ボロボロのハデス像を境に松明はピンク色に染まる
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【南北に通る縦道】は『通りの名前』があり、交差して【東西に伸びる横道】は『番号が振られている』。
日が沈んでから『12番通り』と大聖堂通りより南東に下った炭鉱や鍛冶場のある工業地帯は、ドワーフと人間が酒を酌み交わしながら、その日の疲れを癒す酒場が多かった。
「噂で聞いたけど、本当にハデス様が酷いことになってる……。初めて見た」
工業地帯の酒場の外れにある【ハデス像】。
冥王とは名ばかりと言わんばかりに、腕は折られ、片目が欠け、落書きされ放題されている。
その【ハデス通り】から安宿が増えてくる。
は外で客を引く人もどことなく如何わしい雰囲気が漂う夜の盛場。
「酒場と盛場』を隔てるように、『13番通り』からは盛場から桃色の炎が松明に揺らいでいた。
炎の色を変える何かの魔法かな。
見るも無惨なハデス様の周りには、ケバケバしい夜蝶の様な露出度の高い服を着た女性達が行き交う男に手を振ったり、微笑みかけたりしている。
つまり。
今ハデス像の前に立つ私は、娼婦と間違われても不思議じゃないという事なのです!
しかもその格好は虎のコート着たまさしく夜蝶なのです!
思わず「もう、自分でもイヤになっちゃう……」と、独り言を呟く。
【リリン】の為とはいえ…。
「これでよし。後は自分でそれっぽくしてね♪」と『あの人』に言われて、赤いミニスカートで黒のタイツを買ってきた。
なんだか気分が盛り上がってしまい、下着をTバックにした事を今は後悔している。
するとドキドキしている私を横切り、すぐ近くに立っていた女性に一人の男が近づいてきた。
「ねえちゃんいくら代?良い体してるな、魔法で胸大きくしてるんだろ」
「失礼ね。人工じゃないわよ、天然よ。な・ま♡」
「え?そうなの?見せてみろよ」
そう言って胸の抉れた服を引っ張り谷間を覗くと赤いランジェリーが、私からもチラリと見えた。
「ちょっと!これ以上は金取るよ?」
「触ってみないと魔法かどうか分かんねぇだろ。ちょっと揉ませろよ。おお!ホントだ、モノホンのデカパイじゃねえか」
「あん♡ほら、分かったろ?後はベッドの上でね♪ほらほら、さっさと金出しなって。…まいど〜」
男はベタベタと女性の体を触りながら、金貨を胸の間に挟むと、宿の方へと消えて行った。
むりむり!あんな風に身体を触られるなんて無理です!
私には大切な主人がいるんですから!
…そうだ。
その主人のため。
だから『あの人』に言われたまま、こんな格好でココにきたんだ。
よし!
私は自分を鼓舞しようと小さくガッツポーズをした。
その時。
「あんた向こう行きな!今日からここはアタイのシマだよ!!」
「痛い痛い!髪引っ張んじゃねーわよ!」
突然、女性同士の縄張り争いが勃発した。
金髪の巻き髪の女性が、そこにいた黒髪ストレートの女性に掴みかかる。
すると、その黒髪がずるっとずれて、癖っ毛のあるショートカットが露わになった。
その頭には猫耳がぴょこっと出ていて、興奮でピンと立っていた。
「あっはっは!何コレ、ズラじゃん!しかもメス猫の半獣女じゃないか!」
「クソ、覚えてろよ!」
猫の獣人女性はかつらを持って半泣きで行ってしまった。
なんか可哀想。
「あん?アンタ、何見てんだい?」
すると私の視線に気づいて、その巻き髪の女性は腰に手を当てて睨み返してきた。
「たいそうなコート着やがって。けっ、安アマのくせして!」
こ、怖すぎる。
私はさっと目を逸らしてガタガタ震えていた。
マジョルカ、君ってヤツは……。
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