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レイストは悪びれもせず、シェリエも証言に対して頷いた。
「他のお得意様ならメイドさんや執事さんでも商売しますがね、ここの方は話しかける隙もないんですよ。あぁでも、カナリア様には一つブローチを売りましたがね。他の方はダメです。クロヴィス? 前の日に売りつけた後でしたので。そういうわけで暇でしたので、三階まで散歩に行こうかと思ってね。外でも歩ければよかったのだけど、雪が降り始めていたでしょう? 流石に寒いのはね。そう思って階段を上がってる途中で、やいやい言ってるのを聞きましたよ。面白そうだったから立ち聞きしましたけど」
立ち聞きというか、聞こえるから聞いたって雰囲気だ。内容はいたってつまらない内容だったらしい。
「そしたらシェリエが通りがかってね。揶揄われましたね。入らない方がいいですよって忠告してくれてね。入る気にはならないけど、大迫力バトルに違いないからね。そう言ったら、彼女、笑ってクロヴィスの部屋に入っていって」
本当なら機嫌の悪い奥様入りの部屋には近づきたくないところだろう。でも仕事のある彼女たちはそうもいかない。
「クロヴィス様のお部屋を整えてたら、隣から奥様がおいでになって、シーツが汚れたからジェナを呼んで替えさせてとおっしゃって。バァンって扉をお閉めになられてましたよ。しっかり鍵もかけてね」
「あぁ、あの扉かい? あの扉は常に鍵がかかってるよ。機嫌のいい時に僕に用事がある時だけ開けるんだけど、僕は鍵を持ってないから開けられないよ。機嫌の悪い時は、たまに隣で音がしたらメイドを強襲するんだ。僕の部屋を整えてくれてるシェリエが主な被害者だね」
かわいそうなシェリエは地下にいたジェナを見つけて、仕方なく一人で行かせた。ご機嫌斜めだし、流石にディジエをこれ以上つけるとディジエが怒られてしまう。
「お昼の支度を手伝ってたのを中断して、奥様のお部屋へ行きました」
「地下からジェナが二階へ上がっていくのを見たわ。あの女、また困らせてるのねと思ったけれど、その前の喧嘩で腹が立ってそれどころじゃなかったわ」
困らせることしか今のところしてない。泣きたくなってきた。
「シーツが汚れたから替えてとおっしゃったので、シーツを引き取ってきて地下の洗濯室に行きました。汚れは……見つけられなかったけど、新しいシーツを出して持っていきました」
「くしゃくしゃに丸めたシーツを抱えて降りてきて、しばらくして畳んだシーツを持って上がって行った。かわいそうに、休憩前だっただろうにね。呼び出し食らわされてさ。嫌そうな顔ひとつしないで頑張ってたよ」
「でもこの後しばらく静かになるからね。あれぐらいの時間から奥様は昼寝するんだ。お昼? お昼ご飯は食べないんだよ。体型気にしてるからね」
案の定、静かになった。毎日のことらしい。




