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黄昏のミリアム  作者: 雅流
幽霊の館
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ホーンテッドマンション-4


「なるほど、この家ね」


オンボロ車から降り立つと二人は古びた屋敷の前にたった


「トムの家なんていうから、ちっこい家かと思ったらたいそうなお屋敷じゃない」


黒髪の女はまったく躊躇する様子もなく玄関の扉に近づくと思い切りドンドンと手荒にノックした


屋敷は静まり返って手荒なノックにもなんの反応もなかった


少年が黒髪の女の顔を見あげて聞いた


「ねえミコ、ここにはどんな奴が住んでいるの? さっきの奴らみたいな黒んぼの大男?」


「黒んぼなんて言わないの、それは差別用語よ」


「どんな奴かは私も知らないの、先生は「彼」と言っていたから男だとは思うけど」


「どうして先生は彼がここにいるって知ったんだろう? ミコが預言したの?」


「預言? そんなものないわ、でも先生が彼を連れてこいと言うのだからここにいるのよ」


「全然なんの音もしないけど本当にこんなポロ屋敷に人が住んでいるのかなあ?」


「先生が言うんだからいるのよ、現に私もあなたも先生がどうやって知ったのかはわからないけど、見つけられたでしょ」


「そうだね、でもそうだとすると子供かもしれないね」


「そうね今まではほとんどが子供だったから」


「でもどうするのさミコ? なんの反応もないけど」


「窓からでも忍び込む?」


「まったくあんたはガキのくせにどうしてそういう悪いことばかり、どこで覚えてくるんだか」


黒髪の女は、あきらめた顔で念のためドアのノブに手をかけた


「あら。開いてるみたい、ラッキーね入ってみましょう」


「大丈夫? 他人の家に無断ではいったりして警察につかまらない?」


「窓から押し入ろうとしていたガキのセリフとは思えないわね」


「大丈夫よ、デトロイトの犯罪検挙率は8% それも犯罪と認知されるのは殺人とかの重犯罪だけだからね」


「他人の家に無断で入ったくらいで警察は来ないし、ましてや逮捕なんかされるわけもない」


「それよりは中にはいったとたんに住人に撃たれて死ぬほうがよっぽど怖いわ」


「それじゃあ、ますます入って大丈夫なの?」


「さあね、でも私たちは今日ここで死ぬことになってはいないから大丈夫なんじゃないの?」


「こうしていても仕方ないからさっさと入りましょう」


二人がドアをあけて中にはいってみると屋敷の中はひどい状態だった


ありとあらゆる家具が乱雑にひっくり返っており、本や食器なども床に散らばっている


その時


パンッという高い音がして何かが二人のほうに飛んできた


それは少年の額の真ん中に命中した


「うわっ」


少年が驚いて額をぬぐうと、湿った赤いものが手を濡らした


「リョウタ、よく見てごらん、ただのプチトマトよ」


黒髪の女がそう言い終わらないうちに、屋敷全体が地震のようにガタガタと音をたてて震動しはじめた


「どうやらゴーストのおでましのようね」


震動はますますひどくなり、食器棚から皿がはじけ飛ぶように二人のほうへと飛んできた


今度は少年も心の備えができていたのだろう


飛んできた皿は少年の手前20cmほどの空中でいったん静止し、そしてそのままポトリと床に落ちた


それが合図だったかのように部屋中のありとあらゆる物が二人をめがけて空中を飛んできた


しかし、それらはすべて皿と同じように二人には当たらず、その手前で床に落ちた


二人の手前にバリケードのように飛んできた皿やら家具やらが山積みになっていた


黒髪の女が部屋の奥に向かって叫んだ


「無駄よ、ここにいるリョウタの力はあんたより強いの」


「私たちはあんたと争う気はない、私たちの先生があんたに用があるって伝えにきただけ」


「あんたがここで何をしているのかは知らないけど、いつまでもここにいるわけにもいかないでしょ」


「私たちと一緒に来れば、先生があんたにいる場所と役割をくれるわ」


「信じられるかはわからないけど、あんたはそのために生まれてきたの」


返事はなかった


その代りに、大きな革張りの椅子が空中を飛んできた


その椅子もまた、二人の手前の空中で静止した


しかし重たそうな椅子は床へは落ちなかった、何かの力と力が均衡したかのように空中に浮いたままとどまっていた


しばらくして椅子は飛んできた元の方角へとすっ飛んでいき、壁にあたって大きな音をたてた


黒髪の女が例のデトロイト訛りで叫んだ


「いいわ、今日は帰る。 でも考えときな、あんたは私たちと来るしかない」


「この子のことはわかったでしょ、あんたと同じ力をもっている」


「ずっと一人でここにいるの? 私たちのところにはあんたと同じように両親のいないのが何人もいる」


「私たちと一緒にきて自分の人生を見つけるのがあんたのためだよ」


それでも屋敷の奥からはなんの返事もなかった

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