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2 — 3

 多分わたしが人間だったら、表情を思いっきり崩しただろう。で、汗がだらだら出ただろう。ぬいぐるみでよかった。

 しかしマキヨ嬢の方はそうはいかない。焦った顔を隠さずに、普段は色白で綺麗なお肌がほんのり上気する。


「あ、あの」

「まぁねぇ。あなた、結婚式でもそういう顔したものねぇ」


 けっ!け、けっ・こん・しき!


「誓いのキスで真っ赤になってたじゃないの」


 誓いのキッスゥー?!


 待て待て待て待て。ベルドはマキヨ嬢のこと相棒って言ってたけど、妻っていう意味の相棒?そりゃね、気になってたよ?相棒って言ったけど一緒に住んでるからさ。そりゃ部屋は別だよ?2LDKだもんね、この部屋。でも普通に一緒にご飯食べて、お風呂とかも共用だしさ。洗濯とか料理とか一緒にやってるから、同居人なのかなって思うじゃん。

 大っぴらに聞けないしなーと思ってたら。まさか!


「お、お姉さま」


 マキヨ嬢が弱すぎて制止になってない。視線がちらちらこっちに飛んでる。バレるよ!

 お姉さんはマキヨ嬢が恥ずかしがっていると思ったようだ。間違ってないけどね。


「大丈夫よ。あなたはちゃんとベルドのことが好きでしょう? ちゃんと伝わってると思うし、ベルドなら優しいもの。今時とてもジェントルよね。まずはそうね、あなたの場合は手を繋ぐところから始めるといいわ」


 よく分かってるね、お姉さん。普通にマキヨ嬢が恋愛するなら、そうなるだろうし。馬鹿にした口調じゃないもんね。もう本気で恋のアドバイスしてくれてるじゃん。


 でもちょっと待って色々と情報量が!人形のフリっていうのも精神力使うんだからやめて、動揺させるの!落ち着け、落ち着くんだ。素数を数えたら落ち着くって前世で言ってた!そう、素数を……えっと、2!3、5、7、落ち着く?これ。落ち着いたことなかったわ!上級者向けなんだろう、きっと。


 ちょうどベルドが入ってきて、どうぞとお姉さんの前にお皿を置く。フォークとスプーンを受け取り、彼女はにっこりとベルドに笑みを向けた。


「ありがとう」


 ベルドは食事を再開する。ちらりとマキヨ嬢を見た。


「冷めるよ」

「そ、そうだった」


 マキヨ嬢の様子がおかしいのは多分気付いているだろうけど、何も言わなかった。

 お姉さんは一口お上品に食べて、美味しいわと目を輝かせる。


「マキヨは天才ねぇ」


 否定したいけど否定できないって顔してる。わたしに操られて作ってるようなものだけど、実際作業するのはマキヨ嬢たちなんだから、そんな顔しなくたっていいのに。


「仲が良さそうでよかったわぁ」


 お姉さんはぱくぱくとパスタを食べていく。一口だけ口つけて残すようなタイプじゃないんだ……。いかにもそう、前世で見た悪役令嬢感というか、綺麗な分お高く留まってそうな見た目だからかな。もういいですわ!くらい言いそうな高貴な雰囲気だけど、実際のお姉さんの食べっぷりはいい。

 パスタを綺麗に完食して、お姉さんは帰っていった。嵐のようなお姉さんだ。


 扉が閉まり、足音が遠ざかっていくや否や、マキヨ嬢は駆け戻ってきた。


「あ、あのね、リル、違うの!」

「お。おぅ」

「何の話?」


 ベルドが後ろから声をかけた時だ。再びドアノッカーの音がした。


「うちじゃなきゃいいんだけどな」


 お皿を片付けながらベルドが言う。

 しかし残念ながら、再びノックが響いた。

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