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レイストの連れというのは髪の短い、ボーイッシュなお姉さんだった。名前はシトリン。この時代には珍しいパンツスタイルに、ふわっとした白のブラウスに薄手のコート。おしゃれさんだ。
彼女も商人らしく、人当たりがよくてすぐにマキヨ嬢と仲良くなった。マキヨ嬢、妹属性だもんなぁ。シトリン嬢はマキヨ嬢のお姉さんとは違うタイプのお姉さんだけど、優しくて明るいし落ち着いてるからマキヨ嬢とはそりゃ気が合うだろう。今も楽しそうに話をしながら作業をしている。
というわけで、わたしはマキヨ嬢が斜めにかけている鞄に入って大人しくしている。案外とシトリン嬢とマキヨ嬢の会話が面白いんだよね。マキヨ嬢のお姉さんは押せ押せでマキヨ嬢の話を最後まで聞いてないタイプだけど、シトリン嬢はマキヨ嬢の返事を落ち着いて待ってくれる。マキヨ嬢も話しやすそうだからさ。
そもそも、今日のわたしの任務はマキヨ嬢の護衛だ。だからレイストのツテで作ってもらったヘルメットを被っている。別に頭を守りたいわけじゃない。完全に凶器なんだけど。『びょーん』で飛び出した時の。
もちろん人に当たっても大丈夫ということにはなっている。ベルドで試したから。豪速球並みだから当たると痛いは痛いけど、わたしの身体は柔らかいから衝撃を緩和してしまうらしい。……近距離だとアザになって申し訳なかったけど。
というわけで、今はシトリン嬢とマキヨ嬢が楽しくお話できているのでオッケーね。わたしの出番は正直なくてもいいと思うよ?わたしが飛び出すってことは、マキヨ嬢に何かあった時だからさ。
そして彼らの今日の作業は目録ではない。今日はしおりを探すんだって。紙のしおりらしくて、赤いリボンがついているしおりが挟まった本を探すのが目的らしい。四人はずっと、題名を確認して、ついでにそれ以外の本にもしおりが挟まってないかを確認する作業を図書室でしているのだ。
図書室はねー、確かにあのステラ嬢が言うだけあって、ご立派な図書室なんだよ。みっちり壁際に本棚が並んで、二階もあるんだから。二階へはおしゃれな螺旋階段で上がれる。一面だけ、リーリアさんの肖像画が飾ってあってそこには本がないけど、他はぜーんぶ本棚。
ここを調べるにあたって、ベルドはカーラーにあることを尋ねた。
『触ってはいけないと言われている場所はありますか?』
カーラーは黙り込んだ。しばらく沈黙した後、顔を上げた。
『図書室では、リーリア様の肖像画は外すなと言われております』
あの様子、どうも言うなって言われてたような感じなんだよねぇ。でもカーラーとしては目ざといベルドがリーリアさんの肖像画を外してしまうことを考えて、教えてくれたのだろう。
ちなみに。ベルドはその絵を横から覗いていた。
「なるほど、エレベーターだな」
絵を上にスライドさせる。取手のない真四角の扉がついていた。ベルドが押すと、静かに開く。
「これは寝そべらないと入れないだろうな。奥に上下のボタンが付いている。……よく見ると左側上部に蝶番がついてるな」
「……こんなところに入りたいとは思わないね」
「そうだな。ここに入ると扉が閉まり、ボタンを押すと上まで運ばれてポイと捨てられるんだろう」
「グラヘン殿はこれで死んだか」
ベルドは絵を戻した。
「ま、こんなものに用はない。しおりが挟まってるのは古い本だったな」
「えぇ、そうです」
シトリン嬢が頷く。一応、本の題名も分かってるんだって。わたしは読めないから効率悪いし、探してないけどね。蓋の開いた鞄から身を乗り出してはいるけど、これ飛ぶためだから。
しかしまぁ、なしてこんな集めたのか。本当に理解できない。ここは本は本棚におさまっていて積んであったりはしないんだけど、図書室の名前にふさわしく本だらけではある。
「コレクターなら垂涎ものですね。これとか、これは高く売れるわ」
「何の本ですか?」
「これは童話の初版本よ。状態も綺麗だしね。世界に数冊しかないはずよ」
おや、シトリン嬢は本に詳しいのか。
「詳しいんですね」
「私は本屋ですもの。代々ね」
なるほど、レイストが彼女を呼んできたのは本屋さんだからなのか。さすが、金にうるさそうではある。
「……マキヨさん?」
「……はい」
「私、何か視線を感じるんですが。少々失礼な雰囲気の」
「……注意しておきます」
マキヨ嬢はわたしの頭をぽんぽんと叩いた。バレたか。
わたしってザコのわりには視線とか考えてることバレるよなー。なんでだろ?そういうオーラ出てるのかなぁ。それはそれでヤバめの呪いの人形だけど。
もしくはベルドやマキヨ嬢、レイストが特別かだよね。そっちのがあるか。みんな顔いいし、主人公体質だと思うな。感知能力、ハンパないんだろう。
図書室を一通り探してみたけど、本はなかったようだ。
「となると、あと二か所か。君たちが目録を見ていた部屋と、ステラ嬢の部屋」
「俺たちの部屋は全部終わってないからな。そっちから見よう」
ステラ嬢に関わりたくない感がすごく出てる。
朝もね、ここへ来た時にわざわざお出迎えして、昨夜はどうして来てくださらなかったんですか?って。シトリン嬢を紹介してんのにだよ?無視よ無視。
そして、ちらっちらこっちみるんだよ?どうやら、マキヨ嬢に隠してるんだろうと思ってたらしい。どう?私とそういう話が出てたんだけど、みたいな。
もちろん知ってるからね、マキヨ嬢。手紙も堂々とマキヨ嬢の前で渡してたし知らないわけがない。マキヨ嬢はすんとしてた。反応するだけ無駄だからね。今のところはこらえてやろうというところ。
ベルドは冷静に、お手紙でも返しましたが私はレイストの護衛ですので、と素気無く返していた。多分内心ドン引きなんだろう。
一緒にお茶でもとつきまとおうとするステラ嬢に、仕事ですのでと切り捨てて図書館まで来たからね。わざわざ関わりたくないわな。




