短剣図柄保有者(スペードスートホルダー)と或る女性の密会
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「マジョリカ、君のその身体は僕に罪を与える程魅力的だ。君の為なら俺はどうなったって良い」
白い肌をしたその女性は屈強な身体をした男に跨り、緩いパーマの髪を妖艶にかき上げた。
男の身体は傷だらけだった。
斬撃や牙跡の古傷が、その男の強さを勲章のように物語っていた。
軋むベッドの傍には【紅い鎧】が置かれ、ガタガタと揺れていた。
それは『炎耐性』があり、戦利品で生計を立て生業とする騎士が好んだ。
「すまない。そろそろ行かないと。今日は代表戦だから、抜けられないんだ」
「『焔討ち』【前衛】なのに、もうお終いなの?つまらないわね」
【焔を討ちし民】。
元々は『農民が一致団結し、村を襲った竜を倒したとされ、入団試験には純粋な覚悟と意思が問われるだけで身分不問の民間団体として古くから知られたギルド』だった。
男は装備品を慣れた手つきで身につけて、マントを翻した。
椅子にかけられたそのマントには数ある騎士団の一つで火炎を噴く魔物を専門に狩る【焔を討ちし民】のマーク『禍々しい炎に剣が刺さる』デザインが施されていた。
「そう言うなよ、これでも【短剣】の【図柄保有者】なんだ」
竜を恐る農民を先導したと言われる四人は、それぞれトランプの図柄に例えられた。
そして【短剣図柄】は『【焔討ち最強』を意味した。
鎧の胸部にも竜と思われる四連の爪痕があった。
それでも壊れなかったのは、これを作った鍛治職人が名工だったのだろう。
「あなたの技能また見たいわ。今度はいつ会えるかしら?」
「すぐさ。次はもっと君の事を愉しませてみせるよ」
背中に背負わなければならないほどの大剣、所謂【ドラゴン殺し】を点検しながら、男はメリルに次回の逢瀬を取り付けようと口説く。
鎬には、属性を付与させたであろう聖職者がエルフ語で印した刻印が浮かび上がる。
『汝、処女神ヘスティア、又の名を、ウェスタの御名に於いて…』。
その文字の羅列から始まる【召喚句】が抜剣時に発動した事を確認すると、ガシャンと重い金属音をさせて納剣する。
「そのエルフ語。盾に描かれてるのを見たことがあるわ」
「それは後衛さ。火炎を吸収する。俺には火炎を切り裂く召喚句だ。まっ、俺らがいなければ、臨時は成り立たないけどね」
男は軽々とその大剣を背負った。
仲間が集う集団とは違う、その場限りの即席同盟を人々は【臨時】と言い、深い森深い森に挑む時にそう呼称した。
「へぇ、そうなの?なんだか男らしくて素敵ね♪」
マジョリカはその専門的な知識と力強い筋力に、艶かしく見つめた。
男は気を良くして、目を閉じ指を立て、続けた。
「【前句】で『属性を有する神の名を呼び出す』までは同じだけど、【後句】の『その神に祈りを捧げる』部分が違うんだよ。ん?でも、どうして盾に【炉の神】である『火炎耐性』詠唱句なんて見たことがあるんだい?」
するとマジョリカは「そんな事忘れちゃったわ」と、そっぽを向いてはぐらかした。
「そんな事より」と続けて、ベッドの上で躙り寄って、女豹の如くしなやかに男に迫る。
「もう一度愉しみましょう♡」
「おいおい、ギルドの集会に遅れーーー」
唇を唇で塞ぐと、鎧のつなぎ目に細い指を入れて留め具を外した。
ガシャン
大きな音を立てて鎧が床に転がる。
そして二人はまたベッドの中に入っていった。
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