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4 — 3

 スミエさんがとにかく食べてくださいとおにぎりと味噌汁を勧めた。マキヨ嬢はお箸をとりながら、横に座った千代子ちゃんに尋ねる。


「ところで千代子ちゃんたちはどうしてここへ」

「そりゃあ貴方、あの石花に痛い目見せてやろうと思ってね!」


 千代子ちゃんはぱぁんと手のひらに拳をぶつけてみせた。


「私が死んだ途端、愛人の一人を妻にしてね。で、おきよちゃんを探し当てたとか言って妻放り出してここへきてるのよ。もー我慢ならないっ! 私を殺して反省もせずに嫌がるあの子を妻にして、次の女、しかもあんっなに断りまくって嫌がりまくってたおきよちゃんに目を付けるなんて、もう絶対に許さない」

「現在の妻もここに潜り込んでます。あの方も千代子様に恩義があって、慕っていた方です。おきよさんと同じ、見える方です」

「あの子が協力してくれるっていうから、恐ろしい目を見せてやろうと思ってねぇ!」


 気合い入ってるぅ。つまり、マキヨ嬢を助けにきてくれたんだな!

 マキヨ嬢がわたしを見た。


「リル、得意じゃないの?」

「うん?」

「死ぬほど驚かすこと、できる?」

「うーん、チキンなら驚くかもね」

「考えてみてくれる? 驚かせるの」


 要するに脱出不可リアルお化け屋敷ゲームしたらいいんでしょ?そういうの、だーいすき!


「そして私たちの目的はもう一つ。行方不明になっている元愛人が一人いるの。その子を探すために来たのよ」


 その女の子はヨシちゃんというのだそうだ。石花が連れて来た女の子で、一番若かった。彼女のお家はお金がなくて、石花に買われてしまったらしい。


「石花に買われたらもう自由なんてないの。暴力を振るわれたって医者に診てもらうこともできないわ。だから本妻である私が全員を管理していたのよ。暴力を振るわれそうなら、私が割って入れば止まるわ。全員に連絡をこまめにして、石花に絡まれたり困ったりした時は私に言うようにしてあったの。石花にとってはうるさかったと思うわ」


 それで殺されてしまったわけだ。


 千代子ちゃんが殺されたのが石花の実家にばれて、囲っていた愛人たちは自由になった。だけど、その時は普通に出て行ったヨシちゃんは戻って来て、新しい妻に女中として雇ってくれないかと懇願した。


「石花には、ヨシさんのことはすぐにばれてしまいました。でも女中だから手を出すことは許さないとしていたんです」


 しかしヨシちゃんは突如として姿を消した。

 家の中にはもちろんいない。千代子ちゃんも一緒に探したのだ。屋根裏から床下まで調べたのに、見つけられなかった。別荘にも見当たらなかった。


「もしかして、こっちに移したんじゃないかしらと思ったのよ。ヨシちゃんは一番若くて美しい子だったし、一番最後に来た子よ。よければ女中として、悪ければ愛人として囚われてしまったんじゃないかと思って」

「こちらで見つけられたの?」

「それが見つけられてないのよ。手分けして探してみたんだけれどね。もしかしたら秘密の部屋があるのかもしれないわ」

「もしくは、ここには来ていないか……。あるいは既に殺されてしまったのか」


 スミエさんが不吉なことを言う。


 いずれにしろ、目的は石花を懲らしめることと、ヨシちゃんを見つけることだね。わたしは石花びっくり担当かな!

 腕を組んで考えていたら、スミエさんがきますよと囁いた。直後、襖が開く。


「きよ、落ち着いたかい?」


 マキヨ嬢の前に勝手に座る石花。マキヨ嬢は千代子ちゃんを見た。そして冷ややかな笑みを浮かべた。


「えぇ、千代子ちゃんが話し相手をしてくれて」


 石花はぎょっとする。そして乾いた笑い声を出した。


「千代子は日本にいるよ」

「身体はね。お仏壇にあるのが普通ですね」

「あら、仏壇なんてないわよ」

「やだ、仏壇もないんですか? じゃあお墓かしら」


 千代子ちゃんは迫力の笑みを浮かべた。


「こんな男の家の墓、入りたくないわ」

「そうですね。自分を殺した男の家の墓なんて、嫌ですよね」


 石花は慌てて立ち上がった。


「用事を忘れていたよ、ハハ。アコニ殿を待たせているんだ。また後でな」


 颯爽と出ていく。にまぁと千代子ちゃんが笑った。


「なかなか面白そうよねぇ」

「なかなかにチキンだね。ちょっと家の構造見てこようかな。あとベルドも気になるから、びょーん!」


 流れで飛び出す。すたっと着地すると千代子ちゃんとスミエさんが拍手した。そうか、スミエさんも見えてるんだな。

 上に飛んで落ちてきたぬいぐるみをマキヨ嬢がキャッチした。


「見えない方がいいから置いてくね」

「そうね。でもリル、襖開けられるかしら」

「開けられないの?」


 千代子ちゃんが人差し指をひょいと振る。ぱぁんと勢いよく襖が開いた。うっ、羨ましい!


「リルは特殊で。壁とか扉とかは抜けられません」

「あらぁ、じゃあ実体があるのと同じなのね?」

「音を立てることはできるけど、ものを動かしたりはできないの」


 ぶつかったら音が出るけど、が正しいんだけどね。


「ここの襖を開けて真っ直ぐ進めば、地下への階段がありますから。ベルド様はそこでしょう」

「分かった。ありがとう。そっちが気になるから、先見てくるよ」


 マキヨ嬢に手を振って廊下に出た。スミエさんが一緒に外に出て、静かに襖を閉める。見張りみたいな顔して座ってるけど、実質護衛だ。いつの間にか牢が城になってるじゃん。マキヨ嬢はしばらく安全だろう。千代子ちゃんがいるし、スミエさんもいるから。


 問題はベルドだ。地下ってことは拘束されてる可能性、高いよね。


 おや、石花だ。レイストもいる。あとスミエさんと同じような格好で同じように顔を隠したのが二人。どっちも女性かな。あとは護衛と通訳か。地下へ降りていく。ちょうどいいからついていっちゃお!

 わたしは走って追いかけた。

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