90話 氷の宮殿の決戦 その4
今日、10月11日はノエルの誕生日なので長めにしてます。
俺のこれまでの話を聞いたランスは打ちひしがれていた。
「ってことは…………カンスは死んだのか………?」
「そう!そのとおりだぁ!」
と自慢げに言うと、
「ゆるせん………カンスの分までお前たちをぶっ殺してやらぁ!!」
と槍を振り回して襲ってきたが、俺たちは治癒固有魔法が発動している。
だが、
「う………」
「く……」
晴魚とノエルが倒れた。
「ふっ、どうする?仲間が2人死んだぞ?」
まったく、これだから馬鹿は困る。
治癒固有魔法というものをもう忘れたのか?
まあいい、2人が復活するまで持ちこたえるか。
たしかノエルの治癒固有魔法はしばらく気を失ってから、悪魔に変身する。
そして晴魚は身体能力が超向上する。
よし、まあ、俺の雷速があったらなんとかなるんだけどな!あははは!!!
「雷魚!たのむ!」
「おうよ!」
宝魚までも俺の雷速だけでいいとおもっているのだ。
余裕だな!
「くらえぇ!!」
バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!
「ぐあぁ!」
吹っ飛ばされたが、ランスは体制を立て直し、唱えた。
「ランツェ リーズヒ!」
ランスの手に超巨大な槍が出現し、物凄いスピードで襲い掛かってきた。
だが、雷速を扱える俺の前では無力!!
さっ、とかわしてさらに雷速をぶち込む。
バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!
「ぐはぁ!!」
「フフフ、派手にやってるようね。」
この声は………
「「「ノエル!」」」
「私もいるよ!」
「「「晴魚!!」」」
だがひとつ不思議がある。
「なんで突然治癒固有魔法が発動したんだ?」
「えーっと、あー、止血が………間に合わなかったのよ…………」
「う、うん。」
「そうか………」
ちょっと恥ずかしそうにしている。
聞かなければよかった。
気まずい…………
「ふん!」
バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
シグザルがランスを殴ったのか、ランスは吹っ飛ばされて壁に激突した。
ランスはもう意識が朦朧としている。
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ここは魔王都城~
「シュルドル様。どうやらランスがピンチのようです。どうしましょうか?」
漆黒の髪の20代前半ほどの女性が魔王シュルドルに跪いて言う。
「そうだな、シオンよ…………………そうだ。おまえが行ってやったらどうだ?魔王軍2軍王のお前が行けばランスも無事でいられるだろう。そして雷魚たちを葬ることができる。」
「…………………ですが………私はこれから、おやつタイムがありまして…………」
「おやつタイム…………私も昔はしていたな…………だが!!体重計が潰れてしまったのでいまはおやつタイムなしにしている!」
「!!!」
跪く女性、シオンがはっとした。
自分も体重が増えるかもしれないと…………
「そ、そうですね!!!じゃあ、行ってまいりますわ!!では!」
「ああ、」
そうしてシオンは魔法陣を展開させてワープした。
「……………………シオンよ……お前の太る姿などみたくないわ…………」
シュルドルはボソッと呟いた。
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「くそ…………」
ランスはもう、自分は生きられないなと悟って人生を振り返っていた。
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俺は小さい頃の記憶がない。
最初の記憶は12歳のときだ。
12歳。
このときから悪に目が覚め始めた。
12歳になるまでに両親も兄弟も死んだのだろう。
いた記憶がないからだ。
でも出会ったのだ。
シオン様と……
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元々家はなかった。
野宿で何とかなっていたが、ついに食料が尽きた。
最初の記憶はこの辺からだ。
寒い。
高度の飢餓状態だった。
「だ、大丈夫?ボロボロだけど………」
「だれだ?」
短髪の黒髪の女だ。
俺よりかは年上だが、未成年だ。
「私はシオン!君、ホームレス?家にきな。」
「え、あ………」
いわれるがままに手を引かれてシオン様の家についた。
シオン様の家はとても暖かかった。
食事も、服も、部屋まで用意してくれた。
シオン様の家は大豪邸だ。
そして聞くには、シオン様は魔王とやらの手先の魔王軍らしい。
元々俺はそういうのに興味があった。
興味津々で魔王とその魔王軍について、すごく詳しく教えてもらった。
さらに、勉強、魔法、武器の使い方。
俺が魔王軍になれるように精一杯育成してくれた。
「よし、まあこんなもんだろ!ランス!またね!」
「はい!また!」
拾われてから3年後、俺は魔王軍に会いに行くために旅に出ることになった。
シオン様に別れを告げて旅に出た。
目標は全部の魔王軍に会いにいき、魔王軍にはいる許可をもらうこと。
魔王軍の誰かがやられたら俺が7軍王に入らせてほしい。
俺はシオン様から教わった様々なことで、なんとか、全員にOKをもらうことができた。
そして旅の途中でカンス、オワゾー、ボワンという弟子ができた。
聖魔軍に魔王軍の4軍王がやられたと報告がはいった。
「よっしゃー!!」
喜んでしまった。
まあ、いいや。
そして俺はさらに適当に旅を続けて、ウトリウルという悪魔騎士がいると知った。
そいつは有名な強いやつらしい。
だが、奴は性格が荒っぽいと知ったとき、行けると思った。
魔王軍の下っ端である俺が魔王軍に誘っても断られると思い、魔王と名乗って、死者蘇生秘伝書を守らせた。
なぜって?
俺は1軍王から死者蘇生秘伝書を守っておくよう命じられたからだ。
そしてウトリウルはドンドン力をつけていき、ついには6軍王にまで上り詰めた。
魔王軍はよく入れ替わる。
誰かが倒されたら新入りがはいる。
さらに自分より上の軍王に対戦を申し込み、勝ったら軍王を入れ替えることができる。
さらに俺はシュカルーネ王国に目を付けた。
シュカルーネ国王を暗殺し、民どもには突然の病死と伝えた。
もちろん信じない者もいた。
だが、3軍王の固有魔法の幻覚によって、俺は民たちを騙し、国王になった。
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はは、結構カオスだな。
俺の人生。
まあ、幸せではないけど、不満ではなかった。
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ランスは目を閉じた。
戦意喪失。
もう戦う気はないらしい。
殺気を感じない。
負けを認めたのだろう。
だが、そこで………
「むしぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
「「「ふぇ!?」」」
俺達は驚いて反射的にムッシーのほうを見た。
「完・全・復・活むし!」
「「「えええぇぇぇ!?」」」
「え?」
「なんで生きてんの?まあ生きててよかったけどさ!」
「え?え?幻覚でも見てんの?」
「幻覚じゃないむし。僕はたしかに死んだむし。でも治癒固有魔法があるむしぃ!!」
「「「あ」」」
そうだった。
心配して損した気分…………
「はあ、よかった。」
小魚は大きなため息をついた。
「むし。小魚、さては闇落ちしたむしね?」
「あ、うん」
「ふふふ、僕の治癒固有魔法はしばらく気絶し、復活したときは解放魔法を5回使えるようになるというチートなんむしよ!さらに!気絶中は音が聞こえる!だから大体話は知ってるむし」
それって、心の中で戦況めちゃくちゃ楽しんでたってことじゃん。
というか、今気づいたけど小魚の傷がない。
多分、闇落ちと同時に治癒固有魔法も発動したのだろう。
と、そこへ……………
「えー、もしかしてハッピーエンドって思いこんでない?」
「「「!?」」」
可愛らしい女性の声がした。
魔法陣が展開され、そこから短髪の黒髪の女性がでてきた。
瞳は深緑でベルトには2丁の銃………
「はーい、どうもー。シオンちゃんだよ♡」
「な、なんだこいつ!?」
宝魚が戸惑う。
無理もない。
俺だって状況が理解できない。
「同様してるね。私はシオン。魔王軍の2軍王!」
「「「2軍王!?」」」
「そ、2軍王。あ!ランス!」
ランスのほうをみると、紫の霧に包まれて消えていた。
なんと、ランスまでも魔物だった。
「ランス君を守るように言われてたのに。死んじゃったら元も子もないじゃん。まあ、君たちを排除するようにも言われてるけど……………ね!」
そう言ってシオンは拳銃を抜いて撃ってきた。
ババン!!!
2丁一斉射撃。
だが流石に雷の速さよりかは遅い。
俺は正確に見抜いて両方を電撃で破裂させた。
杖がなくてもある程度の雷なら出せる。
さらに稔昌もしなくてもある程度は。
「雷速……………」
雷速で突っ込んだが、
「うぐ………」
首をつかまれていた。
「わぁお!速いね!ギリギリだったよ!」
「雷魚!」
宝魚が叫ぶと同時に
首をつかまれたまま投げられた。
ガキン!
「!!」
宝魚の剣とシオンの銃がぶつかり合っている。
「なん…だと?」
宝魚の治癒固有魔法は世界をスローにし、自分の速度を上昇させる。
もちろん、それ以外のステータスも上昇している。
シオンからしたら瞬間移動したとしか思えない。
だが、シオンはとんでもない瞬発力で防いだのだ。
「君も速いね!それにすごい威力!」
「く………」
「宝魚!さがれむし!アンフェルフラム ベフライング!」
ムッシーが解放魔法を撃つ。
巨大な炎でできた竜が出現し、シオンに襲い掛かったが、
「キャハハ!」
シオンが腕を振ったら竜はきえてしまった。
「な………」
ムッシーが絶句している。
そりゃそうだ。
腕を振っただけで解放魔法が相殺されたのだ。
晴魚がシオンに蹴りをかまそうとするが、
かわされて強烈なパンチで吹っ飛ばされた。
「ゲホッゲホ………」
吐血していた。
さらに晴魚の体は動けていなかった。
背骨が折れて動けないのだろう。
まずい。
こいつは異次元。
「極悪魔術 極剣舞氷乱!」
悪魔になったノエルが剣を構えて突っ込んでいったが、
バアアアアン!!!
ノエルが振りかざした剣は、シオンの正確な発砲によって折れた。
「ふん!」
シオンがノエルの腕を掴んで壁にぶん投げた。
「ぐあぁ!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
壁にめり込んで晴魚と同じような状態。
バアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
小魚が最高火力で放ったパンチをシオンが手で受け止めていた。
「君も速いね!」
「兄ちゃん………」
「兄ちゃん?この黄色い頭の子?」
と言って小魚を吹き飛ばした。
「ぐわ!」
バアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
そうしてシオンは俺を見た。
すると、何故か見る見るうちに赤面して俺を見るのを辞めた。
「き、君!名前は?」
「俺は………雷魚だ」
「雷魚!素敵ね!!」
「………………………え?」
ん?………………………ん?
「はぁ!?」
シグザルが顔を赤らめて焦りだす。
「雷魚は渡さない!」
「……………貴方………雷魚の彼女?」
シグザルはシオンに殴り掛かった。
バアアアアアアアアン!!!!!!
信じがたい光景を目にした。
シオンが同時に発射した銃の球がシグザルの肩と心臓にあたった。
「シグザル!!!!!」
「「「!!!!」」」」
シオン以外の全員が目を見開いて、驚いた。
「ふ、ふん!こんくらいにしといてやるわ!」
そういってシオンは魔法陣を発生させて消えた。
「シ………シグザル!」
雷魚はシグザルに近寄る。
「雷魚…………ごめん………………シオン倒せなかった……………」
と言うシグザルに雷魚は涙を浮かべて言う。
「いいんだよ、そんなこと!それより、早く止血を!」
「止血……………もう手遅れだよ……………」
「そんな…………死なないよな?」
という雷魚にシグザルは雷魚の頬に手をあてて言う。
「雷魚……ありがとうね………………君と旅ができてよかった………………小魚も…宝魚も…ムッシーも…晴ちゃんも…ノエちゃんも……………………私が死んだからって……………落ち込んだりしないでね……………私は…………前向きでいつも精いっぱいの雷魚が好きだから………………………」
(治癒固有魔法はもう発動している。だから…………このままだと……シグザルが……………………)
雷魚は体中が震えていた。
シグザルが………仲間が死ぬことが何よりも一番怖いからだ。
大粒の涙をボロボロと流して雷魚は何も言えなかった。
「雷魚………私………あなたのことが好きなの……………できたら………結婚して……………幸せな家庭を築きたかったな………………でも、気持ちを伝えられただけで……………私は幸せ………………………あなたは…………………私のこと、どう思ってる?」
「好き……………大好きだよ………………………シグザル」
「よかった…………………」
シグザルの目から涙がこぼれる。
「シ、シグザル、守れなくてごめん…………………痛い思いをさせて………………本当に……………」
「いいんだよ……………私は幸せだから……………雷魚………………………元気でね………………………………………………」
体がどんどん冷たくなっていってるのが分かる。
あぁ…………………………守るって………………言ったのに………………………シグザルを守りたかった…………………
ごめん…………………
もう…………………どうでもよくなってきた。
何もかもが。
疲労からだろうか?
意識が朦朧としてきた………………




