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「合わないわ」

「そのようだな。つまりこの部屋は密室ではなかったってことだ」

「鍵はどこへ行ったんでしょう」

「鍵をかけた人が持っていったんだろ」

「鍵を持ってる人が犯人かしら」

「持ってたらね」


 すごい単純なことだけど、鍵束が鍵束してるから、一つくらいなくなっても分からないのだ。鍵をかけようとしなければ分からないほど、鍵があるんだし。


 どうして密室と思ってたんだ。あ、いや、実際、鍵かかってたんだもんね!うん。密室には間違いないんだけど。

 ……わたしが密室だと思ったのは、起きてすぐ出られなかったからだ。幽霊だから鍵は動かせないし、かといって扉を透過して出ることもできないお嬢様タイプの幽霊だから出られなかっただけで。なんか悲しくなってきた。


 でもこうなると、トリックも何もいらないわけで。犯人は鍵を閉めて出ていっただけの人ということになる。じゃあ楽勝じゃない?


 居間へと向かう二人についていきながら、わたしは改めて廊下を眺めた。絵やら装飾やらで豪華な廊下だ。広い。

 部屋もそうだったけれど、大きなお屋敷なのは間違いない。宝石箱もあれだけあったんだし富豪なんだろうね。わたしはその家の夫人だったわけで……。どうして生きてる時に転生できなかったんだ。心の底から悔やまれる。


 わたしの部屋は二階にあったらしい。階下に降りてすぐに居間にたどり着いた。居間には男性が四人、女性が五人。明らかに執事やメイドもいるが、各々ソファに座っている。コートを脱ぐベルドたちに、酒瓶を持った若い男性が声をかける。


「どうだい、探偵さん」


 ベルドは人当たりのいい笑みを浮かべた。マキヨ嬢と話している時と結構差がある。


「今のところはまだ何も。ところでお話を聞かせてもらいたいのですが」

「いや、先に荷物を置いて来られてはどうですか。部屋を用意しましたよ。一階と三階に」


 ふくよかなおじさんが言う。彼はこの家の主人なんだろう。

 居間に置いてあったらしい荷物を取り上げて、ベルドは頷いた。


「そうですね。では用意してもらった一階の部屋で、お一人ずつお話を聞かせてください」

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