85話 VSシェイ
寒い。
昨日の緊張はいまだ消え去っていない。
むしろ昨日より緊張している。
「出発しよう。」
という俺を先頭に一行は歩き出した。
いつものように、ペチャクチャお喋りもせず、ただ歩く。
絶対零度の世界を…………
氷の宮殿が見えてきた。
いつもなら、見えた!あれだ!と言っているが、そんな気にもなれない。
遂に入口まで来た。
宮殿は広い。
早速中に入った。
「あれ、扉は普通に開くんだ」
「そうらしいな。まあ、すすむか。」
俺と宝魚を先頭にグングン歩き出す。
すると…………
「グルルルル………」
氷狼だ。
そこまで強くはない。
宝魚が一瞬で剣で倒した。
進んでいくうちに魔物の数も多くなる。
だが、かなり力をつけた俺たちは魔物たちを瞬殺し、グングン進んでいく。
そしてついに………………
「「宝箱だー!!!」」
こんな状況でも宝箱にはテンションがあがる!
中身は………………ん?
「「ガラクタ?」」
小魚と俺で宝箱をガサゴソとあさるが、魔物の毛皮や装備品などしかない。
いつかの宝箱を思い出させる。
「ちょっと男子ー、ちゃんとして」
ノエルが定番のセリフをはく。
「ははは!」
ようやく緊張がほぐれてきた。
仲間がいる。
それだけで緊張がほぐれていく。
さらに進んでいく。
ようやく俺達は喜怒哀楽が増え始めた。
いつものようによく喋る。
気づけば、玉座の間のようなところの扉の前にいた。
「マジ?もうついたの?」
「らしい。」
「いくぞ」
「「「うん」」」
「っと、その前に、シグザル、頼むぞ。」
といった俺をじっと見つめてうん。とシグザルはうなずいた。
そして俺達は覚悟を決めて扉を引いた。
玉座には………
「誰もいない?」
と呟いた瞬間、天井から爆発音が聞こえた。
「「「なんだ!?」」」
ドオオオオオン!!ドオオオオオオン!!ドオオオオオオン!!
音はどんどん近づいてきている。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!
遂に天井から何かが降ってきた。
「やあやあ、久しぶりだね…………みんな」
この声………まさか…
「俺と全力でやり合おう!雷魚!」
「「「し、師匠!?」」」
そう、師匠だった。
だが気配が違う。
前の師匠は、希望に満ち溢れて、頼れる存在だったが、今は悪に染まったようだ。
「師匠………」
「前より強くなったか?仲間は増えたのか?よくここまでたどり着いたな。」
こいつは師匠じゃない。
違う誰かか、操られている。
「さあ、始めよう!雷魚!!!」
師匠は突然剣を抜いて襲い掛かってきた。
恐ろしく速い。
ガキン!!
宝魚が応戦する。
「随分と変わっちまったな。なにか悪いものでも食べたのか?」
「宝魚か!この剣捌き!すごいな!」
2人が高速で打ち合いを始める。
「引いて!宝魚!剣舞・氷 雹乱!」
宝魚が師匠から距離をとり、ノエルの雹攻撃が襲う。
「剣踊・爆 捌爆!」
師匠が剣を振り回すと同時に大爆発が起こる。
「「「ぐわぁ!」」」
俺達は吹っ飛ばされた。
「シュヴァハ!」
師匠に晴魚の弱体化がはいったが、
「そんな小細工!効かないよ!エクスプロジオン!」
バアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
「「「ぐわぁぁぁ!!!!」」」
痛い!体中に棒が打ち付けられたようだ………
前より遥かに威力が上がっている………
「アンフェルフラム ラージ」
「ぐわあ!」
どさくさに紛れて師匠の足元にきていたムッシー。
奇襲をかける。
「ムッシー!元気だったか!」
「なに!?」
振り下ろされた剣を飛び下がってよけたムッシーの身体はブルブル震えていた。
「僕の魔法が直撃したのに………なんであんな平然としてるむし?」
宝魚が居合切りで突っ込み、さらに激しい打ち合いが始まった。
「前より雑になってるぞ!かつて俺に教えてくれた剣技はそんなんじゃなかっただろ!なあ!シェイ!!!」
「黙れ!こっちのほうが強いからだ!お前に何が分かるってんだ!!」
両者距離をとり、同時に技を放った。
「剣舞・炎 間詰一閃!」
「剣踊・爆 乱嵐居合!」
ガキン!
力強くぶつかった剣からは火花がちり、剣の押し合いになった。
「うおおおおお!!!」
宝魚が師匠の剣を押し返し、剣を吹き飛ばした。
「エーデルシュタイン リーズヒ!」
宝魚が決めようとしたが師匠が消えた。
「「「!?」」」
戸惑っていると…………
「どうやら君たちは俺が思っている数倍強いみたいだ。なら手加減はいらないね。」
ポタッ………
「ぐ……」
師匠の剣が宝魚の左肩を貫いていた。
ニヤリと笑って、立て続けに俺達に斬撃を入れてきた。
「「「ぐわぁ!!」」」
くそ…………速すぎる………
「さあ!ここからが本番だ!」
まずいな。
師匠はこんな性格でもこんな悪質な魔力の持ち主じゃない。
でも微かに師匠の名残がある。
だから多分操られているんだ。
殺すことはできない。
操りを解くためには……わからない。
でも取り敢えず動きを止めよう。
「ドゥルフ グランド!」
「遅い!」
バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!
「「「ぐわぁぁ!!!!」」」
剣だけでも厄介なのに……………しかも魔法を唱えずに使えるようになっている。
「ベーゼトゥーテン!」
「ぐはっ」
小魚の特大のベーゼトゥーテンはとんでもないスピードで師匠に当たった。
「っくははは!いいね!」
次の瞬間、小魚の腹は貫かれていた。
「小魚ーーー!!!!!!!」
「ベーゼトゥーテン・鰐!!」
「ふはは!エクスプロジオン!」
師匠のエクスプロジオンと晴魚のワニ型のベーゼトゥーテンが衝突したが、師匠のエクスプロジオンが撃ち負けた。
「なにっ!…………………ぐわああああ!!!!」
「畳み掛ける!剣舞・氷 滅氷冷!」
ノエルが師匠に全力の突きをしたが、防がれた。
だが、師匠の防いだ剣から凍り始めた。
師匠はすぐに剣をすて、高く飛び上がった。
そこへ、宝魚が襲い掛かる。
「いくらシェイでも許せないな!剣舞・炎 灼溶乱!!!」
宝魚の剣は今までにないくらい強く燃え盛り、師匠に振り下ろされた。
「ぐわああぁぁぁぁ!!!!!!」
師匠の手首を切った!
「総攻撃だあああぁぁ!!!!!ドゥルフ グランド!!」
「エーデルシュタイン リーズヒ!!」
「ベーゼトゥーテン・彪!!」
「アンフェルフラム エペ!!」
「ベーゼトゥーテン!!」
「シュネーシュトルム フィール!!」
俺の特大雷、宝魚の特大宝石、晴魚の彪型のベーゼトゥーテン、ムッシーの炎の剣、小魚の特大ベーゼトゥーテン、ノエルの連続攻撃。
これなら…………
「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
当たった!!全部!
煙が晴れたところには……………
「ぁぁああ……………………痛いじゃないか……………ゴホッゴホッ…………………まあ、ありがたくもあるがな!治癒固有魔法 超魔法…………」
すると、師匠から溢れ出す魔力がさっきの5倍くらいに膨れ上がった。
「さあ………………やろうかぁぁぁ!!!!!!!」
声がもう師匠じゃない。
ランスは師匠に何をしたっていうんだ?
くそ……………もうみんな限界がちかい……………だが、たった1人ノーダメージがいる。
「ムッシー!頼む!時間を稼いでくれ!!」
「まかせろむし!!」
そうして師匠の爆発魔法とムッシーの爆炎魔法がぶつかり合った。
「雷魚!時間を稼いで何をするつもりだ?」
宝魚が言って近づいてきた。
みんなも近づいてきた。
「こ、小魚、腹は?」
「なんとか止血中。大丈夫。」
「ほかのみんなは?」
「「「大丈夫」」」
「そうか、みんな、俺の手のひらに魔力を送ってくれないか?」
「あれをやるんだね。わかった」
全員承知で魔力を俺の手のひらに送り始めた。
もちろん俺もためている。
新技は速い。
速いけど師匠に見抜かれる。
「もっと…………もっと………………」
(く………5軍王とはいえ、さすが聖魔軍むし……………もうそろそろ限界むし。)
「雷魚!もう限界むし!!!」
「分かった!さがれ!」
雷速のようにはやく……………攻撃を入れる!!
「ドゥルフ シュフルーファスト!!!!!!!」
自分の最大まで貯めた魔力を放出し、さらに手のひらにためられたみんなの魔力で威力増大……………
「うおおおおおおお!!!!!」
そのままのスピードのまま、師匠に一発いれた。
「ぐ…………」
「まだまだぁぁ!!!」
バアアアアアン!!!バアアアアアン!!!バアアアアアン!!!
「くらえええええ!!!!!!!!」
複雑な気持ちだった。
今までで一番の力と魔力だったと思う。
それを師匠に………でも迷いはない。
バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!
最後のパンチで師匠はぐらついた。
「く……………くそ…………でもまだ……………」
倒れようとはしない。
もう俺もみんなも体力がない。
こんなときのために……………
「シグザルゥゥゥ!!!!!!!」
そのとき、殺気のある目でシグザルが壁から出現した。
実は世界で5%しかいないが、サブ固有魔法というものがある。
その名の通り、もう一つの固有魔法だ。
シグザルはそのサブ固有魔法の抜幽込の持ち主。
体が壁などを貫通できるようになる。
そして本固有魔法の魔神力で………………
「えええい!!超身魔神力・殴!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!
「ぐはぁ!」
師匠が遂に倒れた。
おまけ
第4話「敵か味方か?黒鉄の戦士」
西の砦――そこは、かつて正義の王国が築いた最前線の防壁だった。
しかし今は、廃墟と化し、黒い霧に覆われ、**“呪われた砦”**と呼ばれている。
「……なあ、雷魚兄ちゃん。ここ、本当に人いるの?」
「いや、人の気配はないけど……妙に魔力が濃い。気をつけろ」
「へー。黒い霧ってなんかロマンあるねぇ!」
ムッシーがズルズルと這いながら興味津々で霧の中へ。
「宝魚、何か感じるか?」
「……この先に、“柱”級の反応はない。でも……」
その時――
ゴォォォォン!!
砦の奥から、重々しい足音が響いてきた。
霧の中から現れたのは――
「……敵、か?」
黒鉄の鎧に身を包んだ、大男。
その手には巨大な斧。
全身から発せられるのは、濁った魔力。
「名乗れ!」
雷魚が叫ぶと、男はゆっくりと口を開いた。
「……元・王国騎士。名はバルズ。いまはこの砦の“守護者”をしている」
「守護者?」
「ここは“柱”の手に落ちた。だが俺はまだ……俺の誇りを捨てていない」
男の言葉に、雷魚は瞳を細める。
「ってことは……敵じゃないの?」
しかしバルズは、斧を肩に担いで答える。
「通るなら、力を示せ。お前たちが“希望”の担い手ならば……」
「そういうの、燃えるじゃん!」
ムッシーが飛び上がって叫ぶ。
「バルズ、いくむし!アンフェルフラムッ!!」
地面をえぐる黒炎。しかし――
「遅い」
バルズは斧を一閃。
風圧だけで炎を切り裂いた。
「なっ……!?」
「つえぇ……!」
「じゃあこっちもいくぞ!ドゥルフ!!」
雷魚の雷がバルズに直撃!
しかし彼の鎧は傷一つついていなかった。
「いい雷だ。だが、届かん」
「宝魚!援護!!」
「任せろ!――エーデルシュタイン!!」
地面から宝石が隆起し、バルズの足を拘束する。
その隙をついて、小魚が突撃!
「いけえぇぇぇ!!強化最大、リインフォースッ!!」
バルズの腹に一撃食らわせる小魚。
――が。
「……ぐっ……ぅあああぁッ!!」
反動で吹き飛ばされたのは、小魚の方だった。
「小魚ぁぁ!!」
雷魚が駆け寄る。
バルズは斧を地面に突き立て、静かに言う。
「通ってよし。今の一撃……心に響いた」
「え?」
「……正直、痛かった。ガチで痛かった。正面からぶん殴られるとは思わなかった……」
「じゃあ通してくれるの?」
「うむ。通れ」
……拍子抜けだった。
◆
砦を越えた先、雷魚たちは小さな小屋で休憩することにした。
その夜――
「バルズのやつ、意外といい人だったな」
「マジで怖かったけどな……。あと、小魚、グッジョブ!」
「えへへ……ありがと!」
「でも……あいつの言ってた“柱”が、ほんとに砦を落としたなら――そろそろ、来るかもな」
「……準備はしておこう」
雷魚がそう呟いたとき――
ヒューン……
小屋の窓を何かが飛び込んできた。
「なに!?敵!?」
「――ま、待って!」
そこにいたのは、少女だった。銀髪に、雪のような白い衣。
「私はノエル。あなたたちに伝えなきゃいけないことがあるの」
――そして、物語はさらに動き出す。
次回、第5話
「ノエルと“雪の魔女”」へ続く!




