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ある希少種の日常 その後━  作者: 紅林雅樹
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第八話 『要注意人物の再来』

「…で、“ダイブ”しちゃったと」


真正面にいたニーニアに向け、ラフィンはいう。


「ちょっと多くないかしら? あなただけで、もう五度目になるわよ?」

「そ、そういわれても…」


“ニーニア”は困惑した表情を浮かべている。


昼休みの時間だった。

今日もいつものように体育館裏の広場にシンシアたちが集合し、円を作って昼食をとっている。


昼休みというものは、通常であれば友人らと談笑で盛り上がる楽しいひと時でしかないのだが、その日のシンシアたちの表情はやや深刻そうだ。


「うらやましーよねー」


“ニーニア”の隣にいたルシラがぽつりという。


「だいんといつも一緒にいられるなんてねー」


ルシラはやけにニヤケ顔だ。


「ねー、“だにーちゃん”?」


ダニー、と呼びかけた相手はニーニアで、そのニーニアは「ぐ、偶然だって」と弁明を始めた。


「たまたま、こう…タイミングが合っちまったようで、“俺”もよく覚えてなくてさ…」


可愛らしい顔で可愛らしい声なのに、その外見からでは似つかわしくないほどの男口調だ。


「多分、同じ魔族だからじゃねぇかな。体の相性…っつーと色々語弊があるけど、そういうのが関係してるとかで…」


ちなみにこの場には女性たちしかおらず、ダインの姿は無い。

いや、正確に表現すれば、ニーニアの“中”にダインはいた。

それは、いまとなってはもはやダインにしか為しえない芸当なのかもしれない。


吸魔行動が“行き過ぎた”場合、稀にダインという存在そのものが相手の精神に入り込んでしまうことがある。


一心同体。憑依。

ダインとニーニアは、いまそのような状態になっており、この現象をシンシアたちは“ダイブ”と呼称している。

ダインはある程度制御できるようになったとはいえ、たまに起きてしまう事故らしかった。


ちなみにニーニア本人は、ややこしいことにダインの精神の“中”にいて、いまもまだ眠りについてしまっているらしい。


「どこまでいったの?」


ダニーに向け、ストローを咥えつつディエルがきいた。


「どこまで…って?」

「昨日は“ニーニアの日”だったでしょ。そのときのエッチ…まぁ未遂なんでしょうけど、それが原因でダイブしちゃったんでしょ」


ディエルは続ける。


「私たちのときは朝目覚めてすぐにその状態が解けちゃってたけど、お昼休みになってもダイブ状態が続いてるなんて初めてじゃない」


確かに、とシンシアがいった。


「これだけ長時間続いてるっていうことは、深い眠りについちゃうだけのナニかがあったってこと…」


シンシアの予測に、「そう」、とディエルは頷く。


「つまり、未遂は未遂でしょうけど、そこそこいい線までいったってことでしょ? 見つめ合ったり手を触れる以上のことが」


そこでティエリアとラフィンまでもがダニーに興味ありげな視線を向けた。


「もしかして、未遂じゃなくて、最後までいけた…とか?」


ラフィンの追及に、「い、いや、最後までは…いってない…と思う。良く覚えてないんだよ…」、とダニーは曖昧に返答する。


「で、では、どこまでいけたのでしょうか?」


ティエリアがきいた。


「今後成功へ結びつけるためにも、思い出せる限りのことはお聞かせ願いたいです」


彼女たちは、今度は真剣な表情でダニーを見つめている。


彼女たちがただの友達だったなら、ここでダニーが昨夜の出来事を事細かに伝える必要は無い。

しかしいまは全員がダインの彼女であり、失敗続きの初エッチをどうにか成功させたいと努力しているのだ。

みんなと付き合うという覚悟と責任を背負ったいま、恥ずかしいからという理由で詳細を語らないわけにはいかない。


「じゃ、じゃあ、覚えてる部分だけ話すな」


周囲に誰もいないことを確認し、ダニーは昨夜ニーニアとどこまで進んだかを説明した。



詳細を聞き終えたシンシアたちは、全員が無言のまま弁当箱を閉じたりお茶を飲んだりしている。


「な、何かいってくれよ」


誰も口を開こうとしないので、それほどまずいことをしたのかとダニーは不安げにいった。


「やっぱ触手はやばかったか…?」

「やばい…といえば、やばい、わね…確かに…まぁ…」


赤い顔のラフィンは、同じく赤い顔をしていたディエルをちらりと見た。


「あ、相変わらずなのよ、あなたは、ほんと…」


そこでディエルは、シンシアたち全員が思い浮かんでいたであろう感想を口にした。


「あなた本人はそこまででもなさそうなのに、してくることがいちいちエロすぎるのよ…」

「え、エロいってなんだよ」

「だってそうでしょ。触手で拘束したままだなんて、どんな特殊プレイよ」


シンシアたちはダインが出す触手の“経験者”だっただけに、ダニーの説明を聞いただけでリアルに状況が想像できた。

ダインから出てくる触手はまさしく“ダインそのもの”で、見た目は透明な管のようなのに、体温も肌触りもダイン自身のものと何ら変わりない。


ただでさえ、触れられただけで得もいえぬ感覚に襲われるというのに、ダインそのものの“触感”が全身余すところなく包まれるなんて…想像しただけで身震いしてしまう。


「触手の上からあなたに抱かれて、甘い言葉を囁かれながらキスなんて…誰だって落ちるわよ。逆にニーニアはよくそこまで耐えられたって感心するわ」

「こ、これは…さらなる修行が必要のようです…!」


ティエリアは自身の身体に気合を入れている。


「ダインさんの触手さんまで相手をするとなると、生半可なものではあっという間に気を失ってしまうはずですし…」

「い、いや、そんな大げさな…」

「大げさじゃないわよ」


ラフィンが割り込んできた。


「これまで私は“そういうこと”を教えられたことがなくて、無知なりにいろいろと情報収集してきたんだけど…誰かの成功体験を聞けば聞くほど、ダインとの“あれ”は難しいってことが分かってきたわ」

「え、難しいの?」


シンシアが驚いたように反応してラフィンを見た。


「私も一応彼氏持ちの友達から色々ときいたけど、みんな簡単だったっていってたような…」

「“普通”であればそうでしょうね。でも私たちの彼氏は、ヴァンプ族のダインなのよ?」


どういうことかと、シンシアにティエリア、ディエルにルシラまでもがラフィンに注視する。


「いいわ。まだお昼休みの時間は残ってるし、何が一番障害になってるか指摘しましょう」


“何か”を察したダニーは、「あ、じゃあ俺はそろそろ…」、と席を外そうとする。


「駄目よ」


ラフィンが阻止した。


「あなたも…いえ、あなたこそ聞いてないと」

「いや、でも…」

「私たちがここまで苦戦しているのは、あなたのその厄介な特性が全てなのよ?」


それでも逃げようとしたダニーだが、即座にシンシアに捕まってしまった。


「あ、ひょいっと」

「ちょ…!」


身体は小柄なニーニアだったので簡単に持ち上げられ、足の上に座らされてしまう。


「ダニーちゃんはここでね?」


背後から抱かれ、逃げられなくなった。

そうして全員が聞く体勢に入ったのを確認し、


「みんなもとっくに気づいてるんでしょうけど、一番の障害は“感覚”なのよ」


と、ラフィンはいう。


「既婚者や異性と交際しているメイドたちに聞いて回ったんだけど、みんながいうには、触ったり、触られたりしたときの心地よさや気持ちよさは、体の部位やそのときの心情によって色々と違いがあるらしいことが分かったの。これは考えなくても分かることなんだけどね」


ふんふんと、一番無関係そうなルシラまでもが熱心に聞き入っている。


「一般的に、お互いの身体を触り合う行為…愛撫っていうものは、最終段階へ至るための行為らしいんだけど、ダインからくる感覚は、それら前段階を全てスキップしていきなり“本番”に至るようなものだと思ったわ」

「ほ…本番…」


由緒正しいセブンリンクスの生徒会長が、真昼間からしていい発言なのだろうか…。

そんなダニーの思いを他所に、ラフィンは続ける。


「絶頂…っていうのかしら? その感覚が、愛撫の段階で私たちに襲い掛かってるんじゃないかってメイドのみんなはいってたわ。許容量を遥かに超える快感が波のように押し寄せてきて、あっという間に落ちてるんじゃないかって。これはその通りだと思う」

「なるほど…」

「確かに…」


納得したようにシンシアとティエリア。


「つまり頭で処理できない快感が一気に訪れたから、私たちはいつも耐え切れなくて気を失っていると」


ディエルの台詞に、「ええ」とラフィンは頷く。


「最悪私たちが気を失っても、彼一人だけで最後まですることはできるんじゃないかっていわれたんだけど…でも“あれ”をするときはダインと感覚を共有しちゃってるから、私たちが落ちるとダインも落ちちゃうのよね…」


ダインと最後までエッチできない問題点は色々とあるが、最大の障害はダインから与えられる快感が大きすぎること。

ダイン本人から昨夜の情事を聞き、ラフィンの推測によって、改めて簡単に解決できるものではないということが分かった。


「どうしたらいいのかなぁ?」


シンシアが困った表情でいう。


「痛みとかくすぐったいのだったらどうにか我慢できるかも知れないけど、気持ちいいのはどうやったって耐えられるものじゃないし…」

「むずかしいねぇ」


ルシラまで考え込んでいる。


「ダイン…いえ、ダニーは何か名案はないの?」


ディエルがダニーに話を振った。


「い、いや、そんなこといわれても…」


ダニーはすっかり顔を真っ赤に染め上げており、恥ずかしそうにもじもじしている。

愛撫だの本番だの絶頂だのと色々と際どい台詞が飛び出し、彼(彼女?)はすっかり恥ずかしさで萎縮してしまったようだ。


相変わらず“そういうこと”には奥手で、年頃の男子のように鼻の下を伸ばしたりはしない。

安易な誘惑に乗らないのは、ある意味でダインの魅力でもあったのだが、


「あのねぇ」


ディエルがため息を吐きながらダニーの正面まで移動した。


「あなたは私たちの彼氏でしょ? だったら一緒に考えなさいよ」


手を伸ばし、彼(彼女?)のぷにっとした頬をつねり上げる。


「い、いででっ!」

「あなたの手とか触手が気持ちよすぎるせいで一線越えられないのよ? 問題の根本であるあなたが消極的なままでどうするのよ! いい加減覚悟を見せなさい!」

「わ、わがっだ! わがっだがら!」


ダニーが何度も頷いたところでディエルは手を離す。


「もう、しっかりしてよ? これだけ可愛い女の子たちがいて誰一人として手を出していないだなんて、問題だと思ってもらわないと」

「それは…まぁ…」


なかなか耳の痛い話題が続きそうだと危惧していると、


「お困りかい?」


突然彼女たちに向けて誰かが声をかけてきた。


「今日はダインはいないんだね。お休みかな?」


そういってシンシアたちの視界に現れたのは、褐色の肌をしたエル族の男子生徒。

長い髪を後ろでまとめていて、やや制服を着崩した彼は、いかにも女子受けしそうなルックスをしている。


「愛しの彼が心配だからみんな困った顔をしているのかな?」


『ユーテリア・アライン』は「きっと心配ないよ」と続けて彼女たちに笑顔を向ける。

どんな女性も虜にしてきた眩しい笑顔だったのだが、突然の珍客に、彼を見るシンシアたちは少し警戒した様子だ。


「何の用ですか?」


やけに冷たい声色で問いかけたのはラフィンだ。


「いつも他の女生徒らと()()()()やっている先輩が、単独で私たちのところにやってくるなんて」


いまや“二十股”をかけていると噂されるユーテリアの危険性については、生徒会で仕事を同じにするラフィンが一番理解していた。


「やだなぁ、そう身構えないでよ。君たちのことはとっくに諦めているからさ」


そういってユーテリアはまた白い歯を見せる。

いかにも女性の扱いに慣れた感じが、またラフィンをいらつかせた…が、仮にも先輩であるため口には出さない。


「実は“ある人”から少し厄介なことを頼まれてねぇ…」


彼は不意に困ったような表情になる。


「架け橋だなんてねぇ…僕のキャラじゃないんだけどなぁ…」

「どういうことー?」


ルシラが不思議そうな顔で問いかける。


「ああ、ルシラ様…いや、君はまだ大丈夫なんだけど…」

「んー?」

「要はラフィン君たちだよ」


ユーテリアは続ける。


「君たちもとっくに気づいているんだろうけど、“例の事件”のせいで、みんな必要以上に一目置かれる存在になっちゃったよね」


そこでシンシアたちの表情が固まる。何の話か、即座に理解した顔だ。


「世界中が注目していたあの状況で、どのメディアにもでかでかと君たちの顔が映っちゃったからしょうがないんだけど」


チラリとシンシアたちの様子を窺いつつ、彼はさらに続けた。


「七竜を倒したっていうのはよっぽどのインパクトだよねぇ。かつての七英雄より強いだなんて、そりゃみんな近寄りがたくなっちゃうよ」

「“そのこと”に関しての取材ならお断りしますけど」


先の展開を予想してディエルがいった。


「私たちが真実を語ったところでどこかで必ず歪曲して伝わってしまうでしょうし、そこから余計なトラブルが生まれる。ユーテリア先輩も良く知っていることでしょう? 『和平機構グリーン』のエージェントなんですから」


ここでユーテリアの裏の顔を明かしたディエルは、「プレミリア大聖堂に無断侵入したことや、重要書類を持ち出したことも報告しなくちゃいけなくなるんだけどな〜」、と続ける。


いかにも女性関係にはだらしなさそうなユーテリアだが、彼もまた『カラー大裁判』を勝利に導いた立役者の一人である。


「あ、あーいやいや、違う違う」


少し引きつった表情を浮かべた彼は、作り笑いと共に手を左右に振った。


「いったじゃないか。架け橋になったって。君たちの存在が学校内で浮きまくっているこの状況は、君たちにとっても他の生徒たちにとっても良くないことだから、どうにか以前のように戻してくれないかって、ある人…まぁクラフト先生なんだけど、あの人に頼み込まれちゃってね」


彼はシンシアたちの前に移動し、そのまま地べたに腰を降ろした。


「君たちに気軽に話しかけられるのは、同じ真相を知る僕ぐらいだからって、グラハム校長にまで頭を下げられて、どうにも断れなくてねぇ…。だから他の生徒たちが抱く君たちへのある種の“誤解”を解くために、君たちへの質問をまとめさせてもらったんだよ」


そういって、彼はズボンのポケットから一枚の紙を取り出した。

どうやらアンケート用紙だったようで、シンシアたちに寄せられた様々な質問が書き込まれてある。


「あのユーテリア先輩がそんなことしてたんですか…」


ディエルだけでなく、シンシアたちも驚いた様子だ。普段のユーテリアといえば、女性のことしか考えてなさそうだったのに。


「僕もやるときはやるよ。特にこの役目は僕にしかできないことだと思うしね」


答えてくれないだろうか、というユーテリアに、シンシアたちは「どうする?」とお互いの顔を確認し合う。


「いいんじゃね…い、いや、いいんじゃないかな?」


シンシアに抱きかかえられたままのダニーが、口調を改めていった。


「確かにみんな学校の中じゃ浮いてたし、特別視されすぎているように見えたもん。友達だと思っていた人が急に敬語になっちゃって距離を感じるって、シンシアちゃんもいってたよね?」


「それは…うん…」、とシンシア。


「ディエルちゃんだって友達沢山いたんでしょ? なのにあの一件からみんな距離を置くようになっちゃって、私たちやミーナちゃんとしか普通に話せなくなっちゃったもんね」

「まぁ…そうね…」


ディエルも頷いている。

現状のままでいいとは、シンシアたちも思ってはいないようだった。

ダニーは続ける。


「いい試みだと思うよ。みんなの疑問に正直に答えれば、シンシアちゃんたちは昔から何も変わってないってことを知ってもらえるはずだよ」

「ともだちは多いほうがいいもんね!」


と、ルシラ。


「遊ぶときはみんなで遊んだほうがたのしいし、おもしろいことも沢山できるようになるし!」


子供そのものの言動で周囲に笑顔と可愛らしさを振り撒き、いまやノマクラスのマスコット的存在になりつつあるルシラ。

“特待”で入学したということしかクラスメイトたちは知らされず、そのため彼女だけは誰からも分け隔てなく愛されていた。

その結果いつの間にやら沢山の友達を持つようになっており、友達が多くいることの利点を強く実感しているようだ。


「ちなみにユーテリア先輩、どんな質問が寄せられたんですか?」


ルシラの頭を撫でてから、ダニーがユーテリアに顔を向ける。


「いやまぁ、割と色々あるんだけど…ニーニア君、何かあったのかな?」


彼はやや面食らったような表情だ。


「何だか人が変わったように見えるんだけど…」


しまった。

話題が逸れてくれたと思い、口調はニーニアに戻していたものの地が出てしまっていた。


「き、気のせいじゃないですか?」


ダニーはそういって取り繕ったように笑う。


「ん〜…でもまぁ確かに、良い機会かもしれない」


ダニーを抱きなおし、シンシアがいう。


「あの一件から、こう毎日誰かの視線を浴び続けてるといい加減疲れてきちゃったし…」


これまで彼女たちはあえて意識しないようにしていたが、学校内のどこにいても何をしていても、常に他の生徒たちから熱い視線を向けられていた。


我らが英雄たち(シンシアたち)はどんな本を読んで何に興味があるのか。どんな文具を使っていて、普段どんな服を着ているのか。

その一挙手一投足全てを()()()に注視しており、シンシアたちは彼らの圧倒的な“興味”の的となっていたのだ。


現にいま、英雄たちはどんなものを食べているのか、という視線が多数向けられている。

シンシアたちの視界には入ってこないが、体育館の内側や天井、校舎側からかなりの気配を感じていた。


「昼休みの時間はそろそろ終わっちゃいそうだけど、この異常な状態が戻れるなら授業はパスしてもいいって許可はもらってるから、そこは安心してよ」


「え…ぱ、パスしてもいいんですか?」、とラフィン。


「先生方も校長先生もこの異常さには気づいているからね。早く平常に戻して欲しいんだよ」


シンシアたちにウィンクをしてみせ、彼は続ける。


「僕のミッションは、要は彼らの君たちに対する興味を全て消化し切ることだと思うんだ。君たちが何も特別な存在じゃないってことを分かってもらえれば、以前の状態に戻すことができるはず。そうだろう?」


確かにそうかも知れないと、シンシアたちは頷く。


「君たちが答えてくれたことは新聞部の知り合いの子に頼んで、記事にさせてもらう。校内新聞で張り出せば、周知徹底できると思うし。だからいいかな?」


ラフィンはシンシア、ティエリア、ディエルにルシラへと順に視線を送る。

全員が同意の意味で頷いたところで、「構いませんが」、とラフィンが代表してユーテリアにいった。


「ただし、校内新聞を掲示板に張り出す前に一度目を通させてもらいますからね。脚色が付け加えられていたり、おかしいと感じるところがあればすぐに生徒会長権限で発行停止にさせてもらいますから」

「うんうん、それでいいよ」


エージェントとして情報収集してきた経験が活きているのだろう。彼はやけに様になった動きで、ズボンのポケットから新たにメモ帳と鉛筆を取り出す。


「じゃあ質問していくね」


アンケート用紙に目を通しつつ、ユーテリアは優しい口調でシンシアたちに質問していった。

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