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千年の呪い

掲載日:2025/12/06

「父上!」


軍の警備体制についての重要な会議に突然、扉を開けたのは息子のウィリアムであった。


「息子よ、今は大事な会議中だ。後にしなさい」


「アレクレイ陛下、話もほぼ纏まりましたし少し休憩にしませんか?」


「陛下、そうしましょう。ウィリアム殿下、さぁ~こちらへ一緒にお茶にしましょう」


軍務卿と内務卿は我が息子に甘過ぎる。

ここまで緩んでしまったのなら仕方がないと皆でお茶にする事にした。


「ところで殿下、何を慌てておられるのですか?」


「父上、メアリー・オークネスに婚約を申し込ませて下さい!」


メアリー・オークネス。

オークネス侯爵家の長女。

ウィリアムとメアリー嬢は幼い頃からここ王城で良く遊んでいたのを覚えている。

確か、今日はその令嬢の誕生パーティーが侯爵邸で行われるはず。

メアリー令嬢は12歳になる。

我が国は12歳になると婚約を結ぶ事が出来るとされている。

なるほど、確かにメアリー令嬢ならば早く釣書を出さないと他の者と婚約してしまう可能性がある。

だが・・・


「ならん!お前にも散々と『アーネットの呪い』について話して来たであろう。王家とオークネス侯爵家との婚姻は禁じられている」


「そんな迷信でメアリーの事を諦める事など出来ません。私の真実の愛で呪いなど払い除けて見せます」


迷信・・・

確かに息子が言う通り迷信なのかもしれん。

しかし、そう言った言い伝えを守って来たからこそ我が王国は千年もの長きに渡り生き抜くことが出来たのだと思うも息子の思いを二つ返事に許可は出せない。


「陛下、アレス軍務卿の次男と私の所の三男が殿下と同級でございます。息子共に殿下が間違った道に歩まないよう監視させましょう。ウィリアム殿下、それでも構いませんね?」


「構わん!メアリーと婚約出来るのならばどんな条件でも飲もう」


「父上!」


「「陛下!」」


「・・・解った。しかし、お前はどんな条件でも飲むと言ったな。ならば、お前に契約を結んで貰う。良いな?」


「・・・はい」


ウィリアムと契約を交わし、許可を得られたウィリアムはメアリー嬢の誕生パーティーにて婚約を申し込んだ。

後日、オークネス侯爵が抗議で王城に訪れた。


「気にするな。王家とか気にせず断ってくれても良い」


そんな事が出来るわけがない。

気にするなと言ってもウィリアムが次期国王となれば、冷遇されるのはメアリー嬢である。

オークネス侯爵家は諦めウィリアム第一王子とメアリー嬢の婚姻を認めた。


五年後、国王は人生で最初で最後の後悔をする事となった。

『殿下は将来、様々な事を判断しなければなりません。その中には間違った判断をする事もあるでしょう。その時は正しいと思う方向に修正すれば良いのです。ですが、決して後悔をしては行けません。国王が後悔をすれば民が迷うからです』


『国王に反省は必要ですが後悔はいりません』


ワシは教えの通り後悔をした事はない。

国王となり多くの事を判断してきた。

その中には誤った判断もあっただろう。

しかし、後悔はしなかった。

その時はその判断が正しかったと思っている。

だからかは解らんがワシは賢王と国民に讃えられていた。


しかし・・・ワシは今、後悔をしている。


何故、あの時にワシは許可をしたのだろうか?

何故、あの時にワシは信用をしたのだろうか?

何故・・・

何故・・・

何故・・・


「い、以上で報告を終わります。こ、国王陛下?」


「なんだ?」


「いや、このような恐ろしい顔の陛下を見るのは初めてでしたので・・・」


ワシは今、どんな顔をしているのか解らんが目の前に立っている軍務卿と内務卿の二人もワシの顔を見ながら震えていた。

軍務卿などいつも堂々とした態度は度を越えふてぶてしささえ感じる男が身体が小さくなったかのように萎縮していた。

しかし、こ奴らが萎縮するのも仕方がない。

報告には我が愚息だけではなく彼らの愚息の事も書かれていたからだ。


「どういう事だ、貴様等の息子は監視役で諌める立場ではないのか?報告では率先して二人の仲を引き裂いているようだが?」


「「・・・」」


二人はただただ萎縮するだけで何も言えない。

ただ立っているだけであった。

ワシは再び報告書に目をやる。

息子が変わったのは学園に通ってから。

学園に通うと一人の男爵令嬢に執着し、メアリー令嬢を蔑ろにしていると言う。

今度、王城で行われるパーティーで息子が挨拶をする所で断罪劇を行う計画を企てていた。


「陛下、今すぐ切り捨てましょう。『呪い』を繰り返しては行けません。悲劇が大きくなる前に早いご決断を」


王妃は既にワシとの間に子などいなかったと諦めている。

呪い・・・

千年も続く呪い・・・

ワシはこの呪いのせいで賢王から愚王と成り下がってしまった。

ワシは息子のせいで賢王から愚王と成り下がってしまった。

ワシは今すぐ息子を切り殺したいと思う手を握りしめ己に抑制を促している。


「貴様等も覚悟せよ、契約は破かれた。息子共はいなかったと思え!」


「御意!」


息子共か・・・

息子達だけですまないだろう。

ワシも覚悟する事にしよう。


「こ、国王陛下」


「なんだ?」


「オークネス侯爵が国王陛下にお会いしたいそうです」


オークネス侯爵は今回の悲劇のヒロインとなったメアリー嬢の父親。

あやつの所にも情報が入ったのだろう。

先触れなく訪ねるなどあるまじき行為だが、今回はそれが許された。


「通せ」


「御意!」


オークネス侯爵は無表情であった。

今回の件で憤慨はしているだろうが、それを一切表情に表していない。

しかし、それが余計に恐ろしく思わせたのだろう。

ワシの所へ来るのに軍務卿と内務卿が目に入り視線を送っただけであったが、二人はまるで恐ろしいものに睨まれたかのようにびく付いて畏怖していた。


「陛下、先触れもなく伺った事、申し訳御座いません」


「良い、今回はお主が正しい」


「所でお三方でお話されていると言う事は娘の処分について話されていたのでしょうか?」


「な、何を!」


「いや、軍務卿のご子息が学園にて娘に向かって『悪役令嬢め、処刑してやる』と叫んでいたそうなので」


「そ、それは・・・」


「そもそも可笑しく思えませんか?処刑の決断は国王陛下のみ許された権利。ソナタのご子息はまるで陛下にでもなったかのような発言。『処刑してやる』は立派な越権行為であり、我々侯爵家を侮辱しているとしか思えませんが?」


「・・・」


軍務卿は更に萎縮し、もうこの者に軍を任せることは出来ないほど小さき男となっていた。


「オークネスよ」

 

「なんでございましょう陛下」


「契約は破られた。ワシはこれから弟に合いに行く」


「・・・左様ですか、娘のためにも早めにお願い致します」


この一言でオークネス侯爵は全てを理解してくれたようだ。

ワシは最後に侯爵に『すまなかった』と告げた。




~ クラスバー公爵邸 ~


弟はクラスバー公爵家に婿として入っている。

クラスバー公爵・・・

千年前の呪いとなった令嬢の家。

千年前の因果がこの世代で再び結ばれようとしていた。


「陛下、どうしたのですか?先触れもなく訪れるなど」


「ヘリオス、事は至急のためすまん。既にお主の耳にも届いているであろう愚息の過ちが」


弟のヘリオスには三人ほど子がおり、長男が愚息と同級であり、再三愚息達に苦言を申してくれていた。


「ワシは、此度の件に関わった者を切り捨てる」


「・・・それは、比喩かそれとも・・・」


「実際に切り捨てる事もするかも知れん」


「・・・」


「弟よ、後の事を頼みたい」


弟は返事をしてくれなかった。

暫し沈黙が続く。

周りに控えている護衛や次女も異様な空気に冷や汗を流し始めた。


「陛下・・・陛下は国民の為に多々なる成果を上げられました。それを一度の過ちだけでそこまでされなくても・・・」


「弟よ・・・覚えているだろうか?『国王に反省は必要ですが後悔はいりません』と言う教えを」


「ええ、昔、しつこいほど何度も言われましたので忘れる事などありません」


「ワシは後悔をしてしまった。五年前の判断を。そして、一度後悔をすると様々な事を後悔してしまう。今では息子が産まれた事さえ後悔してしまっている。後悔をしてしまったワシはもう王ではない。王でいてはいけない」


「・・・解りました。ですが、これだけは忘れないで頂きたい。私にとって兄は今でも尊敬たる国王であります」


弟よ。

こんな愚かな判断をしたワシをそれでも尊敬してくれるのか。

ありがたい。

そして・・情けない。

ワシはもう一つ弟に頼まなくてはならない事があるのだが、己の情けなさになかなか話し出せないでいた。

しかし、話さないわけにはいかない。

我が王家は彼女に贖罪しなければならない。


「・・・それと、もう1つ頼みがある」


「メアリー令嬢の事ですか?」


「ああ」


如何に今回、息子達に問題があったとしても、一度壇上に上げられた令嬢に良い縁談が来るとは思えない。

弟も理解していたようであった。

しかし、何処か弟の態度がおかしい。


「どうかしたのか?」


「実は・・・」


弟の言葉によってメアリー嬢の断罪後の平和は保たれそうであった。

しかし、ワシは弟の言葉によりまた1つ後悔してしまうこととなった。

ワシは息子とメアリー令嬢との婚約を許さなければメアリー令嬢は幸せに過ごすことが出来た。

私達が彼女の幸せを奪ってしまったのか・・・




~パーティー当日~


とうとう、この日が訪れた。

息子の計画では挨拶の時に断罪を行うつもりのようだ。


「いいか、断罪前に駆け付け愚か者達を粛清する」


「ぎ、御意」


愚かな息子よ!

千年の罪を繰り返し愚か者よ!

せめてもの情けとしてワシ自らお前を処刑しよう。


「た、大変でございます!」


「どうした?」


「ウィリアム殿下が段取りを無視してパーティーが始まる前に断罪を行っております」


まさか、己の計画すら守ることが出来ないほど落ちぶれてしまったのか・・・

いや、今はそれどころではない。

下手をするとメアリー嬢の命が危ない。


「くっ!あの愚か者共が!今すぐ会場にいくぞ!」 


メアリー令嬢、どうか無事でいてくれ・・・




~ パーティー会場 ~


「メアリー・オークネス!貴様の数々の悪行をウィリアム・スー・バーモンドが許さん!」


ウィリアムは壇上でメアリー侯爵令嬢を見下ろすかのように立っていた。

ウィリアムの脇には腕にしがみつくかのように件の男爵令嬢がたっている。


「わたくしは何もしておりません!」


メアリー侯爵令嬢は本当に何もしていない。

しかし、信用はして貰えないだろうと思っていた。

思っていたが、己が真実であるため引き下がる訳にはいかないと堂々と無実を主張した。


「嘘をつくな!我が隣にいるフレア・マクレイ嬢に対する数々の嫌がらせだけではなく階段から突き落とすなどの悪行は明白である」


「わたくしではありません。証拠をお見せ下さい」


「証拠はフレア・マクレイ嬢と我が側近より証言がある。王家にも虚偽を言うなど由々しき事!この場を以て貴様と私の婚約は破棄し、貴様に罪を償わせよう!マルコ執行せよ!」


「御意!」


側近のマルコがメアリー令嬢に近付く。

メアリー令嬢は命の危険を察し、周辺の者が「危ない」と助けに入ろうとしたがマルコは剣を持っており、近付く事が出来なかった。

メアリー侯爵令嬢も己の身の危険を感じ逃げようとするもマルコに髪を掴まれると、平手打ちを喰らい床に倒れ込む。

マルコはメアリー令嬢の髪を掴んだままメアリー令嬢の顔を無理やり上げさせると、剣をメアリー令嬢の喉元に近付けた。

メアリー令嬢の口元は先程叩かれた事で血が流れていた。


「ははは、いい様だな。貴様が罪を忘れないよう顔に刻みこん・・・」


バタン!!


会場の扉が勢い良く開かれた。


「何をしておる?」


国王陛下の問いウィリアム殿下は答える事が出来ず立ち尽くしている。

マルコも髪を掴み呆然と立っていた。

国王陛下はマルコに近付く。


「貴様は騎士か?」


「・・・いえ」


「騎士でもないのに何故に帯剣している?」


「う、ウィリアム殿下の側近として・・・」


「何故、貴様はメアリー令嬢の髪を掴んでおる?」


「う、ウィリアム殿下の命令・・・」


「髪を離せと言っているのだ!!!!」


「ぎ、御意!」


マルコは慌ててメアリー令嬢の髪を離すとメアリー令嬢はそのまま倒れ込んだ。

倒れ込むメアリー嬢にそっとハンカチで血を拭う。


「すまぬ。もっと早く駆け付けておればよかった」


「いえ、助けて頂きありがとうございます」


「何をしておる。早くメアリー嬢の手当てをせよ!!」


「ぎ、御意!」


ワシの命令により衛兵がメアリー嬢を医務室へとはこんでいった。

どうにかメアリー嬢の身の安全は図れそうであった。


「アレスよ、この罪人は貴様が好きにするがいい」


「御意」


アレスがマルコに近付く。

マルコは父親の鬼のような形相に震え腰を抜かししゃがみ込む。

すると、マルコの視界に父親アレスの右手を捉え、右手がない事に気付いた。


「父上・・・右手はどうされたのですか?」


「どうされただと・・・」


「貴様のせいだろうが!!!!」


アレスは左手でマルコの髪を掴むと勢い良く床に叩きつけた。

何度も何度も叩きつけた事によりマルコの顔は晴れ上がり歯が掛け「止めて」「助けて」と呟いているが、アレスの手が止まる事はなかった。


「貴様のせいでワシは手を切り落とす事となった。貴様も覚悟しろ!」


アレスは己の剣を抜くと衛兵にマルコの右腕を抑え込ませる。

マルコの夢は父の元で騎士として務める事。

右手を失えば騎士となる夢が途絶えてしまうため、必死に泣き叫び抵抗するが、父アレスの剣は勢い良く振り下ろされた。

マルコの夢は途絶える。


「今更、右手有無関わらず貴様は騎士などなれん。貴様はメアリー嬢に『処刑してやる』と呟いたそうだな?貴様は何様だ?国王陛下よりお前の処刑指示が出ている。処刑となるのは貴様だ!」


一方、ウィリアムは側近マルコの姿を見て一歩二歩後退りする。


「何処に行くつもりだ?」


ウィリアムがマルコに視線を向けていた間にいつの間にか父親である国王陛下が目の前に立っていた。

ウィリアムは腰を抜かし座り込む。

同時にウィリアムの腕にしがみついていたフレア令嬢も倒れ込んだ。


「貴様が望んだ婚約だろう。何故断罪した?」


「ち、父上、私は・・・んぐっ!」


発言途中で国王陛下は息子ウィリアムの髪を鷲掴みにした。


「父上ではない、陛下と呼ばんか!」


「へ、陛下、私はあの女に騙されていたのです。あの女は隣にいるフレア令嬢に対し数々の嫌がらせだけですまなくなり階段から突き落とすなど許すまじき行為・・」


「影からメアリー令嬢はそのような事をしていないと報告があったはずだ」


「しかし、フレアとホルスから証言が得られております」


皆の視線がホルスの方に集まるとホルスの側に父親であるヘルメス内務卿が立っていた。


「ほう、お前はメアリー令嬢の側を離れずに監視している影の目でも捉える事が出来なかった何を目撃したと言うのだ?」


「父上・・・」


「もう父ではない」


「えっ!」


「お前は、ワシや国王陛下に『ウィリアム殿下とメアリー令嬢は問題なく順調です』と虚偽の報告をしたな。陛下への虚偽の報告は極刑だ。そのような者を籍にいれておく訳なかろう」 


「そんな・・・わ、私は嘘など・・・」


「ならば、メアリー令嬢が悪事を働いていた所を目撃したと言う事が嘘だと言うのか?」


「そ、それは・・・」


「お前は国王陛下よりウィリアム殿下の監視を任されたはずだ。そのお前が率先して仲を引き裂こうとするなど由々しき事。これは王命違反に値する。お前はどちらにしても極刑は免れん。覚悟しろ!」


「わ、私はウィリアム殿下の為に・・・」 


「戯け!お前が仕えているのは国王陛下だ!」


「そ、そんな・・・」


「ホルスよ、最後に問う。真実を述べよ」


「・・・う、ウィリアム殿下からフレア令嬢の証言だけでは弱いから私も見たことにするよう頼まれました」


「嘘だ!私はそんな・・・んげっ!」


国王陛下の拳がウィリアムの顔を捉え、ウィリアムは最後まで発言する事が出来なかった。


「影からもそこの娘が自ら教科書を破いている所を目撃したと証言を得ている。何か言い逃れがあるか?」


「・・・」


「ウィリアムよ、5年前に貴様が懇願した婚約だろう。しかもメアリー嬢とは幼き頃から一緒に遊んでいた仲だったはず。何故にこのような仕打ちをした」


「溜め息をしたのです・・・」


「はあ?」


「私がメアリーにキスをしたいと懇願しだが、メアリーは『婚約中にそのような行為は致しません』と断れ、しつこく言い寄った私に対し溜め息をついたのだ。私にそのような態度をとるとどうなるか思い知らせなくては、この国の王となる威厳が・・・」


「もう良い!」


国王陛下の剣が振り下ろされる。

ウィリアム王子とフレア令嬢の顔が斬られる。

命に関わるほど深い傷ではないが痕は残る程度の切り傷であった。

これは罪人の証である傷。

国王陛下は振り返り声高々と宣言する。


「ウィリアム・スー・バーモンドはメアリー・オークネス嬢と婚約を結ぶ際に

①メアリー令嬢と婚約破棄しない

②メアリー令嬢を貶めない

③メアリー令嬢以外の異性と親しくしない

④メアリー令嬢が婚破棄を願う場合はそれに従う

⑤この契約を違反した場合は命を失う事もじさない

と、契約が結ばれておる。

ウィリアム・スー・バーモンドはこの契約を違反した事により極刑するものとする。

尚、この婚約は王家が結んだ婚約であるため、この婚約を阻もうとした者は国家反逆罪とし同じく極刑とする」


「父上、私は父上の唯一の息子です。私がいなくなれば次代の王がいなくなってしまいます」


「貴様が王となればこの国が滅ぶわ!貴様の刑を見届けた後、王位は我が弟に譲位する!」


ウィリアム・スー・バーモンド

フレア・マクレイ

マルコ・オキニス

ホルス・コースター


四名が衛兵に取り押さえられ連れて行かれる。

国王陛下の名により貴族牢ではなく、4人は一級犯罪者として地下深くへと連れられて行った。




~ 断罪の世界 ~


罪人の死を見届けると王位を弟であるヘリオス・クラスバーに譲位した。

マクレイ男爵家は爵位を剥奪し国外通報となった。

アレス・オニキスは隠居し爵位と軍務卿の地位を長男に譲った。

メアリー・オークネス令嬢はヘリオス・クラスバーの息子であるヘンリック・クラスバーと婚姻を結ぶ事となった。


「メアリー・・・君が断罪されたあの日、何も出来ずすまなかった」


「いいえ、ヘンリック様とこのような日を迎えられるとは夢のように思えております」


ヘンリックとメアリーは幼き頃より相思相愛であった。

それを邪魔したのが、ウィリアム王子であった。

前国王も弟に知らされるまで知らなかった。

長年歪みあっていたオークネス家とクラスバー家が結ばれる事こそが千年もの呪いを打ち破る事だったかもしれない。

それを邪魔したのが己等だった事を知り更なる後悔をする事となった。

月日が経ちヘンリック王、メアリー王妃と共に千年の呪いが消え去る時が訪れた。



















※※※ ここから先は残虐な描写が書かれて ※※※

※※※  おりますので読まないで下さい  ※※※







~ 4人の罪人 ~


暗く光が一切届かない地下深い牢。

唯一の明かりは食事が運ばれて来る時だけであった。

しかし、食事が置かれると明かりが遠ざかり、再び闇へと覆われる。

フレアのすすり泣く声が聞こえるのでフレアは生きているようだ。

マルコも「右手が~」と嘆き続けているので生きていることが解る。

ホルスの声は聞こえないため、生きているかどうか解らなかった。


あれから、どれくらい日が経ったか解らない。

早く処刑して欲しい。

早く楽にして欲しい。

日々願い続けたある日、明かりがいつもより多く照らされた。


「処刑の準備が出来た。これより執行する」


ああ、此で楽になれる。

私は衛兵に押されながら処刑場に脚を運ぶ。

日の光が眩しい。

何日ぶりの日の光に目が慣れず視界は真っ白に覆われた。

徐々に目がなれ景色が見えて来るが処刑場にはギロチンも首吊りなどもなく1つの檻があった。

檻周辺には民が集まっている。


私達4人は檻に入れられた。

これからどんな処刑が行われるか解らないが早く楽にして欲しい。

すると、父上が現れた。


「これより、処刑を行う。

尚、此度は千年もの呪いを軽んじた事で起きた罪だ。

誰もがこの罪を忘れてはならん。

その為、皆が忘れる事がないよう最も残酷な処刑を行う。

これより罪人には水以外与えずここに放置する。餌を与えても構わん。

ただ、それが罪人をより苦しくさせるだけとなる。

皆が罪人の死を目に焼き付け後世まで語られよ」


処刑方法は『餓死』であった。

衆人環視の中で徐々に空腹で死が訪れるのを待つ。

水を飲まなければ数日で死ねるのだが、人は愚かなもので早く死にたいと思っているが、喉の乾きに我慢する事は出来ない。

また、餌を投げ込まれると空腹に勝てず食べずにはいられなかった。


一番最初に死を迎えたのはフレアであった。

非力な彼女では餌の奪い合いに勝てず、一月あまりで息を引き取る。

だが、そこからが更なる地獄であった。

皆が死ぬまで死体が片付けられる事はなかった。

フレアのは腐敗臭と空腹で苦しむ事となった。

次に息を引き取ったのがホルスであった。

ホルスは自身の舌を噛みきり自殺を図った。

最後まで生き残った私が漸く息を引き取る事が出来たのは、ここに入り半年ほど経った。

私の最後は餓死ではなく凍死であった。


私は最後に夢を見た。

昔、子供の頃、私とメアリー、マルコ、ホルス、ヘンリックの5人で遊んでいる。

しかし、ヘンリックがメアリーの手を引き何処か行こうとしていた。

私達も連れていって欲しいと思ったが、私達は動く事が出来ない。

離れた場所でヘンリックとメアリーが楽しそうに遊んでいるのを私は眺めながら暗い世界に覆われて行った。


国王目線の作品がないので、国王を主人公にした作品を作りました。

最後は残酷な描写にしてしまいすみません。


次は『盲目な令嬢』を主人公にした作品を考えております。

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