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 本人立ち会いの元、部屋を見せてくださいという提案には、誰も反対しなかった。


 ただ、ディジエたちは仕事があるから仕事の合間に見せてもらうことになったのと、探偵サイドが変な捏造をしないように見張りをクロヴィスとレイストにお願いすることになった。クロヴィスかレイストが犯人の可能性だってあるけれど、それは全員に言えること。彼らが結託してメリルアを殺している場合でも、何か不都合なことが出てきたら、不審な動きがあるかもしれない。

 というのが表向きの理由で、単純にクロヴィスとレイストが暇そうだったからお願いしただけのようだけど。

 あと、案外とわたしもアテにされているらしい。マキヨ嬢以外は見えないわたしだからこそ、探偵サイドが見てない間に二人のどちらかが何かしようとすれば目撃しやすいとの判断のようだ。あなたも見ててねと囁かれ、幽霊らしくない任務ではあるけど嬉しくなった。


 まずは玄関ホールをさっと見て回る。そして奥の広間。使われたことがないのが悲しい。ここもあまり時間をかけずにベルドは颯爽と歩いて立ち去った。玄関ホールを抜けて居間側へと向かう。


 次に居間。部屋に入るなり、ベルドは手前のソファの背もたれと座面の間に手を入れた。


「はい。鍵」

「よく……見つけましたね、そんなところ」


 レイストが純粋に驚いた顔をしている。ベルドは微かに笑って、鍵を振ってみせた。


「ある程度、当たりをつけていましたので」

「どこの鍵だい?」

「メリルアさんの部屋ですよ」


 二人は驚いたように鍵を見た。


「鍵は部屋にあったんじゃないんですか?」

「密室じゃなかったのかい?」

「鍵束はあの時、サイドチェストに入ってるのは見ましたよね。でも鍵を試してみたら部屋の扉の鍵だけ見つかりませんでした」


 どうやらあの時、わたしが失意の間に鍵束がサイドチェストに入っているのを皆で確認したらしかった。レイストが苦笑いを浮かべる。


「確かにあれだけ鍵があればね。まさかあの中に鍵がないとは」

「……僕、疑われてるのかい?」


 クロヴィスが戸惑った声音で尋ねた。話を聞いた時は自信ありそうな態度だったので意外だ。


「君の特等席は奥でしょ」

「そうだけど、この部屋にずっといたのは僕だからさ。僕がいた間は掃除に来たルル以外、誰も来なかったし。部屋の前を通った人はいるけど」


 レイストとクロヴィスが話している間にも、ベルドはせっせとソファを検めた。次に壁際の装飾や何も入っていない花瓶を見ている。暖炉のマントルピースには何も飾られていない。


 一通り眺めたベルドは居間から出た。次の部屋、書斎をノックする。中から扉を開けたのは濃い紫の服を着たカナリアだ。

 まとめ上げた茶髪は昨日の聞き取りの時よりずっと整っている。ジェナにやってもらったのかもしれない。メリルアがいたら、彼女たちはほぼメリルア専用メイドさんだからなぁ。

 足元は安全第一なのかペタ靴だった。ヒールの方がかっこいいけど、楽さを優先しているらしい。優先しすぎて足元だけめちゃくちゃラフになっちゃってるけど。しかもちょっとサイズが大きそうだなぁ。歩くには支障ないみたいだけど。

 昨日との明らかな違いに思わずファッションチェックをしていると、彼女は白くて丸い顔に笑顔を浮かべた。歓迎はされているらしい。


 書斎ではご立派な机が一つ、お飾りみたいにナイマーがご立派な椅子に座っていた。その後ろには大きな本棚とぎっしり詰まった本。本、読まなさそうに見えるんだけどな、ナイマーは。


「ベルド君、契約書はこれでいいかね?」


 ベルドはナイマーから紙を受け取る。サインを確認して上着に仕舞った。


「ありがとうございます」

「いつも契約するのかね」

「後々、問題が起こることもありますので」


 何の話と今にも聞きそうなレイストとクロヴィスに、ナイマーは案外と快く答えた。


「今回の事件の解決の依頼の契約だよ」

「へぇ。見せてもらっても?」


 いいですよとベルドは仕舞ったばかりの紙をレイストに渡した。レイストが商人の顔になる。


「へぇ。報酬は決まってないのですか?」

「依頼されて蓋を開けてみれば、犬猫子供の悪戯だったとかいうこともありますので」

「君に依頼される事件は殺人だけじゃないんだね」


 クロヴィスがレイストの手元を覗き込む。


「新聞が大きく取り上げたから殺人のみのように見えるだけで、当然、他の依頼もあります。とはいえ、どちらかというとマキヨ君絡みの依頼が多いんですが」

「除霊してくれとかそういうの? 本当にあるのかい?」

「多くは気のせいです。失礼、机の引き出しの中を見せてもらってもいいですか?」


 ナイマーは素直に机の引き出しを開けた。わたしはベルドの横から引き出しを覗き込む。一番下の引き出しの隠してある酒とグラスが最初に目に入った。飲みたくなる時もあるだろう、難しい奥様と強気な愛人に挟まれてるからねぇ。


「今回も本来なら勝手に鳴る人形の調査に向かうはずでした。この近くの館だと思うんですが」

「こんな大荒れの時期に来なくてもよかったんじゃありません?」

「どうしても明日、と約束を取り付けられてしまいまして」


 少々馬鹿にしたような口調のカナリアに気分を害した様子もなく、ベルドは淡々と引き出しを確認している。全ての引き出しを見たけど、大方書類と筆記用具と手帳が入り乱れていただけで特に目につくものはない。

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