管理者は、世界からロックされた
違和感は、
“操作が通らなかった”瞬間に始まった。
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いつも通り、
世界の状態を確認しようとした。
戦況、人口推移、
魔力循環、安定度。
——だが。
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【権限エラー】
【一部操作が制限されています】
「……は?」
一瞬、思考が止まる。
そんな表示は、
これまで一度も出たことがない。
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再度、アクセス。
【警告】
【世界防衛機構:優先制御中】
静かに、息を吐く。
「……来たか」
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想定はしていた。
だが、
思ったより早い。
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管理者という役割は、
世界の“味方”ではない。
正確には——
世界が壊れないようにするための異物だ。
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奇跡が多すぎれば、
人は考えなくなる。
役割が固定されれば、
世界は脆くなる。
だから、
介入してきた。
それだけだ。
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「勇者が不要になる未来」
「神託がなくても回る世界」
それを目指した。
——はずだった。
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【監視対象:管理者】
【行動ログ:記録中】
……なるほど。
完全に“敵側”扱いだ。
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視界の向こうで、
世界が動いている。
戦争は、起きない。
奇跡は、起きない。
だが、
人は選択している。
失敗し、悩み、
それでも前に進んでいる。
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「……悪くない」
正直な感想だった。
だが、
それが許されない存在もいる。
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【協力候補:転生者】
【武装許可:段階的解除】
画面を見て、
思わず目を細める。
「そっちを選んだか、世界」
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転生者たちは、優秀だ。
知識も、力も、意志もある。
そして何より——
自分が正しいと、疑わない。
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それが、
一番危険だ。
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「彼らは勇者だと思っている」
「世界に選ばれたと信じている」
だから、
引き金を引ける。
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【アクセス制限:拡大】
【介入可能範囲:縮小】
また一つ、
“できないこと”が増える。
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それでも、
完全に排除されてはいない。
つまり——
「まだ、必要だ」
世界は、
俺を嫌いながらも手放せない。
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「……面倒だな」
小さく笑う。
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転生者側が、
管理者を排除しに来る。
世界は、それを許可する。
だが同時に——
世界は、破綻の兆候を見せ始めている。
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勇者は、
正解を疑わない。
だからこそ、
“正しい破壊”を選んでしまう。
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「さて」
深く、思考を落とす。
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直接介入は、もう無理だ。
なら——
選択肢を増やす。
彼らが迷うように。
世界が、簡単に決断できないように。
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「……デスノート的に言うなら」
独り言が漏れる。
「人を殺さずに、
最悪の状況を作る、か」
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【世界安定度:微減】
【原因:意思衝突】
数字は、正直だ。
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転生者と、管理者。
どちらが正しいかではない。
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どちらが、最後まで“考え続けられるか”。
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「まだ、終わってない」
画面を閉じる。
制限された中で、
やれることはある。
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だって——
俺は管理者だ。
世界を壊さないために、
嫌われ役を引き受ける存在だ。
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そしてきっと。
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世界が一番危なくなるのは、
“正しい勇者”だけが残った時だ。




