ギルドバトルスタートです
初クエストを受注したから、装備品やアイテムの調達に行こうとギルドを出ようとした。しかしそこで自分達は、ガラの悪い男達に絡まれていた。
事の発端はポーラだ。
色を失って大の字で倒れているイフリートを、自分が背負うと言ったのに対して『ゼンジは触らんで良いのじゃ』とプリプリ怒り始めたポーラ。
プリプリのままイフリートの両足を掴み、ダッシュで出口へ向かった。万歳の状態で引きずられるイフリートは、後頭部を床にぶつけて何度もバウンドしていた。そしてそのままギルドから出ようとした。その時……
「今日はついてねぇなぁ!!散々苦労したのにこれっぽっちかよ!」
ギルドの入り口から、苛立ちを露わにした人相の悪いハンター3人組みが入ってきた。
その中の1人と、猛ダッシュしていたポーラが出会い頭にぶつかってしまったんだ。
「きゃっ!」
「おっと……君。僕がイケメンだからって、ワザとぶつかったんだよね?」
長髪の男は、前髪を手でフワリと払い優しく問いかけた。なかなかの美男子だが、どこか鼻につく。
「兄貴ぃ!こいつGランクだってよ!Dランクパーティーのオラたちに喧嘩売るとは良い度胸だよなぁ」
長髪の隣で、しゃがみ込んでいる片耳の無い男は、ポーラの落としたギルドカードを拾い上げた。
「返すのじゃ!それは妾のじゃ!」
「返して下さいだろ?それともオラたちの相手でもしてくれるのか?」
「何を戯けたことをぬかしておるのじゃ!」
ギルドカードを取り返そうと伸ばしたポーラの腕は、もう1人のタラコ唇の男にあっさりと掴まれた。
「離すのじゃ!」
「そっちの色白の姉ちゃんでも良いんだぜ?」
男達はポーラとイフリートを舐めるように見回すと、自分を見て舌打ちをした。
「君は帰っても良いんだけど。どうかな?」
長髪の男が、髪をかきあげながらウインクをした。さすがに気持ち悪い。
「兄貴が見逃してやるってよ。今なら女を置いて消えても良いんだぜ。格好悪りぃトコは見せたくないよなぁ」
タラコ唇の男は、卑猥な笑みを浮かべ、自分に対して手で追い払う仕草を見せた。
周囲の冒険者たちは視線を外し、関わるまいとしているのが見て取れる。さらにヒソヒソと、憐れむ声が聞こえてきた。
「あいつらもついてないな」
「可哀想だが、べルべに目を付けられたら終わりだ」
しかし自分は不思議と落ち着いていた。
それは、今まで様々な命の危機に直面してきたからだろう。且つ、あのロックジョーさんと行動を共にしてきた。したがって、目の前にいるガラの悪い男たち程度では、恐怖の『き』の字も感じない。
「お前らモテないだろ?そんなに、いやらしい顔をしてると尚更だな」
「ガキが!!兄貴はいやらしい顔じゃねぇ!」
「そうだ!兄貴はいやらしくねぇ!」
「僕に言ってる訳じゃないでしょ」
何だこいつら。
「お前ら頭悪いだろ」
「おい!どこまで兄貴を馬鹿にするんだ!」
「折角見逃してやるって言ったのによぉ。兄貴が頭悪いわけがねぇ!」
「僕に言ってる訳じゃないでしょ」
こいつら阿保だ。
「はいはーい!ストップです。ハンター同士の揉め事は御法度ですよ」
受付嬢のサイリーンさんが、自分と男達の間に飛んできた。
「ちょい待ちサイリーン。オメェも見てただろ?こいつが先に手を出したんだぜぇ?」
「何を言っておるのじゃ!ぶつかっただけではないか!」
「聞いたな?言質はとれた。という事で、ギルドバトルを申し込む。パーティー戦だ。そっちが先に手を出しんだ。断れないぜ?」
「彼らは冒険者になったばかりですよ。私の不手際でギルドバトルの説明をしていませんでしたのでルールもまだ知りません。そんな人たちに、ギルドバトルを申し込むなんて初耳です」
「そんな事ぁ知らねえな。ほらよ」
たらこ唇の男が、ポーラを掴んでいた手を離し、そのままゆっくりと顔を触ろうとした。
「触れるな!汚らわしいのじゃ!」
ポーラはその手を払い除けた。パチンと音が鳴り響き、男たちは汚い笑みを浮かべた。
「受けたな。サイリーンこれで文句はないな?」
「何のことじゃ!」
「お互い手を合わせるのがギルドバトル合意の合図だ」
「謀ったな!」
「お前ら頭悪いだろ?だったかな?そっくりそのままお返しするよ。場所はここで良いよ。直ぐ終わるからさ。サイリーン始めてくれるかい?」
前髪を払いウインクを飛ばした。
「……仕方ありません。ギルドバトルスタートです」
苦虫を噛み潰したように顔を歪めるサイリーンさん。
「ギルドバトルって何ですか?大体想像つくけど」
サイリーンさんに質問すると気不味そうに答えた。
「ハンター同士の戦闘は禁止されているのですが、ギルドバトルはハンター同士が合意の上で闘う唯一の方法です。ギルド職員が間に入る事が前提ですが。ごめんなさい。私が出て来たせいで……」
「気にしないでください。勝敗はどうやって決めるんですか?」
「リーダーが降参するか、全員が戦闘不能になると負けです。負けた方が勝った方の……言う事を聞かなければなりません」
「了解」
「青い君。そろそろ良いかい?先手は譲ってあげるよ」
「お構いなく。弱い方からどうぞ」
「このガキがぁ!これ以上まだ兄貴を馬鹿にするのか!」
「そうだ!兄貴が下手に出てりゃぁ良い気になりやがって。兄貴が弱いはずがねぇ!」
「僕に言ってる訳じゃないでしょ」
「兄貴がやるまでもねぇ!」
片耳の無い男が目の前で拳を振り上げた。
「バレットタイム」
自分以外の時が止まったように遅くなる。
「よいしょ」
目の前でスローで動く男を持ち上げて、たらこ唇の男の前に下ろした。そして、ポーラをお姫様抱っこで救い出す。
「ついでに使ってみるか。識別装置」
現れた識別装置越しに男達を見ると、頭の上にステータスウインドウが表示された。
「何だ、大した事ないな。これでDランクなのか」
男2人のレベルは35、6、ベルベという男は39だった。
識別装置を解除後、元の位置まで戻りポーラを下ろし、回れ右をして踵を鳴らした。同時に、バレットタイムが解けた。
「ぐわっ!」
途端にタラコ唇が、片耳の無い男に殴られ、そのまま吹き飛び入ってきた入り口から出て行った。
(女神様、こちら自衛官、
頭の悪そうなハンター達にギルドバトルを申し込まれました。正当防衛が発動していなくても、バレットタイムだけで余裕で勝ってしまいそうです。どうぞ)




