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「旦那様とカナリア様は書斎でお昼をお取りになるんだ。カナリア様は食堂まで移動するのが億劫らしくてね。あたしが運んだよ。ちなみにあの二人はお昼は少し早めさ。お腹が空くんだと」
「エスタがお昼を持ってきてね。カナリアと食べた。それからずっと書斎にいた」
「エスタは食べ終わるまでいてくれるのよ。お皿をさげるためにね。私はその後はずっと旦那様が仕事をしてる横で本を読んでいたわ」
カナリアはナイマーの仕事を手伝うわけではないらしい。
その日、最初に休憩したのはルルだった。それまで愚痴っぽかった口調が和らぐ。
「あたしたちも一休みよ。エプロン外せることの素晴らしさがもう。お昼寝の後は午後のお茶の時間があるけど、それまではすっごく静かだから。ご飯食べて、ゆっくり残ってる仕事をするか、何もなければ誰かと話したり昼寝したり、自分の部屋を掃除することもあるの」
「クロヴィス様とレイスト様の昼食をご用意してから、玄関ホールを横切って居間へ。居間を片付けていると、誰かが階段を上がっていく音がしました。あの足音はカナリア様でしょうか。ヒールの音がしましたので。レイスト様の部屋を整えて……、あとはベルド様が今お使いになってる部屋を掃除しました。カナリア様の部屋の前を通って、使用人ホールへ降りました」
「食堂にはずっとついていなくていいんですね」
ベルドの問いかけに、シェリエは頷いた。本当なら、多分最後まで給仕しなくちゃいけないんじゃないかと思う。
「えぇ。食堂からはすぐに退かせていただきましたよ。あの二人は難しいことおっしゃらないので、下がっていいよと言ってくださるんです。レイスト様がコーヒーがお好きですので、一式用意しておいたら全部ご自分でやってくださるので」
「途中からシェリエが来て、話しながらご飯食べて。使用人ホールでね。ジェナは温室の世話がまだだからって作業箱持って温室に行って、ディジエは途中から話に参加したわね。雪がやまないって話になったわ。そうしたらジェナが戻ってきて、エプロン外してご飯食べてたわよ。あの子は偉いわぁ。先にご飯食べていいのよって言ったんだけどね。エスタは途中までは私たちと話をしていたけど、午後のお茶と夕飯の仕込みをしないとって台所で仕事を始めて」
「お休みの前の時間には温室にいました。雪が降ってるから燃料がいるんですけど、奥様の花、枯らしたら……困るからって旦那様が。お花は大丈夫だったから、使用人ホールに戻りました。お昼は遅くなっちゃったけど、いつもそうなので」
「私は旦那様の仕事の補助を終えて、雪がひどくなってきたので、雪かきをしようかと外に出たのですが、これが大変な雪でしたので。最低限の雪かきや氷柱などの処理をして使用人ホールへ向かいました。メイドたちは全員いました……、あぁ、ジェナは後からでしたね」
メイドと執事以外の人々は。
「レイストと食堂で昼食を食べたよ。あの男は商人だからね。話が面白くて。彼がいる時は必ず一緒に昼食を食べるんだ」
「クロヴィス様とえぇ、お昼は一緒でしたね。食堂で。いつものことです。彼は気を遣わないのでいいんですよ。食後のコーヒーを飲んで……。そういえば、エスタが二階から降りてくるのを見ましたね。玄関ホールの方へ向かっていったから、顔は見ませんでしたが」
この家の二階へ上がる階段は二つ。一つは居間から見える。もう一つは食堂から見える構造だ。
休憩後はメイドたちは掃除や洗濯物の取り込みに追われていた。忙しく行き来して、時折やりとりを交わしている。エスタはずっと台所にいたのを、複数のメイドが見ていた。
その時間帯、ナイマーとカナリアは書斎に、ディジエもナイマーの補助で書斎にいた。レイストとクロヴィスはホールで別れ、自室に戻った。
そして午後のお茶の時間帯になって、メイドたちが不審に感じ始める。
「いつもそれはそれは計ってるのかと思うくらいに正確に鐘がなるのよ。なのに、今日はそれがなくて。もしかして鐘が鳴るシステムが壊れたのかしらと思って」
「お茶の時間に数分でも遅れたら文句言われるんだからね。お湯を沸かして待機してたってのに、起きてきやしないんだから。こういう時はディジエにお願いした方がいいんだけどね。まずは鐘の方を調べてもらって」
「とりあえずお声がけくらいしておいたらってルルに提案しました。鐘が壊れてるなら壊れてるって言っておかないと、私たちが無視したんだって言われかねませんので。ついていってあげたかったのですけど、私までいるとさらに怒らせるかもしれませんから、台所にいましたよ」
この時点で、シェリエ、ジェナ、エスタと鐘を調べるためにディジエが台所にいた。ディジエは鐘を調べてみたが、特に異常はなかったそうだ。
シェリエに勧められて二階へ上がったルル。特に誰ともすれ違わなかった。
「シェリエに言われたから行ったわよ。扉の外から、ノックして声をかけたんだけど、何も。だいたい鍵がかかってたのよ。いつもは鍵なんてかけないわ。あの人が扉に鍵をかけるのは夜寝る時と部屋から出る時だけよ。困ってたらディジエが来てくれて、どうしようかって話をしてたらクロヴィス様がお部屋から顔を出したから、事情を話してクロヴィス様の部屋の中の扉から呼びかけてもらえないかお願いしたのよ」
「ルルが言うまで気付かなかったけれど、そういや静かだなって。僕なら少々起こしても怒られない確率が高いからね。扉には鍵がかかってるから、そのまま呼びかけてみたけど静かなもんだったよ」
そして発見に至った、ということらしい。




