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 さて、この迷惑なメリルアの殺された一日はどうなっていたのか。


「朝は私が、支度をしました。朝はご機嫌で、暑いから窓を開けるようにと言われました」


 朝は雪が降っていなかったから、ジェナが少し開けたそうだ。あの開いていた窓。朝食を運んできたルルもそれを見ていた。


「暑くなんかないわよ。むしろ寒かったわ。ジェナが開けた窓の横に立たされて寒そうだったもの」


 自分は暖かい場所で朝食を取ったメリルアは、窓を閉めるように言うとジェナに朝の支度をさせた。問題なくジェナはこなしたようだ。その間にルルは掃除とベッドメイキングをしたらしい。シーツは取り替えたのだそうだ。メリルアはトイレと風呂以外では部屋から出ない。くつろいでいる時に部屋を整えると怒られるため、このタイミングでするしかない。心の底から面倒な女だ。


 次に部屋を訪れたのは商人のレイスト。


「宝石を一つとナイフをお買い上げいただきましてね」

「ナイフとは」

「宝石のついた置物のナイフですよ。もちろん、切れますがねぇ?」

「夫人が買うんですか? 部屋には宝石類しか見当たらなかったんですが」


 ほら、とレイストは手をひらひらさせた。


「クロヴィスがね、買ったんですよ。前日にね。それをお話したら、わたくしも買うわ、とおっしゃってねぇ」


 チョロいな。


「まぁ? 無粋なデザインではございませんのでね。そこそこに優美ですから、女性の部屋に飾るのもよろしいですからね。何よりクロヴィスとお揃いですねと申し上げましたら、それはもうお喜びになって」


 チョッロ!もう少し躊躇ってくれよぅ、わたしのことなんだけど!


「ご機嫌なうちに、私は退散いたしましたよ。しばらくすると鐘が鳴って。あぁ、メイドさんを呼び出すあれです。この屋敷のは音が大きくてねぇ」

「聞こえなかったとか忙しかったなんて申し上げたら、何を言われるか。ちょうど私の手が空いてましたから、奥様の部屋に行きましたよ」


 シェリエが対応した。


「手が汚れたからルルに水を持って来させてと。手は見た目何も汚れてませんでしたけど、こういうことはよくありますから」

「タライを持って走ってくルルさんを見かけました。シェリエさんに尋ねたら、水を持ってくるようにおっしゃったって。水をかけられないかなって思って、でも私には……言えなくて。だからディジエさんにお願いして」

「えぇ、ジェナから相談されまして。ルルに追いつきましたので、一緒に入室しました。水の入ったタライを持ったままドアを開けるのは難しいでしょうし、床にタライを置いたら怒られますからね。すると水はもういいとおっしゃられて、二人もいると鬱陶しいのよと」


 呼んだくせにねぇとルルは鼻を鳴らした。


「でも助かったわ。この時期、水をかけられたら寒いじゃないの。お風呂なんか入ってる時間ないし、この制服だって二着しかないのよ。エプロンもね。みんなそうなの。でもエプロンしてなかったら怒られるのよ。乾かすの大変なんだから。いっそ水をぶっかけてやろうかと思ったけどね。平和的に部屋を出たわよ。そういえば部屋を出たら、隣からクロヴィス様が顔を出したのよね」

「隣で怒ってそうだなぁと思ったんだけどね。ルルかジェナに聞いたら早いからさ。ご機嫌どうって聞いたら、今日はダメって。ディジエもいたな、そういやあの時。こういう時は僕でも声をかけると怒られるからさぁ。その後はずっと一階の居間で酒を飲んでた」


 居間にいるクロヴィスは、掃除に入ったルルをはじめメイドたちや、通りがかったナイマーが見ていた。


「まったく、人の家で朝から酒を飲みおってとは思ったが、あの女の機嫌を取ってくれてるのだから感謝しないとな」

「見たわ。居間を掃除したもの。お酒を飲んでたの。奥様の機嫌悪かったら居間でお酒飲むのよね、あの人」

「そうだね。酒が欲しいって台所に取りにきたよ。今日は奥様の機嫌が悪いんだなって思ったね」


 そのクロヴィスは飲み始めてしばらくして、カナリアが階段を上がっていくのを見た。居間からは二階に上がる階段が見えるのだ。


「大喧嘩してるのが一階まで聞こえてさ。何を言ってるかまでは聞こえなかったけどね」

「離婚しないあいつに業をにやしていたんだよ、カナリアは。私も大いに別れたい気持ちはあるが、あれはやれ体裁だなんだと言って離婚届にサインしないのだ。カナリアは書類を持って飛び出していったよ。追いかけたら長ーい喧嘩に巻き込まれることになるから、もう放っておいた。私は書斎で仕事をしていたよ」

「そうそう、喧嘩してるのをレイスト様が立ち聞きしておられましたよ。隠れもせず、廊下に突っ立っておられたので。レイスト様、立ち聞きですかって揶揄ったら、そうですよって」

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