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わたしの目の前には背の高い人が立っていた。正確には影だったけれど。
上目遣いに彼を見上げる。彼はクローゼットにかかった服を眺めた後、ふぅんと唸った。あれ、まだ気付かれてない?
そう思った時だ。彼はわたしを見た。
死神探偵と呼ばれるからには青白くて今にも首刈りそうな風貌かと想像していたけれど、いたって健康的なお兄ちゃんだった。しかも男前の部類だ。避けたくなるような男前ではないけれど、標準以上の男前であることは違いない。黒い髪に青い瞳。海外の俳優さんだと言われたら信じるような、そういう顔立ち。若そうだな。
彼はわたしの前にしゃがみ込んだ。わたしは思わず息を止める。しかし彼の視線は下を向いており、わたしの足元に手を伸ばした。長い指が何かを拾う。
「ベルド様。何かいました?」
「いや? 何も」
何も?!いやいや、わたしがいるでしょうが!
しかし彼は、ほらと言って一歩下がった。そしてマキヨ嬢に言う。
「マキヨ君には何か視える?」
「何かいるようですけど、はっきりしませんね」
マキヨ嬢は首を傾げてみせた。驚くほどの美少女だ。長い黒髪、面立ちは日本人ぽい。服装は控えめなワンピースだけれど、それがよく似合っている。
「こういうことはよくあるのかね?」
お腹周りがふくよかなおじさまが尋ねる。
「亡くなった当初はこういう霊もありえますが……。これは少し不思議な感じがしますね」
霊。あぁ、そうか。マキヨ嬢は霊媒師だっけ。
霊?えっ、わたし幽霊なの?
「ではもしかしたら、殺されたメリルアの霊かもしれないのかしら」
お腹周りふくよかなおじさまの隣にいた、これまたふくよかな女性が言う。すごく嫌そうに言うじゃ、……。
おい、ちょっと待て。今殺されたメリルアって言った?メリルア殺されてるの?えっ、その殺されてるのメリルアなの?
わたし殺されてるの?
「うおおぉぉぉぉい!」
思わず叫ぶけど、誰も反応しなかった。でも構わない、今は叫びたい。
「殺人事件で殺された女の幽霊に転生しましたぁ!」
なんでだぁ!




