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知性あるゴブリン『ピッコロの旦那』と13番通りの果て【ハデス像】の向こうに広がる別の世界

毎日18:00投稿します!

よろしくお願いします!

男が来ては女性を連れて行き、女が手を振れば男性が来る。

慣れない格好に違和感を覚えながら、しばらくそんなやりとりが行われる。

短いスカートはスースーするし、胸元の開いた服も気になり虎の毛皮をしっかりと着込む。

それになんだかお尻の間に食い込む下着生地が、少しずつ入り込んでムズムズする。

太腿を思わず擦り合わせている時に、女性を品定めしている髭の立派な大男ーーー多分、ずんぐりむっくりしてるドワーフの亜人かなーーーと目が合い、エッチな目で見られた。


「身悶えて、誰かにスケベな魔法でもかけられて放置プレイかい?へっへっへ」


なんか言われたんですけど!

すす、スケベな魔法って一体何!?

恥ずかしいよぉ!!

男女のイヤらしい逢引きに、キャットファイト。

マジョルカのHPはもうゼロです!

むしろマイナスです!

もう色んな意味で、今すぐに帰りたい。

貴方ごめんなさい!

私の頭の中がパニックを起こしたが、その亜人は不思議な事に、私に寄っては来なかった。


「お前見ない女だな。【ロレンツォの印】を見せろ」


すると突然ドスの効いた声が聞こえた。

思わず振り向くと、さっき偉そうに獣人女性の場所を横取りにした、金髪巻き髪の『アタイ』さんだ。


「この女だよ!私の持ち場を横取りしたのは。やっちゃってよ、バンビ」

「おい!俺をバンビって気安く呼ぶな。そう呼んで良いのは、ロレンツォだけだ」

「分かったわよ、『ピッコロの旦那』さん」


ドスの効いた声の割には小柄に見える。

その黒い背広姿の小柄の男の後ろには、さっきアタイさんに髪を引っ張られた猫の獣人がいた。

獣人(かのじょ)に小言を言う時振り返ったその背広姿の男は、目がぎょろっとして血走っていた。

あれって、ゴブリン?

ゴブリンって人の言葉喋れるの?

アタイさんは自分の腰くらいまでしか無いそのピッコロさんというゴブリンに腕組みをして言い返した。


「アンタに許可が無いと街に立っちゃいけないのかい?何さ、ピンクの松明なんてきどりやがって!」

「お前、何も知らねえところを見るとヨソもんだな?」

「何がロレンツォだ。聞いたことないね。そっちこそ新参じゃないのかい?言っとくけどね、工業地帯を締めてるのはべルーシさね!アタイはべルーシファミリーの幹部(カポ)に知り合いが居るんだよ?」

「【ハデス一帯】はロレンツォの仕切りだ。……でも、ありがとよ」

「は?何がだい?アンタ、一体ーーー」


その瞬間小さかったピッコロさんが、突然巨大化した。

大きさは大岩のようで、目は赤く光る。

噛み締める歯から悍ましい牙が見えた。

その巨大化したピッコロさんはアタイさんの口を握り上げて、軽々と持ち上げてしまった。

アタイさんは足をバタバタさせるが、そんな抵抗も虚しく、口を抑えられて悲鳴も上げられない。

ピッコロさんはそのままハデス像の【向こうの通り】にアタイさんを投げ飛ばしてしまった。

するとアタイさんの後ろには、突然真っ黒いローブにフードを被った人が闇に滲むように現れた。

というか、アレは…人なの?

被っているフードから黒いモヤモヤが出ている気がする。

アタイさんは「離せ!」とか「やめろ!」とか言っていたけど、そのローブ姿の何かを目にして両腕を掴まれると、『【穢れた(フェルシアン)】』と呟いて、その表情が一変した。


「わ、悪かったよ。ほら、つい出来心でさ!ね?ね?」


アタイさんはまた小柄に戻ったピッコロさんに乞うように謝りだした。

ゴブリンはポケットから葉巻を取り出して指先に火を灯らせる。

「3つある」と言って、4本ある指を一本折り曲げた。


「一つ。ロレンツォの妹分に手を出した。それは俺の妹分って事だ。しかもアンタは「半獣」って言ったらしいな?二つ。アンタはべルーシの知り合いなんだろ?ロレンツォはべルーシと揉めたがってた。アンタは良い火種になってくれた。さっきのはその礼だ」


そう言いながらもアタイさんはローブ姿に引っ張られる。

アタイさんは必死に抵抗しているが、さっきのような威勢はなく、恐怖や焦りが、引き攣る形相に有り有り浮かんでいた。

ピッコロは煙を吐きながら「3つ」と続けた。


「その通りを超えたら……俺にはもう、どうにも出来ねえ」


アタイさんは「ごめんなさい」「許してください」ともう全く違う女性のようになり、小声で懇願していた。

しかしそのままずるずると引きづられて、その通りの奥の方に消えてしまった。

無慈悲に。

無感情に。

フードの黒いモヤモヤで気がついたけど、その引っ張る力にも人の感情が一切なかった。

だからあんなに威勢の良かったアタイさんが掴まれた時に、あんなに必死に謝り出したんだ。

『人相手じゃない』から。

『その通りを超えたら、もうどうにも出来ない』。


「おい!」


その声に私はハッとして我に返った。

目の前にはさっきのピッコロさんが立っていた。


「あんた、見ない顔だな」

「え?え?アタシ?」


どど、どーしよう!!

印なんて持ってないし!!

まさか、私もあの闇の中にすっ飛ばされちゃうの?


「コンシリエーレの客人だろ?待たせたな。こっちだ」

【穢れた血】……。ぴえん。

読んで頂いて、ありがとうございます!

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