表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/193

2 —20

 何回死ねば気が済むのか。ふとそう思う。だって三回目だよ?人から猫、猫から幽霊。もっとまともに転生したかった。

 よくよく思えば最初の死のことなんか覚えてすらいない。もしかしたらもっと前から死にまくってる可能性もあるな。

 次こそは普通の人に転生できますように。


「リル」


 ベルドを道連れにしてさぁ。本当に悪かった。ベルドだけでも、どっか引っかかってないかな。


「リル!」

「は、はい!」


 ちちち、と鳥の声がした。わたしは鞄から顔を出す。


「あ、あわわ、わ、わ! 高いよー!」

「高いの苦手か」

「にがっ、苦手じゃないけど、あんまり高いと、高いからさぁ……」


 下には大きな木々。緑は敷き詰められてるけど、受け止めてくれる感じじゃない。


 で、切り立った崖にところどころ、木が生えている。こんなところにも木が生えるんだなぁ。自然ってすごい。

 わたしは上を見上げた。ベルドが片腕一本で木の幹にぶら下がってるのが見えた。わたしは慌てて、でも慎重に外に出る。


「わ、わたし何したらいい?」

「動けるなら助かる。ロープを木にかけてくれ」


 うわ、よく見たら左手で掴んでるじゃん。手袋をしているとはいえ、さっき剣を掴んでたから怪我してるかもしれない。わたしはロープの先を両手で掴む。


「ちょっと待て」


 ベルドの右手がロープの先をつかみ、くるりとわたしの身体にかけた。片手で軽く結んでくれる。わたしの胸のところにバッテンを描くロープ。これなら落ちないね!命綱あるとないでは気持ちの持ちようが違う。


「落ちて木にぶら下がった衝撃で左肩が脱臼してな。動くと痛いから右腕があまり上げられない。右手に乗れるか?」


 手の甲に乗せてもらって、肩へと運んでもらう。わたしはベルドの頭を登り始める。普段の登頂がこんなところで役に立つとは。

 頭の上に乗って手を伸ばす。う、嘘だぁ!


「届かないよぉ! あとちょっとなのにぃ!」


 飛んでみる。わたしの跳躍力、低すぎ……!


 いや、でも鍛え上げた『びょーん』で飛び出せば……。いや、角度的に幹に当たっちゃうな。当たって折れたりしたらヤだな。上を越えたいんだけど、真上に飛んだら落ちてくるだけだろうし、相当うまくやらないと。あ、いや、上も斜め上も飛び出したら、他の木に引っかかる可能性まであるな。


「リル、悪いんだが」

「なーに?」


 ベルドの頭に膝をつき、顔を覗き込む。彼は上を向いていた。綺麗な明るいエメラルドグリーンの瞳がわたしを見ている。


「ちょっと振り回していいか? ロープ離さないから」


 どうやらわたしを重石にして、遠心力で枝を乗り越える作戦らしい。そっちのが楽そうだ。


「いいよ!」


 わたしはおそるおそるベルドの頭から降りて、ベルドの手元に戻った。わたしにつながったロープを少しずつ、他の枝に引っかからないように調整して下ろす。わたしはしっかりとロープに手を当てた。

 ゆーらゆーらと、ふりこのように揺れる。わぁ、これはちょっと楽しい!ブランコじゃん!爽やかな青空も相まって、気分も晴れやかー!


「行くぞ」

「はいよぉ!」


 ふわっと身体が浮く。ぐるんと景色が回った。


「アーアアー!」


 わたしは無事に幹を乗り越えた。ベルドの後ろ頭に激突して張り付く。


「成功だね!」

「おまっ、お前、本当に奇声しか上げないな」


 ベルドは笑いを堪えているらしい。声が震えている。


「今のは様式美だよ。ちょっと違うけど」

「リルの世界は大変だな……! あぁ、笑うと痛いんだがな、笑いが止まらない」


 ツボってるじゃん。


「結ぶよー? てゆーか、そんな悠長にしてて手ェ大丈夫なの?」

「うん? あぁ、手な。どちらかというと上着とシャツの袖が幹に引っかかってる。穴空いてるかもな。手でももちろん幹は掴んでるんだけど。そうじゃなけりゃ、もう落ちてるだろ」

「怖いこと言うじゃん。どうしたらいいの?」


 ベルドの指示で紐を持った。片手でもできるっていう結び方で、なかなか外れないというものだ。わたしみたいな持つだけしかできない人形でも、ベルドの頭やら手やらを足場にしてなんとか結ぶ。ベルドも動ける限り、ロープを結ぶのを手伝ってくれた。

 ベルドは何度か引っ張って強度を確かめた。


「大丈夫そうだ。ありがとう、リル」

「どういたしまして。お役に立てて何より」

「リルがいなけりゃ、俺は死んでただろうな」


 わ、わたし、ぬいぐるみに転生しててよかったぁ!


 わたしを鞄へ戻すと、ベルドはロープを足先に引っ掛け、右手でロープを持った。左手を離し、上着を幹から外す。少し顔を顰めている。痛かったらしい。


「ゆっくり降りるんだよ。ざーって降りたら、手袋してても手が大変なことになるからね」

「気をつける」


 本当にゆっくりと降下する。こういう時のベルドって慎重で安心感がある。焦らないんだよね、とにかく。妙に冷静というか。

 木々が近くなってくる。下に人がいるのが見えた。


「ベルド殿ー!」


 手を振ってるのはアストロだなぁ。おや、下でシーツ広げてくれてるじゃん。


「飛び降りてください! 下に枕と藁が敷いてありますからー!」


 確かにロープは足りてないんだよね。少々高さはあるけど、シーツを張ってくれているし大丈夫だろう。アストロとー、マットとウェッドとアストロ。


 うん?アストロ多くね?


 二度見するけど、やっぱりアストロが二人いる。ボウウェか?こういう時くらい働けみたいな?でもさっきの感じだと協力してくれそうな気配、なかったけどね。

 えっ、じゃあ飛び降りた瞬間に手、離されたりとかしない?大丈夫なやつ?


「飛びます!」


 ベルドはひらりと飛び降りた。また妙な声が出そうになるのを我慢する。

 ぼふっとベルドがシーツに沈む。藁がカサカサ音を立てた。ベルドは起き上がる。


「いって!」


 そりゃそうだ。肩外れてるんだから。


「ベルド殿、怪我は?」


 アストロ1が話しかけてくる。


「肩が外れまして」

「手も怪我してますな。これはちょっと縫わないといけないかもしれません。処置しましょう。立てますか」


 ウェッドとマットが手を貸してくれる。ベルドは少しふらついた。


「これは梯子は辛かろうな。ベルド殿、担いでよろしいか」


 マットの言葉に、どうやらここは避難通路の扉を抜けた先なのだと気付いた。ベルドが落ちるのを見て、みんな慌てて降りて来てくれたんだね。


 ということは……。あー、マキヨ嬢が。エンデナ嬢に支えられて、顔面蒼白で立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ