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わたしは頭を抱えた。本当に抱えた。痛かったからだ。すごい音がしたからだ。
つまり扉に激突したからだ。
「嘘でしょ……?」
幽霊って扉素通りできないの?
だって……、だってオバケだよ?どこでも出るのが普通じゃん!壁とか扉とか突き抜けてバンバン移動してるのホラーゲームでもホラー映画でも見たことあるよ?ゾンビなら通れないの分かるよ、物体だから。でもオバケなんて空気みたいなもんじゃん!
はっとする。もしかしてわたし、特定の場所にしかでないオバケ?いるよね、特定の場所でいらっしゃる方も。学校のおトイレとか。ある意味では井戸でお皿を数える方も、どちらかといえばそういうカテゴリになるかな?
一種の地縛霊だろう。もしかしてわたしもその類なのでは。
「今、何か音がしたな?」
わたしが頭ぶつけた音だよ、ベルド。
「家鳴りですね」
わたしが頭ぶつけた音なんだよ、マキヨ嬢。
でも少々の影響はあるんだぁ。音聞こえたんだもんね。頭ぶつけた音だけど。
「それはポルターガイスト?」
「今のところ、そこまででは」
ないのか。頭ぶつけただけだもんね。
居間に行こうかとベルドが提案したので、わたしもついていく。廊下には出られた。あれ、出られたってことは、この部屋限定のオバケじゃないんだ。そういえばさっき、隣の部屋を確認した時に部屋から出てたわ。
ということは、単純に扉があったから通れなかったってこと?
「どの鍵がこの扉の鍵なんだ?」
ベルドが鍵束に苦戦するのを横目に、わたしはがっくりと膝を折り地に手をついた。
そうか。わたしは物体はスルーできないタイプのオバケなのか。オバケって扉とか無視して入ってこられるものと頭から思い込んでたから、当然わたしもできるものだと……。
つまり誰かに扉を開けてもらわないと外にも出られない、お嬢様タイプの幽霊だということだ。くぅ、お嬢様タイプと言われてこんなに嬉しくない日が来ようとは……。
そうやって考えると前世でいた幽霊の方々で、テレビから出ていらっしゃる方とか、お布団の中に潜まれる方とかはすごい方なんだろう。わたしなら物理でブラウン管を突きやぶらないとできないってことだし、部屋に鍵かけられたら入れないんだから、お布団に潜めるはずもない。お布団はちょっとやってみたかったのに……。こういう出来る出来ないはポテンシャルの差だろうか。
やっぱわたし、モブなのかなぁ。マキヨ嬢に鍵を交代するのを眺めつつ考える。いろいろやってみたかったのになぁ。わたしがこんなにできない子だとは。モブっていうよりザコじゃん。前世と違って馬鹿にされないからいいけど、横に優秀な幽霊がいたら落ち込んだかもしれない。殺されたのがわたしだけだから、……先住民いたら泣いてた。
でもまぁ、部屋に入れたらいいわけだしね。驚かせるならお風呂だよね!鏡があるし、まさか幽霊が後ろにいるなんて思わないだろうし。シャンプーしてる時に目を開けて振り返ったらいるのとかいいよね!
我ながら悪質な計画を立てるわたしの横で、マキヨ嬢が首を傾げる。




