表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/18

勇者は、選ばれたはずだった

※本話は「転生者視点」です


この世界に来た時、

俺は確信していた。


——自分は、勇者だ。


そう言われたわけじゃない。

だが、疑う理由もなかった。


スキルは揃っている。

知識もある。

神の声も、聞こえた。


「これで、役目は果たせる」


そう思っていた。



最初の戦いは、

あまりにも順調だった。


強くなり、

勝ち、

人に感謝される。


世界は、

ちゃんと報いてくれる。



だが——

最近、歯車が噛み合わない。


「……遅いな」


神託が、来ない。


遅れることはあっても、

消えることはなかったはずだ。



別の転生者と、話をした。


「俺もだ」


「神、静かすぎないか?」


冗談めかした声の裏に、

不安が滲んでいる。



戦争は、途中で止まった。


魔王軍が、撤退した。


理由は、分からない。


英雄の活躍でもない。

奇跡でもない。


「……誰が、止めた?」


答えは、ない。



違和感が、積み重なる。


勇者なら、

俺たちが解決するはずだ。


なのに、

世界が先に動いている。



「……なあ」


仲間が言った。


「俺たち、

 本当に“必要”なのか?」


その言葉に、

胸がざわつく。



神に、祈る。


だが返ってくるのは、

曖昧な感覚だけ。


はっきりした言葉は、ない。


「……どうなってる」



古い神殿で、

記録を見つけた。


【勇者は、世界が必要とした時に現れる】

【例外が発生した場合、調整が入る】


調整。


その単語が、引っかかった。



「……誰が?」


記録の続きは、

破れている。


だが、

別の頁に走り書きがあった。


【管理者】



胸が、冷える。


神でも、魔王でもない。


世界を、

“仕組みとして見る存在”。



「……待てよ」


思考を、止めない。


もし——


世界が、

俺たち転生者を

“勇者として使う必要がなくなった”なら?



「それって……」


喉が、渇く。


「俺たちが、

 余計な存在になったってことか?」



答えは、出ない。


だが——

一つだけ、分かる。



世界は、

俺たちを中心に回らなくなった。


それだけで、

十分に恐ろしい。



夜、夢を見る。


神は、現れなかった。


代わりに——

誰かに、観察されている感覚。



「……」


目を覚ます。


心臓が、速い。



「俺は、勇者のはずだ」


「なのに……」



その疑問は、

やがて形を変える。


不安は、

怒りに近いものへ。



「……誰だ」


「誰が、

 世界の主導権を奪った?」



答えは、まだ名前を持たない。


だが——

物語は、そこへ向かっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ