87話 氷の宮殿の決戦 その1
天井から舞い降りてきた少年は…………
「カンス!!」
師匠が叫ぶ。
どうやらこいつがカンスのようだ。
「へへん!もう手加減はしないからな!!」
そう言って師匠にとびかかった。
それを師匠はヒラリとかわし、剣を構える。
「よし、ここは俺に任せてくれ、みんなは後方援護を!」
「「「わかった!!」」」
たしかに、カンスと戦闘経験のある師匠を正面から戦わせたほうがいい。
師匠が剣を振り下ろし、それをなんと、拳で受け止めた。
「あいつ………魔物じゃん!!」
晴魚が叫ぶ。
「ドゥルフ!」
「ふん!」
俺の放ったドゥルフはカンスに握りつぶされ、師匠に振り下ろしをする。
ドオオオオオオオオン!!!
地面に電撃がはしる。
師匠の言っていた通りだ。
相手の魔法を吸収して一撃だけその吸収した魔法を使える。
むやみに魔法を撃つことはできない。
魔法を撃てるときは師匠の攻撃を受け止めているときとか、師匠の攻撃をよけた瞬間とか……………
「シュヴァハ フェタイディング!!」
晴魚の防御力低下魔法がしっかりとカンスに入った。
「ふん!!」
師匠の剣が遂にカンスの拳に傷を入れた。
「く………」
少しひるんだが、また次の攻撃を繰り出した。
単純なパンチ、キックだけじゃなく、柔道系の様々な技も使ってくる。
それが厄介そうである。
師匠とかなりいい勝負をしている。
「くらええええ!!!!!」
「ぐわぁ!」
師匠がカンスを吹き飛ばした!
「く………………くふふふ…………俺をなめてもらっちゃ困る!!オワゾー!!ボワン!!」
カンスが叫ぶと同時に巨大な人型の鳥と牛の角をはやした男が天井から降ってきた。
「ぎゃははは!!こいつらか!強くて殺しがいがありそうだぁ!」
「そうだなぁ、オワゾーよ。吹っ飛ばすのが楽しみだ…………」
「おい!それお前の力じゃないだろぉぉ!!!」
師匠が叫ぶ。
ほんっとうにその通りだ!!!
「へへん!そんなこといってないよ!」
「いやさっき俺をなめてもらっちゃ困るっていったじゃねえかよ!!」
「しらんわ!!」
そして師匠とカンスがまた高速で戦い始めた。
次の瞬間、氷の宮殿がゴゴゴゴゴゴ……………………と音を立てて構造を変え始めた。
床が移動し、さらに床が起き上がり、壁になる………
完全に別れた…………
鳥の男と俺、宝魚、シグザル。牛の角をはやした男と晴魚、小魚、ムッシー、ノエル。
そしてカンスと師匠だ。
ほかのみんなが心配だが、とりあえずこの鳥の男を倒さなくては…………………
「さあ、まずは自己紹介だ。俺はオワゾー。お前たちの名前はなんだ?」
「…………雷魚だ。」
「宝魚だ」
「シグザル……」
「雷魚に宝魚にシグザル。いいね。全員強そうだ。」
「ドゥルフ!」
俺が雷を落としたが、ヒラリとよけられる。
「やる気はあるようだな。いいだろう!!俺の鳥獣飛爪に対抗して見せよ!!」
そう言って爪をとがらせてとびかかってきた。
それを防御魔法で防ぐ。
「エーデルシュタイン フィール!!」
宝魚がエーデルシュタイン ゼーリエより小さく、多い、宝石を飛ばしたが、
「そんなものか!!」
羽の1吹きで全部相殺された。
シグザルは高くジャンプし、壁をけってパンチを入れようとしたが、ヒラリとよけられ、羽の暴風で吹き飛ばされた。
「うわぁ!」
なんとか、受け身をとって体制を立て直した。
「それだけか?つまらん。」
「ドゥルフ シュフルーファスト!!」
確実に一発入れ込んだと思ったが、かわされた。
そして腕に激痛が走る……………
「ぐわぁ!!!」
血が飛び出す。
爪で斬れていた…………
「ふん!雑魚じゃないか!つまらん!つまらないことをいつまでもやってられない。本気でさっさと終わらせてやる!」
そしてオワゾーは物凄いスピードで移動し始めた。
「「「ぐわああぁ!!!」」」
俺は背中をやられた…………
宝魚は右足、シグザルは左肩をやられていた。
くそ…………あの両足両腕の爪が強い…………いや、羽がなければこんな速度は…………
「雷魚!あいつにダメージを与えられるのはたぶんお前だけだ!!俺達は雷魚を守るから頑張ってあいつにあててくれ!!」
宝魚が叫ぶ。
俺も言おうとしたとこだ!!!
「わかった!!」
「守れるかな!?」
オワゾーは急降下してきて爪をとがらせる。
「ふっ!」
ガキン!宝魚が剣で応戦する。
どうする?普通にドゥルフを撃ってもよけられる。
最高火力でもいっしょだ。
ドゥルフ シュフルーファストでもだめ………
ドゥルフ シュネルはどうだ?
俺の魔法の中の最速の技だ。
「ドゥルフ シュネル!!」
「ふん!遅い!!」
あっさりかわされる。
だが、よけたすきを狙って宝魚が斬撃を入れようとしたが…………
グシャ……………
「ぐあ!」
横腹をひっかかれていた。
「く…………大……丈夫!傷は浅い!」
よかった。
でもどうする?
奴はどうやら瞬発力が比じゃないらしい。
なら数でごり押すしかない。
さらに見切られないようになるべく速く、一撃で決められるようにできるだけ強く………………数、速さ、威力、全部高くするにはそれなりの技術と魔力がいる。
ためる時間は2人が稼いてくれる…………
「ええい!」
「おりゃぁ!!」
2人も頑張ってくれてるんだ。
頼みの綱は俺…………
「ドゥルフ……………」
「お?いいね!お前の全力を見せてもらおうか!!」
「リベラシオン!!!!!!」
これまでにないくらい、強大な魔力を放出した。
俺の杖からはドゥルフ グランドとは比べ物にならないくらい巨大な稲妻が天井に伸び、細かく枝分かれした。
脳内にしらない自分が語り掛けてくるような感覚…………動物の手を想像しろ。
そう言っているようだ。
で、でも動物ってなんだ?
「ま、まあいいや!くらえええ!!!」
動物と言えば犬とか猫とか。
俺は猫派だから猫の手を想像した。
すると、細かく枝分かれした俺の魔法は、見る見るうちに猫の手になり、オワゾーに強烈な猫パンチをお見舞いした。
「ぐわぁ!?」
思いもしない攻撃と威力でオワゾーは混乱する。
さらに電撃で身動きも取れていない。
「なんだ?雷魚、猫の手も借りたかったのか?」
そこボケる所じゃないわ宝魚!
「猫の手も借りたいとはこのことだね!!」
シグザルまでもふざけだす。
「ぬおおお!!まだオワゾーは意識あるってー!!」
俺はとっさにライオンの手を想像した。
するとライオンの手ができ、オワゾーに引っ搔きをかます。
「ぐあああぁぁ!!!」
どうやら物理攻撃のようで、オワゾーの立派な両羽は切り落とされた。
「「とどめだぁ!!」」
「剣舞・炎 炎斬一閃!」
「拳殴魔神刀!!」
宝魚の斬撃とシグザルの強烈な突き技でオワゾーは吹っ飛ばされた。
「「「え?」」」
オワゾーが紫の霧に包まれて消えた!?
魔物だったの!?!?!?!?
「「「ひええ…………」」」
魔王軍関係は全員魔物なのか?
まあ、とにかく、オワゾーを倒して一件落着である。
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「みんなをどこへやった!?」
別行動になった直後、シェイはカンスに聞く。
「肉眼でみただろ?壁の向こう側さ。」
「戦力を分断させるっていう寸法か。」
「そうだ。」
(まだ手下がいたとは……………いや、みんななら奴らを倒すことはできるだろうが……………問題はランスだ。多分、いや、絶対ランスはカンスより強い。この危機を乗り越えたとしても体力がない俺たちではランスに勝てない。)
なるべくダメージをうけずに倒そう。
そう決意した直後、カンスはとびかかってきた。
「ふん!」
剣で応戦する。
「そろそろ打ち合いにも飽きてきたころだ!聖魔軍!」
ドカッ…………
顔面パンチをくらった。
(くそ、前より格段に強くなっている…………)
「剣踊・爆 爆散斬り!」
事前に剣を爆発させ、斬りかかる。
「ふん!」
案の定、カンスは爆発を奪おうと、手を伸ばしてくるが、それが狙いだ。
爆発を奪われる直前に、爆発を散らす。
そして斬る!
「ぐあ!」
手首を斬りおとし、シェイは剣をかまえる。
ここからが踏ん張り時だ。
おまけ
第5話「ノエルと“雪の魔女”」
――小屋に突如現れた、銀髪の少女。
その名はノエル。
凍てつくような視線と、冷静な口調が印象的だった。
「あなたたち……魔王シュルドルを倒しに行く旅人ね?」
「……そうだけど、なんで知ってる?」
雷魚が警戒しながら問うと、ノエルはポケットから小さな氷の結晶を取り出した。
「これは“予兆結晶”。世界の運命が動くとき、共鳴する。さっき、あなたたちがバルズを突破した瞬間に……反応したの」
「へぇ……」
ムッシーがひょこっと現れてにやり。
「なんかロマンチックむしねぇ〜」
「じゃあノエルちゃんは何者なんだ?」
宝魚が問いかけると、ノエルは静かに答えた。
「私は……“雪の魔女”の弟子よ」
「雪の魔女……?どっかで聞いたような」
「知ってるよ雷魚兄ちゃん。『氷雪の地に眠る禁術使い』って呼ばれてる人!」
「そう。彼女は“柱”のひとりに挑んで……行方不明になったの」
ノエルは拳を握りしめ、真剣な眼差しで雷魚たちを見た。
「お願い。一緒に来て。彼女を探すために……そして、“柱”を倒すために、あなたたちの力が必要なの」
しばらく沈黙が流れた。
だが、雷魚は力強くうなずいた。
「――いいぜ。行こう、一緒に」
「うん!助けよう!」
「ま、面白くなってきたな」
こうして、ノエルが仲間に加わった。
◆
目的地は北の山岳地帯、“氷眠の塔”。
道中、雷魚たちは森を抜け、谷を越え、雪の降る地に入っていった。
「うわぁ……さむっ……」
ムッシーが丸まりながら震えている。
「ねぇムッシー、寒いのダメなんだ?」
「ムッシーはむしだからむりむしぃ……!」
そのとき――
バサッ!
雪の上に降り立つ、一人の少女。
茶色の髪を後ろで結び、拳を構えている。
「ストォォォップ!!!」
「な、なんだ!?」
「そこの氷の魔法使い!!あんたが“雪の魔女”だな!!」
ノエルが目を見開く。
「えっ!?私じゃないわよ!」
「なぬぅ!?」
少女は一瞬動きを止めたが、すぐに照れくさそうに頭をかいた。
「あっ、ごめん、見た目で決めつけちゃった。私、晴魚!格闘術を鍛えてる旅人!」
「なんでそんなテンションで乗り込んできたの!?」
「……あれ?この雰囲気……君、特殊魔術師?」
小魚が声をかけると、晴魚は照れながらうなずいた。
「うん……でも、殴る方が得意なの……」
「仲間にしようぜ兄ちゃん!」
「決めるの早っ!」
ノエルが一歩前に出る。
「晴魚、あなた、旅人なんでしょ?私たちと一緒に“雪の魔女”を探さない?」
晴魚は迷ったような顔をしたあと、力強く言った。
「……うん。一緒に行く!私も魔王を倒したいんだ!」
こうして――6人の仲間が集結した。
雷魚、小魚、宝魚、ムッシー、ノエル、晴魚。
彼らは今、確かな絆で繋がり始めていた。
◆
夜、焚き火を囲む中で。
「雷魚兄ちゃん……なんか、すごく仲間っぽくなってきたね」
「……ああ。なんか、俺たち“パーティ”って感じだな」
「ムッシーのおかげむし!」
「はいはい……」
ノエルが静かに微笑む。
「次は、“氷眠の塔”。その頂上に、“柱”がいる」
「来るな……次の戦い……」
宝魚が立ち上がり、剣の柄に手をかけた。
「やっと……会えるな、“柱”ども」
――次回、第6話
「氷眠の塔と炎の咆哮」へ続く!




