表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/193

2 —16

 この間着ていた上着とは別の上着を着てステッキを持ち、わたし入りの鞄を斜めがけにする。無表情で廊下に出た。扉に鍵を閉める。階段を降りて、外に出る。

 その間だけでも視線がすごい。分かるよ、ウェッドの作った指の跡がすごいから。ベルドも隠してないんだよね。アザを見せつけてるに等しい。


 少し歩いただけで、もう本当にすごい。こそこそと話をするご婦人たち、ジロジロ見る畑仕事のおじさん。それでも堂々と歩いてるベルドにもはや称賛の気持ちすらある。わたしだったらおどおどしただろう。


「ちょいと、あんた。探偵さん」


 おや、おばちゃんだ。


「大丈夫だったかい?」

「昨日は診療所まで連れて行ってくださって、ありがとうございました」

「いいんだよ。今日は…少しは元気そうだね」


 首以外、と言う言葉を多分飲み込んでるよねぇ。

 ベルドは元気なく微笑んだ。


「えぇ、少しは。妻を探さなくてはいけないから」

「そう。そうか。まだあの館に行かなくちゃいけないんだね……」


 ほんの少し、ベルドは目を伏せる。一気に憂鬱感を出してくる。

 ベルドって正直、役者だと思うんだよなぁ。人を騙すのに長けてるというか。今だって全然落ち込んでなんかないんだもん。でも見た目は『妻を奪われた新婚の探偵』だもんなぁ。


「仕方のないことだけど、もう少し私がしっかりしていたらと思うよ」


 沈んだ声でベルドが言うと、おばちゃんはぺちんとベルドの肩を叩いた。


「何、大丈夫さ。旦那様はいい人だったよ。あんたが好きで介入したわけじゃないことくらい、分かってるさ」

「そうだといいけど」


 後ろで立ち止まってがっつり聞いてる奴いるなぁ!そこまでするなら話に入って来たらいいのに。


「ボウウェ様は印章を探せって言うだろうなぁ」

「それは後回しにしたらどうだい。奥さんを探すのが先だろうに。あんた、旦那様に会ったことはボウウェに話したのかい?」

「話したんだが……。恐れているようだったけれど」

「そりゃ……そうだっただろうけど。もしかしてあんた、あの状態でボウウェに放り出されたってのかい!」

「え? あぁ、そういえば。妻を探しに宿に戻ることばかり考えていたけど、特に止められもせずに」


 おばちゃんは顔を真っ赤にして怒った。


「なんてことだい! 人としての気持ちすらないのかい、あのバカ息子! あんたがあんなふらふらなのに介抱もせずに放り出したってのかい!」

「まぁ、そういうことになるね……」

「あんなのが領主なんてとんでもない! そりゃあ旦那様だってお怒りになるさ! あんた、今日は館に行くのをやめたらどうだい」

「いや、妻を探さなくては」

「あぁ、そうか。きっと旦那様のことだ。悪いようにはしないさ。あんたのことも、こうして脅しはしたけれど……。きっとあのバカ息子を諭そうとしてやったに違いないよ!」


 ベルドは少し微笑んだ。おばちゃんはハッとして、なんだかほんわかした雰囲気になる。多分、ベルドが男前だったんだろう。


「ありがとう、お姉さん。少し気持ちが楽になったよ。あの男性がそう悪い人でないなら、妻も帰ってくるだろうから」

「そ、そうだね。気をつけていっておいでね」


 おばちゃん、ベルドの味方じゃん。

 そういえば今も絡みつくようにベルドの首筋に多数の視線は行ってるけど、悪意のある視線は少ないのよな。昨日の夜にはおばちゃんは旦那様の幽霊について知ってるんだから、今朝にはそれはもうあちこちで話しただろうし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ