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4 — 6

 多分、わたしはすごい顔をしたんだと思う。そして硬直した。


「もし俺に手を出したら、即刻離婚を条件に結婚している」


 ということは。


「えっ。あの女はベルドのこと、好きなの?」


 ベルドはちょっと首を傾げた。寝転がったままなのに。


「さぁ。態度からはそう思ったことはないがな」

「でもそういうことでしょ?」

「どうだろう?」


 すーごい嫌。えっと?兄の元妻が弟と結婚してその子供と不倫しようとする、そんなことある?そりゃ歴史上一人や二人はそんな人もいるかもしれないけどだなぁ。実際いたら嫌だ。

 しかも人を殺してもおかしくないような女なんでしょ?絶対好かれたくないやつじゃん。嫌だわー。


「すごい物騒なこと言っていい? ベルドのお父さんを殺して、ベルドを手に入れようとしない? あの人」


 それはないとベルドはあっさり否定した。


「父を殺して露見しなかったとしても、次の当主は叔父だ。叔父は厳しいからな。父を殺せば、これ幸いと証拠なりでっちあげて俺に告発させて殺しにかかるだろ」


 あぁ、やりそうだな、あの叔父さんなら。ニコニコしてるけど、計算速そうだし腹黒いのよね。


「そうなると殺すなら叔父を殺してからだが、あの叔父だからな。隙がない。あの女にとって、家を出されることが問題であって、そこまでリスクの高いことをするよりは現状維持がいいんだろう。予算の限りで贅沢三昧する金食い虫だからな。で、その中でも何かしら、企んでることがあるんだろ。俺はその中で必要な何かなんだろうな」


 なんだろう?ベルドが必要な何かって。でもあんなのに好かれるのはヤダな。やっぱりマキヨ嬢がいるからには、マキヨ嬢じゃないと。


「誘惑されたことある?」

「まぁ……。あるな」

「それ契約違反」

「俺から触れる分にはセーフだと思ってるらしい。触れるわけもないが」


 うわぁ、ヤダヤダ!だって息子なんだよ。血は繋がってないかもしれないけどさぁ。ベルドは平然と話してるけど、わたしはそういうのはダメだなぁ。


 あ、でもこの状況、考えると似た環境かもね、マキヨ嬢と。

 つまり今回、お互い色目を使われた嫌な相手に、お互い思い合ってる夫婦が引き裂かれようとしてるってことじゃん。絶対阻止するけどね!


 いやいや、待て待て。でもこれ、罠って言ってたなぁ。あの女がベルドに手をかけたら契約破棄だ。あの女を家から追い出せることになるのか。


「ベルド、これからどうする?」

「レイストは逃げてもいいと思ってるな。俺もあの女がそう簡単に罠にかかると思えない。かかればいいな、くらいの罠だな」


 ベルドは針金を振ってみせた。水の瓶についてたやつだ。


「ピッキング? できるの?」

「できる」


 さすがぁ!スペックが高い!


 じゃ、逃げられるわけだ。あの女が引っかからない以上、石花だけでも懲りてもらってヨシちゃん探したらいいか。


「あ。レイストはどういう立ち位置?」

「マキヨ君の居場所を知られた時点で、叔父あたりが送り込んだスパイ、ってとこじゃないか。あちらに協力するふりをして、俺に有利に動いてる」


 さっきの薬は有利とは言い難いけどと呟く。確かに。


「だが、あれだけ吐いてりゃ、ああいうお坊ちゃんは早々にいなくなるだろうしな。後遺症のない薬、雰囲気的には幻覚剤ってとこだろうけどプロがいたみたいだし、少々のリスクはあるけど比較的安全なものなんだろ。下手に拷問されるよりはいいからな、この方が」

「そうかぁ? 苦しいじゃん」

「身体のどこかを怪我するよりいいだろ」


 お!ちょっと反省してくれたんだな。怪我でもいいって言わないのは。


「そ、そっか。今は気分どうなの」

「すっきりしてる。ちょっと疲れたけど動けないほどじゃない」


 ベルドは起き上がって、天井を見上げた。


「ベッド、じゃなくて」

「布団?」

「戻った方がいいかもな。そろそろ俺の様子を見にくる頃合いなのかもしれない」


 さっと立ち上がり、寝かされていた部屋に戻る。うん、元気そうだ。わたしも後ろからついていく。

 ベルドは頭まで布団をかぶった。足を伸ばしちゃうと布団から出ちゃうらしく、もぞもぞと丸まっている。


「おやすみ」


 うん、と小さく返事が聞こえた。

※ お話の切れ目の関係で、今日は二話投稿します。これは二話目。よろしくお願いします。

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