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4 —10

 だってとマキヨ嬢は抱いたままのわたしを覗き込んだ。


「発想が私たちより豊か過ぎて、思いがけない驚かせ方をするんだもの」


 あー、それはわたしが映画とかゲームとか小説とかで、喜んでホラーしてたからじゃないかなー。特に日常に侵食する系のホラーは好んでたから、そういう発想になりがちというか。

 この人たちからしたら、わたしはある意味進んでいるわけで。これぞ異世界転生!方向間違ってる気がするけど。


 ちなみにマキヨ嬢には軽くこういう本があってねって説明したこともあるんだけど、あまり理解してもらえなかった。そんな怖い本があるの、とちょっと引かれた。この世界にはそういう本はないのかと思ったけど、よくよく考えたらマキヨ嬢は読まなさそうだ。本読まなくても幽霊見えてるんだし。


「でもすごく驚いてもらえたわ。うらめしやって言わなくてよかったわ」


 千代子ちゃんの言葉をそのままベルドとシャクヤに伝える。うらめしやって、どういう訳になってるんだろ。わたしは普通に喋ってるつもりなんだけど。どうやら通じてるらしい。


「ねぇ、次は何する?」


 むしろ千代子ちゃんがウキウキなんだよなぁ。完全に次何して遊ぶ?ってノリなんだよね。

 そうだなぁ、次か。石花を追い込むなら一人の方が良さそうだし。


「次は護衛を追い払おうか。今ってあの人たち、何してるかな」


 何かが聞こえたように、千代子ちゃんが襖の方を見る。ベルドも同じように襖を見た。


「あら、来たわ。通訳がいなくて困ってるのね」

「ベルド、隠れて」


 マキヨ嬢が通訳する。ベルドはジュースの瓶を持ったまま、押し入れに消えていった。千代子ちゃんが歩き出したと思ったら、火を吹き消したかのように姿が消える。わたしはぬいぐるみのふりね。

 石花は少々困惑した顔で現れた。レイストはいつも通りだけど、やはり少し戸惑ったような雰囲気はある。


「きよ。アコニ殿と話せ。末裏は体調が悪いと言って、宿に引き払ったんだ」

「マキヨ様、自由に話せそうですね」


 レイストはシャクヤの差し出した座布団に座って言う。ここで話が分からないのは、石花と千代子ちゃんだけだ。


「はい。そのようで」

「彼は来ましたか?」

「はい。います」

「それはよかった。逃げないのかと思いました。調子は悪くないですね?」

「大丈夫そうだよ、今のところ」


 シャクヤが口を挟む。いいですねとレイストは頷いた。


「ところで通訳がいなくなったのは何か」

「ちょっと驚いてもらいました。リルと私の友人が協力して」


 ちょっと?とシャクヤが呟く。レイストが苦笑いを浮かべた。


「あぁ、君は見たんですね?」

「あんなのに出会うなら帰ろうかと思った」

「相当ですね。全員に仕掛けますか?」

「次は護衛を。もう半分くらい追い払ったとのことですから、残りを追い出します。案はリルが考えます」


 うわぁとレイストは呟いて、ちらりとわたしを見た。どういう意味だ、それは。


「いい頃合いで私たちは逃げましょうか、シャクヤ」

「それがいい」


 マキヨ嬢は石花に向き直る。


「アコニ様の助手様が女性の幽霊を見たそうですよ。身体がバラバラだったそうです」


 石花はさっと顔色を変えた。そして立ち上がる。


「きよ、この衣装に着替えろ。着替えたら私との婚儀だ。いいな」


 石花をガン無視して、マキヨ嬢はレイストに話しかける。


「アコニ様、どうします? この頼りない人についてきます?」

「マキヨ様がよければ、少々ここでご厄介になりましょうか。計画も知っておきたいので。協力できることもあるかもしれませんし」


 マキヨ嬢は立ち上がったままの石花を冷ややかに見上げた。


「アコニ様は化粧道具と装飾品を用意してくださるとのことです」

「それはいい。お前が綺麗になるのが楽しみだ」


 お前呼ばわりしてんじゃねーぞコラァ。

 何故かマキヨ嬢はわたしの頭に手を乗せると、石花を見ずにお引き取りをと言い捨てた。石花は上機嫌で出て行った。


 マキヨ嬢が再びわたしの顔を覗き込む。


「え、なに?」

「どうして表情が変わらないのに表情に出るのかしら」


 えっ、バレてた?何か出てた?


 ベルドが押し入れから出てくる。レイストに手を上げて挨拶して、マキヨ嬢の隣に腰を落ち着ける。逆隣には千代子ちゃんが現れる。


「で、どうするの?」

「そうだなぁ。マキヨ嬢の衣装って白無垢? だよね?」


 わたしはマキヨ嬢の膝から飛び降りる。置いてある着物らしき服は白い。


「そうね」

「綿帽子」

「これね」

「フミさんいる?」


 マキヨ嬢が襖を開ける。座っていた二人が同時に振り返る。


「スミエさんも入って。会議しよう」


 警戒しながら部屋に入るスミエさんを横目に、わたしはマキヨ嬢を見上げた。


「人形いっぱいあったけど、あれって壊していいかな。誰かいる? くっついてる人とか人形大事にしてる幽霊とか」

「いないと思うわ」

「私もそう思う。どちらにしろ直してあげるわよ」


 他に幽霊はいないとして……。お手伝いさんたちを逃してあげないとな。


「レイスト、お手伝いさんを逃してあげてくれる?」

「喜んで」

「じゃあ、お手伝いさんたちはレイストに任せるとして」


 これはフミさんたち向けに言う。すると、スミエさんがそういえばと呟いた。


「うん? お手伝いさん逃したらマズイ?」

「いいえ。お手伝いの子たちは喜んでついていくと思います。千代子様が来る前から不気味なことが起こっていたそうで」

「どんなことかしら?」


 千代子ちゃんも知らなかったらしい。


「私たちがここへ来る前から、あの子たちはここにいるんです。荷物の搬入と一緒にこちらへ来たそうなので、一週間前でしょうか。夜はこの家には、あの子たちしかいなかったそうなのですが」


 夜、お手伝いさんのうちの一人がお手洗いに行こうと部屋を出た。この家には二人だけ。全室和風とはいえ海外、少々弱気になりながら、彼女は廊下を歩いた。


 石花の部屋の前を通る。すると、強いお香の匂いがした。部屋は少し襖が開いていた。主人はこの時不在だ。襖を閉め忘れたのだろうと、彼女は襖を閉めた。


 お手洗いを済ませ、再び、彼女は石花の部屋の前を通った。すると。


「また襖が開いてたらしいんです」


 うわぁ!いい!すごくいい!ちょっとだけ繰り返し開くっていいよね!こういうさりげなーいのやりたいけど、石花って鈍感そうだから気付いてくれなさそう。


「部屋には何か変化はなかったんですか?」

「怖かったので、確認はしなかったと」


 そりゃそうだろう。強心臓だな、ベルド。


「幽霊では……ないと思うけれど」


 こっちは怖がってるなぁ。マキヨ嬢って、見える幽霊は怖くないみたいだけど、見えない得体の知れないものは怖いんだよね。


「翌日覗いたら、謎の石像があったけれど、他には何もなかったそうです。私も見ましたが、確かに趣味の悪い像が並んでいるだけでした。押し入れも屋根裏にも誰もいませんでした。あまり詳しくは調べられませんでしたが、人の隠れていそうなところには人はいません」


 石花が高確率で部屋にいたから、細々したものまで調べられなかったのだそうだ。スミエさんたちはレイストの部下だから、あまり出入りすると不審がられてしまう。


「それもついでに調べてみるでいいですね。私も詳しく話を聞いておきますよ」


 レイストは怖くなさそうだなぁ。この人はびっくり系が苦手なんだと思うんだよね。


「じゃ、そういうことで。じゃあ、護衛を驚かすのは……どうしようかな」


 わたしは千代子ちゃんを見た。


「千代子ちゃんって人運ぶこととかできる?」

「できると思うわ」

「押し入れと屋根裏は上がれるんだよね?」

「あら面白そう」


 悪い笑みを浮かべている。理解が早い。


「ベルド、ちょっと死んでみる?」


 千代子ちゃんと話していた言葉は通じていなかったはずだけど、ベルドは楽しそうに笑った。


「面白そうだな」

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