118話 戦後
う……どこだ…?ここは?
「治癒……屋?」
気が付けば、治癒屋にいた。
ゴリーユは……?
たしか………ゴリーユに殴られて気を失ったんだっけ?
生きてるってことは…………誰かが倒してくれたのか?
「雷魚」
宝魚だ。
横で宝魚がリンゴを切っていた。
「恥ずい」
「え?」
なんだいきなり?
っていうか宝魚も包帯グルグルなんだけど。
「俺さ、皆が気絶したあと、小魚と俺だけになっちまったんだ。まぁ、そのあと小魚もやられたんだけど。それで、小魚にはゴリーユと戦う前に優しくしてもらってさ、その怒りのせいか知らないけど、俺完全にハイになっちまったんだ」
ハイ………?
廃人ってことか?
「廃人とは違うのか?」
「ちょっと違うかな。まぁ、薬ヤってる人みたいなかんじ。」
「あぁ………」
それが恥ずかしいわけね。
「ハイになったとき、幻覚の森で使ったあの弓矢を使うことができた。今回は高度の怒り………いや、悲しみとか、悔しさとか、様々な感情が爆発した。そして幻覚の森の時も様々な感情が爆発した。」
「つまり、宝魚は感情が爆発したときに弓矢が撃てるってことか?」
「そういうことだ。」
新技の余地あり。
幻覚の森でもノエルが感情を爆発させて剣舞・氷が使えたっていってたけど、それ以降はちょっとした感情でできるようになったらしいし。
うーん。
「ほら、これ食えるなら食いな。」
そういって差し出してきたリンゴを俺は口に運び、言った。
「ありがとう、そういえば他のみんなは?」
「あぁ、まずノエルと晴魚は無事だ。軽傷…………ではないけどまぁ、とにかく無事だ。そして小魚は頭骨破損、右腕は複雑骨折、左足も骨折、あばら骨4本骨折。重傷すぎる重傷だが、命に別状はなしだ。すごいよな。とんでもない戦いだと察した人が凄腕の医者を呼んでくれたそうだ。」
「そっか、それは…………よくはないけどよかった!!」
「ははは!!俺は無事だ。打撃だけで特に大きな損傷はない。」
「そうか、よかった。ムッシーは?」
「雷魚、動けるか?」
宝魚がきく。
まぁ、大丈夫かな?
「うん。」
「ちょっときてくれ」
そういって宝魚は部屋を出て、違う部屋に入った。
俺もそれに続いた。
「むしむしむしむし!!!!体中が痛いむし!!!骨が割れてるむし!!凄いむし!!僕にこんなダメージを与えられるなんて!!!むしぃぃぃ!!!」
めちゃくちゃ興奮している……………
俺がボソッと呟く。
「無事そうだな」
宝魚が言う。
「そうだな。」
「ちょっと、動かないでください!!」
ありゃりゃ、医者が困ってるぞ。
「おいムッシー!」
俺が叫ぶ。
「あ、雷魚!無事だったんむしか!よかったむし」
俺はムッシーに顔を近づけて言った。
「この後焼肉食わせてやるから静かにしてろ!お医者さんを困らせるな!」
「はい!むし」
と大人しくなったムッシーをみて医者は言った。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
そういって俺と宝魚は元の部屋にむかって歩いた。
俺は言った。
「……………………大師匠は?」
ずっと気になっていた。
だからこそ最後にきいた。
「……………………まだ意識が戻ってない。」
「……………そうか………俺のせいで……」
大師匠は俺をかばってくれた。
俺があのとき、ピンチにならなかったら…………
宝魚は言った。
「大丈夫、雷魚はなにも悪くない。俺がついてるよ。それに小魚たちもね。」
「あぁ」
宝魚は思う。
(小魚、お前が言ってくれた言葉、借りるぜ。まぁもう借りちゃってるけどね。お前なら許してくれるだろ?)
「そうだな、聖魔軍最強だもんな。」
と言う俺に宝魚は笑っていった。
「あぁ」
―――――――――――――――――――――――――――――
全員が集合した。
アオイさんの部屋の前に。
小魚は自力で歩けず、俺が車椅子を押している。
ノエル、晴魚、小魚、ムッシー、宝魚、俺。
この6人は無事。
手術はもう終わったそうだ。
成功したか、失敗したか、まだ聞かされてない。
心臓の鼓動が速い。
呼吸が苦しい。
冷や汗がとまらない…………
ガラガラガラガラガラガラ……………
「「「!!!!!!!!」」」
ドアが開いた。
そこには、車椅子に座った大師匠の姿があった。
「やぁ、みんな」
「「「よかったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」
「大師匠、よかった!!僕と同じ車椅子だけど」
「よかった、アオイさん。信じてたぜ。」
「むし!!さすが最強の男むし!」
「アオイさん!生きててよかったよ!!」
「本当に………よかった!!」
みんなは嬉しそうにしているが、俺はハッピーになれなかった。
もちろん、大師匠が無事だったことはこの上なく嬉しい。
嬉しいんだけど、俺のせいで大変な目にあったんだ。
本当に申し訳ない。
俺が浮かない顔をしているのに大師匠は気づいて声をかけてくれた。
「雷魚、俺生きてるよ」
「はい………」
「俺は自分の意志で雷魚をかばったんだよ。どうか自分を責めないでくれ」
「すいません………俺のせいで……………後遺症とかは?」
「………………ちょっと体が動かしにくくなったかな?くらいだよ!!」
「…………………本当にすみません」
「この後遺症は1年で治る。凄腕のドクターがいるよ。大丈夫だから。体が動かしにくくなっただけで魔法は難なく撃てるし、難しすぎる任務以外は全然できるよ」
「……………でも…そういう問題じゃなくて、大師匠が辛い目に」
「さっきも言った通り、俺は自分の意志でかばった。雷魚が痛い目をみるよりずっとよかったよ。自分を責めるのだけはやめてくれ。それにゴリーユも倒せたし、結果オーライじゃないか!!」
「………………許してくれるんですか?」
「最初っから許してるよ!!」
「そうですか………ありがとうございます!」
本当に………いい人だ。
聖魔軍はやっぱり、優しい人しかいないんだな。
その後、宝魚は皆にゴリーユ討伐のことを話した。
「なるほどなぁ、うーん…………サブ固有魔法ってことか?でもちょっと違う気がするんだよな……」
大師匠が考えこむ。
俺達も考えこむ。
やっぱわからんな!!!
「わかるのは、感情を爆発させた時に使えるってことくらいかな?」
ノエルが言う。
「そうだな。」
宝魚は頷く。
「これからどうする?」
と俺がきく。
すると大師匠は言った。
「俺はもう旅に同行しない。もちろん、後遺症を治すためでもあるけど、雷魚たちは自分たちで旅をした方が成長するなって思ったしね」
「え………っていうか僕って後遺症ないの?」
と小魚がきくと宝魚は言った。
「ないらしいぞ?小魚のサブ固有魔法、大食いだろ?だから養分が大量にあって…………………なんか……………どーちゃらこーちゃら言ってた。」
「なるほど…」
つまり、小魚はラッキーってことか。
「どれくらいで完治するのかな?」
晴魚が言う。
それに宝魚が応える。
「医者が言うには一番長いのは小魚で3ヶ月らしいぞ。」
「マジかよ!!」
と俺が叫ぶと同時にムッシーも
「凄すぎむし!!」
と叫ぶ。
「「「ふふふ………はははははははははは!!!!!!!!」」」
皆で大笑いしたのだった。
―――・・・―――
あれから2ヶ月がたった。
晴魚はフバンが付きっきりで心配はない。
1ヶ月前にノエルは復帰したし、宝魚もなぜか傷が少なかった。
そして俺もあれから一週間で復帰した。
宝魚が言うには弓矢が大量の魔力を放出したから回復した。
とか意味わからんことを言っていたが、謎なのでそういうことにしといた。
小魚とムッシーはずっと一緒にいる。
まだ入院中の晴魚と小魚とムッシーは寂しくない。
そして大師匠もリクさんが結構な頻度でお見舞いに来ているらしいから大丈夫だ。
復帰した俺達3人は、特に特別なことはせずに、一般人のような生活をしている。
強いて言うなら体がなまらないように特訓サポート店に通っている。(ジムみたいなところ)
そこは、魔法の最大火力とか、連続撃ちとか、シンプルに筋力付けとかの設備があって、正直めちゃくちゃ助かっている。
あと1か月でまた旅に出るんだ。
心と体の準備をしっかりしておこう!!
あ、そうそう、まだムッシーに焼肉はおごってない。




