102話 雷の精霊 ライルト
はるか上空……………そこは、英雄精霊の中で一番強い雷の精霊 ライルトがいる。
「はぁ………」
アプサラスは大きなため息をついた。
「どうしたっていうんだ?ため息なんてついて」
エルストがきく。
だが、アプサラスは黙っている。
俺はわかる。
「ははん!さてはライルトが苦手なんでしょ!!」
とハーピーが叫ぶとアプサラスはピクッとなった。
「あー、なるほどね」
イフリートも手をポンッとして頷く。
もうやめてあげろ。
そう、アプサラスは水。
そしてライルトは雷。
水は雷が苦手なのだ。
そのとき、
ピシャーン!!
雷が俺達の目の前落ちた。
「うわぁ!」
エルストが急停止して俺は落っこちそうになる。
「お前たち………」
青年のような声があたりに響く。
「「「ライルト!」」」
精霊達が目の前を見つめる。
すると、精霊達が見つめる場所からビリビリッと電撃が走り、トゲトゲ頭の黄髪の青年が出てきた。
「君がライルトか?」
ときくとその青年はゆっくり頷いていった。
「英雄精霊全員がここにくるとは何事だ?と聞きたいところだが、それ以前になぜ人間がいる?」
イフリートは応えた。
「こいつは……ガオナはただの人間じゃない。全ての属性を扱える特別な人間だ。」
「…………だからなんだ?」
うわさに聞いていた通り頑固者だな。
アプサラスが続ける。
「ライルト、雷の精霊の代々受け継がれてきた書物にも書いてあるはずだ。全属性を扱える人間……ガオナには絶対服従だって」
「たかが書物、お前たちは本気で信じているのか?」
ハーピーも必死に言う。
「たかが書物って、代々受け継がれてきた大事な書物よ?私達はガオナが本物だってことをちゃんと確認して契約したのよ」
そしてエルストも言う。
「ライルト、お前の気持ちもわかる。なぜなら我もまだ契約していないからだ。でも信じてはいる。書物にあるとおり、ガオナが来たということは世界がピンチになりつつあるのだ。」
「…………」
ライルトは黙り込んでしまった。
「ライルト、俺はこの世を汚したくないし、英雄精霊に迷惑もかけたくない。エルストも言った通り、ライルトは俺に服従しなければならない。いやなのは分かる。俺も誰かに服従するのは嫌だからだ。でも悪いようにはしない。頼む。力を貸してくれ」
と俺も語りかけるとライルトは閉じていた目をようやく開いて叫んだ。
「お前に服従するのが嫌なわけではない。4人の精霊たちも言っているし、俺は信じるとする!」
「なら…!」
「だが、俺はここにいるべきじゃないのだ。俺が精霊になんてなってはいけないのだ。」
何を言っているのだ?
「だが、お前は実力がある。」
「実力だけじゃダメなんだ!!俺は………俺は………………………」
なぜかライルトは涙をポロポロと流し始めた。
「……俺がいなくても…………何とかなるだろう。もうこの話は忘れろ…………」
そう言ってライルトはどこかへ行こうとしたが……………
「ガオナは精霊王様の生まれ変わりだ!!」
エルストが叫ぶとライルトは止まった。
「そうか……………そうだったな」
するとライルトは放電を始めた。
英雄精霊達は やっちまったな…… みたいな顔でこっちを見ている。
ってなになに?なんなの?
「ガオナとやらよ…………」
ライルトは振り向いた。
笑っているが、泣いていて、奥に怒りもあるような顔だ。
怒りが強い。
俺でも分かった。
「お前の力を見せてもらおう」
ビリビリビリ…………バアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
「ガハッ…………」
爆発する電撃が俺の腹に直撃した。
「どうした!精霊王の生まれ変わりなんだろ!?」
やる気満々だ。
拳に電撃をためて今すぐにでも襲い掛かってきそうだ。
やるしかない。
「わかった。いいだろう。」
覚悟を決める。
やらなければならない事………な気がする。
そのとき、俺の体がふわりと浮いた。
「……え?」
だが、初めて使ったとは思えないほど安定感がある。
「お前、宙に浮けたのか」
エルストがこっちを見てくる。
「ご、ごめん」
俺だって空中浮遊ができるなんて知らなかった。
とにかく、これなら英雄精霊のみんなを巻き込まずに戦える。
「みんな、離れててくれ」
皆はうん。と頷き遠くにワープした。
覚悟を決めるとき、なにかを捨てる必要がある。
俺の奥に眠っていた扱浮遊はその””なにか””につっかかって起こされなかった。
だが今、過去最高の覚悟を決めたことで新しい能力がたたき起こされた。
ステータスの上昇、さらに魔力の増大、新能力が多数。
これならいける。
「いくぞ!」
ライルトはとびかかってきた。
だが俺は手を前にして唱えた。
「フリーゲン」
ライルトは大きく後方に吹っ飛んだ。
だが、ライルトも手から球体を出してきて、俺の真上に飛ばした。
落ちる。
そう思ってよけた。
雷が落ちた。
これは………新能力、未来予知だ。
「アトリバーインパクト」
「ぐああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
ライルトは直撃し、体が震えていたが、すぐに体制を立て直して遠距離攻撃を仕掛けてきた。
指の間から細い電撃を発してきた。
だが、そのまま跳ね返す。
「アトリバーインパクト」
「ぐああぁ!!!」
またもや直撃して、ライルトは俯いてしまった。
「…………ははは……俺を倒しても俺は認めない…………………」
そう言ってライルトは東南東の方角に飛んで行った。
「ふう………」
なんとか戦いが終わった。
英雄精霊が駆け寄ってきた。
「ガオナ、無事か?」
イフリートが心配そうにきくが、俺は頷いて言った。
「ああ、大丈夫だ。それより、あいつ”精霊になんてなってはいけないのだ。”みたいなこと言ってなかった?どういうことだ?」
「ああ………我が説明しよう」
エルストが言った。
「ライルトは実は、勇者の片割れなんだ。」
「「「え?」」」
イフリートとアプサラスも驚いている。
どうやら2人も知らなかったようだ。
「ライルトは勇者の片割れで、精霊王様の次に強い精霊になった。つまり、本当は勇者になるはずだったが、原因不明の事故のせいで精霊になってしまった。そんな落ちこぼれのライルトに精霊王様は手を伸ばしたが、ライルトはそれを無視した。
精霊王様の陽気な日常に嫉妬していたのだろう。
そして我とハーピーは勇者と出会い、契約した。
一代目はライルトはいなかったが、二代目、三代目はライルトも勇者に出会い、契約した。」
なるほど…………まあ、イフリートとアプサラスは勇者にあったこともないから知らないのか。
「この話はライルトが我たちに話してくれたのだ……………」
「そうか……………………………そうだ、ライルトを追いかけよう」
「「「え?」」」
「ライルトが行った東南東は大穴がある方角だ。みんなでいこう。」
俺は皆を見回した。
「そうだな。ガオナ、お前についていくと決めたからには俺はいくぜ」
イフリートはガッツポーズを取る。
「私も、ガオナの契約者だ。いこう!」
アプサラスは手を腰に当てて言う。
「私を忘れていっちゃだめよ!ガオナ、私を頼るのよ!!」
ハーピーは腕を組んでふんぞり返る。
「ガオナ、お前はよくやった。契約者になることを認める」
エルストはイフリートとアプサラスとハーピーの契約の印の上に契約の印を刻んだ。
「「「あ、俺(私)の契約の印の上に……」」」
という3人を無視してエルストは言った。
「我もライルトが気になる。そして、我はお前を認めよう。共にライルトを追いかけよう。」
「ああ、ありがとう、みんな!いこう!!」
そうして俺達はライルトを追いかけるため、ここから東南東の大穴にむかうのだった。




