。
「分かりやすくて助かります」
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「余裕だな」
「当たらないので」
即答だった。
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その時。
空気が、変わる。
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転移。
勇者たちが、
一斉に現れる。
剣、魔法、結界。
全力だ。
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「白縫ユウト!」
「世界の命令により、
貴様を討伐する!」
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ユウトは、
一歩も動かない。
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「……あの」
気まずそうに、手を挙げる。
「一応聞きたいんですけど」
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「話し合いとか、
ない感じですか?」
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「あるわけがない!」
光が、走る。
必殺の一撃。
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——当たらない。
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結界が、
発動しない。
剣が、
届かない。
魔法が、
成立しない。
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「な……っ!?」
「世界が……拒否してる!?」
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ユウトは、
ため息をついた。
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「だから言ったじゃないですか」
静かな声。
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「僕に触らないでください」
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「それ、
世界が壊れますから」
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管理者は、
一歩だけ前に出た。
誰にも見えないまま。
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「……始まったな」
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勇者たちは、
理解する。
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この戦いは、
力の勝負じゃない。
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世界の“正しさ”そのものを巡る、
戦争だ。




