リンゴ食うか?
「ところでメロンは、どうしてこんな所にいるんだ?」
メロンはポーラに抱えられたまま、ほっぺをプニプニされている。
『それが……目が覚めたらサハギンに囲まれてたんだ……』
「昼寝でもしてたのか?」
『違うし!呪いをかけられたんだ……』
「呪い?まさかその姿は!?」
『まさかじゃないだろ!好きでこんな格好してる訳ないじゃん!呪いのせいに決まってるだろ!』
「ぬいぐるみになるってどんな呪いなんだよ」
『禁忌呪法だよ』
「メロンちゃんもですか!?」
『も?』
「そうです!私も禁忌呪法で子供の姿になってしまいました」
『そういえば……魔王の気配を感じる……そうか……貴様も呪いをかけられたのか』
「そうなんです……」
『ポーラはまだ良いよ。魔王の気配が残ってるからね。我は完全に消えてしまった……』
ん?今のは?
「良くないです。モンスターが集まって来るんですよ」
『我もそうだよ!怒り狂ったモンスターが寄ってくるし!全く忌々しい呪いだ!』
「おいおい!メロンもか!一体どんな呪いをかけられたんだ?」
『魔王の力を封印されたんだ』
ん?
「魔王の力を封印されたのですか?」
『そうだよ』
「魔王?誰が?」
『我だ。我は魔王だ。ポーラもでしょ?』
「……勇者です」
『え?魔王じゃないの?』
「はい。私は勇者です」
「ちょっと待ってくれ!メロンは魔王なのか?」
『うるさい!騙したな!放せ!放せっ!』
バタバタと暴れ出したが所詮ぬいぐるみだ。ポーラの腕の中からは脱出できない。
「騙したも何も、自分から話したんだろ」
『むぅ……』
「本当に魔王?いやそんなはずはない。呪いは魔王の専売特許だ。魔王が呪われるわけないだろ」
『誰がそんな事決めたんだよ。魔王だって呪われる。勇者だってそうだろ!』
「それはそうだが、メロンが魔王ならこの世界を滅ぼすのが目的か?」
『そんなつまらん事をするか!人間の王は世界を滅ぼしたりするの?』
「そんな事する訳ないだろ!……多分」
この世界の事情はまだ良く知らなかったな。
「こんなに可愛いメロンちゃんが魔王なはずありません」
『……ふん!鑑定したら分かるよ』
「良いのか?鑑定するぞ。識別装置」
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名前 : メロン【呪】
種族 : ディアボロスドラゴン
分類 : 滅龍
属性 : 【聖属性】
職業 : 【聖魔王】
天淵眼 : 【天使と悪魔の狂宴】
Lv : 【1】
HP : 7/7
MP : 5/8
攻撃力:9
防御力:10
素早さ:11
幸運値:0
装 備 : バハムートのぬいぐるみ
アクセサリー : 聖竜王の指輪
スキル : 【封印】
ユニークスキル:【勇者の慟哭】
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「……なんか色々おかしいんだけど」
『我を殺すんだろ……』
「どうしてそうなるんだよ」
『魔王だからに決まってるだろ!』
「ん〜。魔王は魔王だけど、聖属性の聖魔王だ」
『何だよその気持ち悪い響きは!』
「呪いで変えられたみたいだ。勇者の慟哭ってスキルがあるけど、これがモンスターを呼ぶのか?」
『なっ!?勇者という文字が我のステータスにあるなんて……でもサハギン達はずっと睨んだまま襲って来なかったよ』
「それは変だな……そこに倒れてるサハギンはメロンが倒したのか?」
『違うよ。目が覚めたら隣で死んでた。もしかしたら、呪いをかけられてこの地に飛ばされた時に踏んだのかな?』
「踏んだだけで死ぬのか?」
「転移に巻き込まれた影響でしょう」
確かに、右半分が消えたように無くなっている。しかし、仲間が倒されたのにメロンを攻撃しなかったのは何故だ?もしかしたら出来なかった?
「そうか……だとしたら……」
〔ザッ「勇者の慟哭について説明してくれ」ザザッ〕
〔ザッ『勇者の慟哭とは、勇者から発するマナと同等のものを周囲に発して、モンスターを遠ざける禁忌呪法です。なお、スキル保持者はモンスター以外を攻撃出来ません』ザザッ〕
「やっぱりそうか!」
『何がだよ!』
「勇者の慟哭は、勇者と同じマナを発してモンスターを遠ざけるみたいだ」
『モンスターを呼ぶんじゃないの?』
「逆だ」
『でもサハギンは集まってきたよ!何もしなかったけど、我の指示を聞かないくらい怒ってた』
「仲間がやられたにも関わらず、仲間意識の高いサハギンがメロンを攻撃しなかった。それはつまり、勇者の慟哭が効いてた……ってことかな?」
「メロンちゃんから離れよとしたけど、仲間が倒された仇を討ちたいという葛藤で、その場を動かなかったのですね」
『そうなの?モンスターは我に攻撃しないってこと?』
「まあ、そうみたいだな。でもメロンはモンスター以外を攻撃できない」
『はぁ〜!?何それ!?人間とか亜人を攻撃出来ないうえに、モンスターは我から離れて行くんだよね?』
「良かったじゃないか。襲われる心配がないだろ」
『良くない!我はもう1人ぼっちだ……殺すなら今だよ』
「そんなことしないさ」
『だってポーラは勇者なんだろ!』
「でも今は違います。魔王の色香というスキルで、モンスターを呼び寄せてしまう邪勇者です」
『良いな!我とは逆だ!』
「ちょっと待ってください!メロンちゃんは、モンスターを遠ざけるのですか?でしたら……」
「そう!魔王の色香と正反対の効果なんだ」
「もしかして……」
「気付いたか?今はさわぎりが切れた状態だ。でもモンスターは集まって来ない」
「魔王の色香と勇者の慟哭が、お互いに効果を打ち消し合ってるのですか?」
「おそらくそうだと思う」
『それじゃあ……我とポーラは魔王と勇者が逆になってるってこと?』
「そういう事だ。だがそれだけじゃない。2人が一緒にいる事で、互いに掛かった負のスキルが相殺されてるみたいだ」
「良かった!これでゼンジは寝ることが出来ますね」
「決まりだな」
「はい!」
『な、何が決まったんだよ!』
「メロンちゃんも一緒に行く事がです」
『我は魔王だ!勇者と共に行動なんて出来るか!』
「そんな事気にするなよ。大体、メロン1人でこれからどうするんだ?」
『むぅ……』
「メロンちゃんも仲間です」
『嫌だ!』
「よろしくな」
『嫌だと言ってるだろ!』
「そうと決まれば、まずは飯だな」
『何が決まったんだよ!聞いてるのか!』
「ほら、リンゴ食うか?」
『何だこれは!こんな物で我を釣る気か!』
「食ってみろよ。美味いぞ」
『まったく……キャ〜〜〜!何だこれは!美味すぎる』
「まだまだあるぞ」
『ちょうだい』
「また後でな。さてそろそろ出発するか?」
『良し!行こう!次のリンゴが楽しみだ』
「……見事な魔王の一本釣りでした」
(女神様、こちら自衛官、
魔王が仲間になりました。ドラゴンのぬいぐるみの魔王ですが。どうぞ)




