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黄昏のミリアム  作者: 雅流
神殿
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預言者

私は元来、子供になつかれるタイプではないのだが、私が三池沙耶の取材を終えて神殿を徘徊していると、数人の子供たちが私の周りに集まってきた


「おじちゃん、玩具をくれる人でしょ?」


ここは一応登録上は孤児院となっているのだから、子供が喜びそうなものを何か手土産にと思ったのだが、どのようなものがいいのかということが私にはまったくわからなかった。


結局は駅の近くのコンビニで風船セットとかいうのを5つほど買い込んだ

我ながら、いくら子供相手とはいえ、いかにも気の利かない喜びそうもないお土産だとは思った。


そうはいってもそれしかないのだから仕方がない、私は子供たちに風船セットをかばんから出してプレゼントした。


思いがけず子供たちは大喜びだった


「やっぱり巫女の預言だね、すげえぜこれ」


子供たちの言葉がちょっと気になって訊いてみた。


「巫女の預言っていうのはなんだい?」


「天気予報のミコが、明日ここにくるおじさんから玩具がもらえるって預言で教えてくれたの」


「天気予報の巫女?」


「そう先生はミコって呼んでる。お天気でもなんでも教えてくれるの」


この町へと取材にやってきた目的は怪しげな新興宗教に洗脳されかかっている町があるという噂だった。

ここにきてやっと新興宗教らしい怪しげな人物が出てきたようだなと私は思った。


「おじさん、ミコはあそこにいるよ、一緒に行こう」


母屋から一人の女性が出てきたところだった。


「ミコありがとう、おじさんから玩具もらった」


子供たちが寄ってきても、その女性は振り向きもしなかった。


本当に白と赤の巫女の装束を着ている。


年令的には高校生くらいだろうか。


真っ黒な髪を無造作に後ろに束ね、ほとんど化粧っ気もないが、その瞳は涼しく、一目でハッとするような美人だった。


「ねえミコ、明日も玩具もらえるかな」


「明日は誰も来ません」


「ねえねえ、明日のお天気は?」


「晴れです」


子供との会話とは思えないほどの素っ気ない返事だった。


しかも会話の間も表情ひとつ変えず、子供たちへと視線を向けさえもしない。


その巫女はまっすぐに三池沙耶のところまで歩いていくと、傍に置いてある椅子へと無造作に腰かけた。


休憩していた三池沙耶が軽やかにピアノを弾きはじめる。


音楽に詳しくない私には何という曲かはわからないが、川がサラサラと流れていくような風景がその曲を聴いていると頭の中に浮かんだ。


あんなに素っ気ない態度なのにもかかわらず、いつの間にか巫女の周りには子供たちが集まっている。


「ねえ、おじさんが風船持ってるってどうしてわかったの」


「わかったのではなくて知らされたのです」


「ふうん、それじゃあ明日の天気は」


「晴れです」


「それも知らされたの?」


「そうです」


「でもさあ、いつも誰に知らされるの?」


「神様にです」


「でも生神さまは今日はいないよ、遠いところに行ってるんでしょ」


「先生に知らされるのではなくて、天にいる神様に知らされるのです」


「天ってどこ? お空の上?」


「いいえ人間には行くことも知ることもできない場所です」


「ねえねえ巫女さん、私は将来アイドルになれるかな?」


「なれません」


「え~、いやだ~、私アイドルになりたい」


「あなたはアイドルにはなれません、先生の使徒になります」


「使徒ってなあに? 生神様のお友達になるってこと?」


「違います、先生のお側にいて先生のお役にたつ者のことです」


「それに私がなるの?」


「そうです」


「そうかあ。。。使徒になると何かいいことある?」


「世界が平和になります」


「ふうん、でも巫女の預言だから私はきっと使徒になるんだね」


「アイドルになりたかったのになあ」


私は子供に訊いててみた。


「巫女の預言っていうのはそんなに当たるのかい?」


「当たるとかはずれるとかじゃなくて、何が起きるかわかっているみたいなの」


「前にもそういうことがあったの?」


「明穂ちゃんは学校でいじめられていたの」


「明穂ちゃん学校に行かなくなっちゃったの」


「お部屋からもでなくなっちゃった」


「でもある日、生神様がお家にいって明穂ちゃんをここに連れてきたの」


「そして明穂ちゃんに巫女が預言したの、学校に行かないと天罰がくだるって」


「でも明穂ちゃんは行かなかった」


「そうしたら天罰がくだって武くんが死んじゃったの」


「武くんっていう子が明穂ちゃんをいじめてたの?」


「そう。でも天罰がくだって自動車に轢かれて死んじゃった」


「生神様が、まだいじめている子がいても、その子を恨んじゃダメだって」


「だってその人は天罰が下る、かわいそうな人だから」


「天罰が下って、その人が死んだら、いやな気持になるでしょう?」


「だって、その人が死んだのは君がいじめられて、そのせいで天罰が下ったのだから」


「君のせいで人が死ぬなんて、嫌な気持ちになりたくないよね?」


「それならば赦しなさいって、心から赦せば大丈夫」


「いじめられても君が赦していれば相手はいじめたことにならない」


「それなら天罰も下らないんだって」


「生神様が来てから、いじめをする子なんて一人もいなくなっちゃったけどね」


「だから赦す相手もいないんだけど」


「明穂ちゃんも、未来くんも今は学校に行ってる」


「未来くんも登校拒否だったの?」


「そう」


「明穂ちゃんは武くんが死んで、すごいショックで口がきけなくなっちゃったんだけど」


「生神様が神様に頼んで赦してもらったの、二人とも神様に赦してもらえたの」


「だから今は元気に学校に行っているよ、まだ口はきけないけど」

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