1話(プロローグ) 最初の転移と爆発直前
「な、なにこれ・・・?」
僕は尻もちをつきながらそう呟くしかなかった。
「な、なんで、なんでこんな事になったんだぁぁぁぁあ!?」
◆ ◆ ◆
ー数分前ー
僕がいつものように学校から家に帰り、僕の部屋で制服から私服着に着替えようとした瞬間だった。
視界が一瞬で切り替わり、気がついたら僕は見慣れぬ景色の街の喧騒の中に居た。
「え?」
僕はあまりに衝撃的な出来事に脳がついていけず、しばらくそのままの状態でぼーっと立っていたが、そのあと周囲を確認するためにキョロキョロと首を回して辺りを見回す。
(・・・ここはどこだろう?
・・・それにしても黒髪の人がいないし、西洋風の顔立ちの人が多いな。僕は外国にでも来てしまったんだろうか?
・・・あれ?でも、おかしいな?)
僕が立っている道はアスファルトで舗装されておらず石畳で覆われており、周りの家はレンガの壁で出来ていた。
さらに、僕が立っている場所が大通りで時間帯が夕方なのもあるのかたくさんの人が行き交っており、僕のことを興味深げに見てくる人もいるが、どの人も外国人のような見た目をしており、僕のように黒髪や黒眼の人はいない。
それだけでも衝撃ものだがそれだけではなく、普通はいないとおかしいのに〇〇がここには見あたらない。
(もしかしてここには〇〇がいない・・・?
だとするとここはどこなんだ?
・・・もしかしたら僕は、これからもう二度と両親や友人、それに"○○"と会うことや家に帰ることができないかもしれないのか・・・?)
僕がそう考えていると、
「あぶない!!」
「えっ!?」
僕の視界外から声をかけながら、誰かが急に僕のことを横に突き飛ばし、僕はその衝撃で目をつむりながら尻もちをついた。
その瞬間、
「ドガーーーーーーーーーーーーーーン!!!」
何かが崩れるような音が辺りに響き渡った。
僕が恐る恐る目を開けると、僕が今まで立っていたところの後ろにある壁が崩れ、僕を突き飛ばしたと思われる人の服が瓦礫の隙間から見えた。
「えっ!えぇぇっ!?」
『キャーーーーーーーーーーーー!!』
周りのひとが悲鳴をあげる中、僕は何が何だかわからなくなっていて尻もちをついたままうろたえて動けないでいた。
しかし、僕がうろたえているう間に崩れた壁の中からは・・・
「リ゛ャーーーーーーーーーーーーーー!!」
何かを咥えているなんとも形容しがたい見た目をしたバケモノが、"この世のものとは思えない"奇声を発しながら姿を現していた。
あえて見た目を表現するのなら筋肉の怪物、全身に皮膚という皮膚がなく筋肉がものすごくついた人間といったような見た目だった。
だが大きさは人間の数倍もあるが、体に対し口が異様に大きく犬や猫のようにつきでていたり、犬や猫のような耳が頭の上に付いていたり、そこそこ長い尻尾が付いていたり、四足歩行をしていたりする姿を見ると怪人や巨人といった印象よりも先に"バケモノ"といった印象の方を抱いた。
「な、なにこれ・・・?」
「ゴシュッッ!」
「ブシャァァァァァァァッッッッ!!」
僕がそのバケモノを見て、驚きながらも怯えてその場から動けないでいると、そのバケモノは突然咥えていた"何か"を噛みちぎり、それによって咥えられていた"何か"のちぎれた欠片が僕の目の前に落ちてきた。
その"何か"の欠片とは・・・
「ひ、人の顔!!」
"女性"の上半身だった。
僕があまりの恐怖に動けずその場で震えていると、上から手が伸びて来て女性の上半身を掴みうえに持っていくと、代わりに上から透明な液体が降ってきて僕の目の前に落ちた。
「あ、あ、あ・・・」
「メシャッ!ゴシャッ!バキッ!」
上から何か嫌な音がする。
僕はおそるおそる上を見上げた。
すると・・・、
「あ、あ、あ、あぁ」
「ンゴッ、ッ、ッ、ゴクン」
女性の上半身がよだれを垂らしたバケモノに飲み込まれていく姿が見えた。
そして、バケモノは女性を飲み込むと・・・
「リ゛ャーーーーーーーーーーーーー!!」
こっちを見て吠えた。
「あ、あ、あ、あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!な、なんで、なんでこんな事になったんだぁぁぁぁあ!?」
僕は相変わらず恐怖で体が動かず、そのバケモノに近づかれても逃げることができなかった。
そして、バケモノと僕の距離が近づき、もうすこしでバケモノの口が僕の顔にくっつきそうなところで・・・
「〔パーン〕ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」
とんでもない大音量とともに僕の視界は紅く染まった。
◇ ◯ ◇
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(真ッ暗ナ闇ノ中、ボクノ息遣イダケガ聞コエル・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(ズイブン長イ間、物ヲ食ベテイナイ・・・。
モウ、長クハモタナイダロウ・・・。)
「ハア、ハア、ハア!ッッッッ!!」
(腕ヤ脚ガ痛ム・・・!
モウ"右腕ヲ除イテ残ッテナイノニ"・・・!)
「ハア!!ハア!ハア!ハア!ハア・・・」
(アノ時ノ僕ハ、マダ知ラナカッタ・・・。
アノ時カラ、ツラク、苦シイ時間ヲ・・・。長イ、永イ、永遠トモ言エルアイダ過ゴサナケレバナラナイコトヲ・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(アレカラ、何度モ"アノ日ノ朝"ニ戻ッタ・・・。
何度モ、何度モ・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(タクサン、ツラクテ苦シイ思イヲシテキタ・・・。
タクサン、タクサン・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(モウ、アンナ思イハ二度ト味ワイタク無イ・・・。
ダガ、何度モ嫌ナ思イヲスルダケダッタ・・・。
ソシテ、結局マタ"アノ日ノ朝に戻ル"・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア・・・」
(人間ナンテ、全員自分勝手ダ・・・。)
「ハア、ハア、ハア、ハア」
(人間ナンテ、自分が一番大事ダ。)
「ハア!ハア!ハア!ハア!」
(人間ナンテ!タダ本能ニ従イ!)
「ハア!!ハア!!ハア!!ハア!!」
(イザトナッタラ!!自分ノ都合ノママニ生キル!!)
「ハア!!ハア!ハア、ハア・・・」
(僕ハ、ヒトリダ・・・。
誰モ信ジルコトガデキズ、タダ独リデイル孤立シタ存在ダ・・・。)
「ハア・・・、ハア、ハア!ハア!!」
(憎イ!!憎イ!!憎イッッッッッッッッ!!!
コノ現状ガ!!!コノヨウニナツタコト全テガ!!!)
「ハア!!!ハア!!ハア!ハア、ハア・・・」
(ソレニ・・・、ツラクテ、苦シイ・・・。虚シクテ、トテモ疲レタ・・・)
「ハア・・・、ハア、ハア!ハア!!ハア!!!」
(ダガ、ソレデモ・・・。イヤ!ダカラコソ!!ボクハ!!!)
その瞬間、俺の中で何かが弾け、爆発し・・・、
「ハア!!!ハア!!ハア!ハア、ハア・・・、・・・」
(・・・俺は、絶対に・・・)
・・・それによって、その何かを覆っていたものがガラガラと音を立てて俺の中で崩れていった。
しかし、それもすぐに爆発の衝撃で跡形もなく消え去る・・・。
「死んでやる。」
・・・爆発した後に残ったものは何もなく、真っ暗な闇が俺の中で広がっていた。
俺の意識はまた、暗転した。




