77話 幻覚の森 後編
"絶望"。それは文字通り希望が断たれたときの感情である。
この森はその絶望を味合わせる最悪の森である。
この森は幻覚をみせる謎の霧が発生している。
だが、その幻覚を見たものが 自分 と向き合い、"希望"を持つことで幻覚は打ち破られる。雷魚、小魚、ムッシーは幻覚を打ち破ったが、宝魚、晴魚、ノエルは希望を抱き、幻覚を打ち破ることはできるのだろうか?
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「おいおい、勘弁してクレオパトラ……なんつって」
………………………………………………………………って、そんなつまらんことはいってられない。
宝魚は自分のほほを叩いて歩き出した。
「まあ、だろうなとは思ったけどな。この森で迷って、出口で全員と合流するんだろうなー。で、1人失踪しがち。あれ?宝魚どこだ?ってな」
宝魚は苦笑いして言う。
「お!みんなミッケ!おーい!みんなー!」
宝魚は仲間たちにむかって走りだしたが、
「だれ?」
雷魚が今までで聞いたこともないくらいの冷たい声でいう。
「ん?宝魚だよ?」
「いや、だれだよ。お前みたいなやつは見覚えがないぞ?」
「え?宝魚だって!なあ、小魚、覚えてるだろ?」
「雷魚兄ちゃん、こんなやついたっけ?」
宝魚はどんどん顔が青ざめる。
冷や汗をかいて必死に言う。
「ちょ、宝魚だって!ムッシー!晴魚!ノエル!」
「こんな弱者は知らないむし。消えたほうがいいむしね」
「だれ?仲間になりたいの?でも無理。宝魚だっけ?消えたほうがいいよ。」
「しらない。だれ?ほんと。旅の迷惑だよ?早く消えてくんない?」
(どういうことだ?みんな……俺のことを忘れている?……………)
「!?」
そのとき、宝魚は信じられないものを見る。
「俺………?」
そう。仲間たちのなかに自分がいたのだ。
「残念だけど、正直この人がいてくれたらなんでもいいんだ。」
小魚はもう1人の俺の肩をポンと叩く。
もう1人の俺は不気味な笑みを浮かべる。
「は?」
「じゃ」
雷魚達は俺に背を向けて歩き去った。
宝魚は動けなかった。
疑問、恐怖、怒り、悲しみ、頭が破裂しそうだ。
ザザーー!!
目の前にノイズが走る。
次の瞬間、凶暴なドラゴンと仲間たちが戦っているのが目に入った。
宝魚は宙に浮いていて、体が半透明だ。
恐らく、向こうには見えていない。
自分も加勢しようと、攻撃しようと思ったが、すり抜けてしまう。
だからしばらく見守っていたが、ドラゴンが痺れ吐息をはいて、もう1人の宝魚以外が動けなくなってしまった。
もう1人の宝魚は恐怖で震えながら剣を振り回していた。
「おおりゃー!!」
(くそ!だめだ!こいつは弱い。剣舞・炎がつかえない。加勢したい……みんなが危ない……………助けたい………助けたい………)
「ギャオオオオオン!!!!!」
ドラゴンはもう1人の宝魚を吹き飛ばして宝魚は気を失った。
動けなくなった雷魚たちに炎を吐く。
「「「ぐわぁぁ!!!!!」
(みんなが危ない………助けろ…助けろ!)
宝魚は剣を抜いて斬りかかったが、もちろんすり抜ける。
雷魚たちに尻尾が襲う。
「ぐわぁぁ!!!」
まずい……………あと一撃でも入ると……………
「うおおおおお!!!!!!!!」
宝魚は頭の中に飛び回る様々な感情を全て"救いたい"に変えた。
次の瞬間宝魚の右手には、紅色に輝く、上下に炎をまとった弓があった。
宝魚は咄嗟に左手で親指、人差し指、中指を立てて、銃の形を作った。
弓にその手を近づけ、後ろに引くと、炎をまとった矢が出てきた。
宝魚の目に迷いはなかった。
「俺がみんなを………守る!!!!!」
物凄い勢いで矢が飛んでいき、ドラゴンの心臓を打ち抜いた。
ズバアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!
ドラゴンは紫の霧に包まれて消えた。
「ハァ、ハァ、」
ザザーー!!
ノイズが走り、気付けば森にもどっていた。
「なんだ?今のは……………うーん。幻覚か?こういう森は幻覚をよく見たりするし、ま、いっか。そういえばさっきの弓矢はなんだったんだ?」
ごちゃごちゃ言いながら歩き出した宝魚であった。
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晴魚はさっさと脱出しようと、アクロバットでどんどん木々をよけて進んでいたが、しばらく進んでいると
「この匂い…………病院?」
晴魚が戸惑っていると、気づけば病室に立っていた。
目の前には母。
「お母……さん?」
ザザーー!!
ノイズが走る。
気づけば晴魚は、お母さんに抱きつき、泣きじゃくっていた。
(そうだ。覚えている。これはお母さんの余命宣告されたときの……………私が怒っていたところだ。)
「晴魚!!!!」
お父さんの怒鳴り声が病室に響き渡る。
「だまれ。そもそもお前がいなかったらお母さんはこんなことにならなかったんだ。お前の育成のストレスのせいで…………」
「そうよ。晴魚さえいなかったらこんなことにならなかったのに…………」
両親にとんでもないことを言われ、晴魚目の前が真っ暗になっていく。
「「お前なんか……生まなければよかった。」」
そのときの2人の声は地獄の底から響くような恐ろしい化け物の声に聞こえた。
ザザーー!!
さらにノイズが走る。
目の前に両親がいて憎しみの目で晴魚を睨む。
(なに?この目線………やめてよ…………)
ザザーー!!
気づけば場所はどこか希望に満ち溢れた神秘的な遺跡になっていた。
目の前には晴魚がいる。
「え……?」
「お前はそれで満足しているのか?お前は母親から素晴らしい言葉をもらったようだが、それでもお前は自分のせいで死んだのでは?と心残りがあるのだろう?」
「そうだよ。私はあの件はまだ根に持っている。」
「胸に手を当ててみろ。何を感じる?」
晴魚は言われたとおりにやってみた。
「集中しろ。お前の心の中に眠る微かな希望を…………」
晴魚は微かに心の中にある光を感じ取った。
「これは?」
「それはお前の母親。」
「?」
ザザーー!
ノイズが走ると気づけば目の前には母親が立っていた。
「晴魚。貴方は大事な大事な娘よ。絶対に最後まで晴魚を守ってあげるわ。もう1つの約束ね」
母は晴魚にニコッと笑いかけた。
「でも晴魚。今の自分の力に不満を抱いてないかしら?」
「う、うん。そうだよ」
「じゃあ、この力を晴魚に分けてあげる。」
母親は手に光る球を持っている。
それを晴魚が受け取ると、新なるちからが体に流れ込んできた。
「それはベーゼトゥーテン・改よ。」
「改?」
「そう。ベーゼトゥーテンを撃つときに生き物を想像するとその想像した生き物のベーゼトゥーテンが撃てるのよ」
「??」
晴魚はキョトンとしていると、母は笑って言った。
「じゃあ、またね。晴魚………」
「…………………うん!ありがとう!」
幻覚から抜け出した晴魚はニッコリ笑って森を突き進んでいった。
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ノエルは仲間と離れても冷静だった。
まずは冒険厳密機を起動する。
「圏外?」
チャットでのやり取りも電話も繋がらない。
地図を開こうとしてもノイズが走る。
「うわ、面倒くさいやつだ。」
ノエルはどんどん突き進んでいく。
迷わないように真っ直ぐ。
だが……………
「え?お母さん?お父さん?」
所々銃で撃たれたような傷と吐血した両親の姿があった。
「ノエル………なんで…………」
エルザはノエルを苦しそうに見つめる。
「お前は………なにがしたかった?」
ディーターも苦しそうに言う。
「そんな……私は……私は2人をこんなことにしたかったわけじゃ…………」
「「ノエル……苦しい…」」
2人の苦しそうにな声、顔でノエルの心はえぐられる。
ザザーー!!
ノイズが走る。
(これは………私?)
目の前にはリボルバーを構えているノエルと両親。
(そうだ、これはあのとき、私が2人を殺そうと…………)
「死ね」
バアアアン!!バアアアン!!バアアアアン!!バアアアアン!!
ノエルはリボルバーを連射する。
よけれずにエルザとディーターは食らった。
「グハハ……………ギャハハハハハハハ!!!!!ギャーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!」
両親を撃ったノエルは全身に鳥肌が走る恐ろしい笑い声で笑いだした。
「これは…………ちがう………こんなこと…私はしてない………これは私じゃない。はやく……殺さなきゃ」
もう1人の自分を倒そうと剣を抜こうとしたが、体が動かない。
「そんな!ウソ…………」
さらにもう1人のノエルは自分が飲んだはずの毒を両親に飲ませ始めた。
両親はしゃべることもできない。
「く…………うごけ!うごけ!私!」
「「ノエル」」
どこからか、落ち着いた優しい両親の声が聞こえてきた。
「お母さん?お父さん?どこなの?」
「「ここだよ」」
(あ、指輪が…………)
ウトリウルからもらった両親の指輪が光っている。
「そう、そこよ」
「ノエル。落ち着くんだ。俺達はここにいる。」
「………………………そうだよね。」
「あんなノエルはただの幻覚よ。」
「でも、この幻覚は自分の敵(弱点)と向き合わなきゃいけない。」
両親の声を聞いてノエルは冷静になった。
(私の敵(弱点)……………………多分この幻覚がヒントなんだ…………………………………………そうだ。私は常に冷静に考えるようにしてるけど、まさにこの事件のときまったく冷静じゃいられなかった。敵(弱点)…………いまこの場で大笑いしているもう1人の私はまったく冷静じゃない。
それが敵)
「!!」
ノエルは自分の敵(弱点)に気付いて体が動くようにになった。
「「がんばれ。ノエル」」
両親の言葉に背中を押されてノエルは覚醒したことを自覚した。
「この力………宝魚から聞いた言葉……………剣舞・氷 氷ノ棘」
(え?剣舞・炎の出し方?うーん。なんていうんだろ………まあ炎は強魔剣の炎属性でだしてて、技自体は普通にやってるだけ。 個性 がでるんだろ。剣の技は)
という宝魚の言葉を思い出した。
あのときは全く分からなかったが今になって分かった気がする。
ノエルは剣をシュネールシュトルムの温度で凍らせて、氷でできた棘がついた剣にした。
目にもとまらぬスピードでもう1人の自分に無数の深い傷を与えた。
「宝魚…………あのスピードはどうやってだすのか分からなかったけど…自分でみつけたよ。感情を……爆発させる!」
気づけばなにもない森に戻っていた。
ノエルは静かに剣をしまって言った。
「お母さん、お父さん、ありがとう。これからも見守っててね。」
ノエルは希望に満ちた顔で森を突き進んでいった。
おまけ ムッシーからみた仲間
雷魚 頼りないときもあるけどリーダーらしい精神はしてる。
小魚 ずっ友。自分といいダックになってると思う。
宝魚 自分を除いて一番強い。なんかキラキラしてる。
晴魚 1000年に一度の美女。弱いほうだが、奥に眠る力がある。
ノエル 1000年に一度の美女。剣を振り回しててすごい。どちらかと言うと強い部類




