市長3
総理、官房長官からお電話です
「総理、大変だ。 岸田が倒れた」
「倒れたって? いったいどういうことだ」
「脳梗塞らしい、救急車で運び込まれて今はICUにいるが危険な状態らしい」
「マスコミがふざけやがって天罰だって大騒ぎだ」
「もともと血圧が高かったし、脳梗塞ぐらい、どこにでもある話だろ」
「だけどあの物議を醸した天罰発言から一週間もたってないからな」
「あの市長、あれから叩かれまくってすっかり沈黙だったけどな」
「岸田議員、さきほど他界されたそうです」
岸田議員が脳梗塞で倒れ、そのまま他界すると世間はなんともいえない不穏な静けさ包まれていった
まじで預言者なの?
まさか、そんなわけないけど。 ちょっと気味が悪いよね。
政治家はみんな年だからさ、脳梗塞くらい普通におきるよ
でも内田市長ってもともと地元じゃ預言者って呼ばれてるらしいよね
それじゃあこれが初めてじゃないってことか?
天罰が怖くて反対陣営の投票には行けないってか?
それってファッショじゃん
内田市長辞任が報道されたのは、それから間もなくのことであった
「今の国会と官僚体制のもとでは特区構想は実現が難しいと判断しました」
「すべては私の力が至らなかったことによるものと考えております」
「特区構想は公約ですので、公約が実現できないと判断したからには市長に留まるべきではないと考えます」
「岸田議員の訃報と市長の辞任には関係があるのでしょうか?」
「辞任をされてこれから市長はどうされるご予定ですか?」
「政治的活動はお続けになられる予定ですか?」
「芸能界への転身というような噂もあるようですが?」
「公にでるような活動は今後は一切行わないつもりでいます」
内田が市長を辞任してからも楽名の神殿には人が続々と集まり始めていた
内田がマスコミで話題になったことがきっかけとなり、楽名の神殿についての記事を目にすることも増えていた
巫女姿をした内田を見るだけのために町を訪れる者もいた
そんな中で天才ピアニストの三池沙耶がが地味な慈善活動として障害のある子どもたちや社会に適応できない子供たちを立ちなおらせているという話が口コミで広まっていた
全国から、そのような子供たちが集まりはじめていた
神殿の数もいつのまにか3つ、4つ、5つと増えていった
経済的な支援も全国から集まり、子供たちの数は30人近くまでに増えつつあった
そしてそれらはまた全国から集まるボランティアによって支えられていた
しかし楽名たちの活動には大きな変化はなかった
楽名はいつも子供たちと他愛もない話をしているだけだし、三池沙耶のピアノを子供たちは何よりも楽しみにしていた
巫女は天気や明日のことなどだけで、人の物議を醸すような預言はしていなかった
それにも関わらず、子供たちの変化は劇的だった
全国からなにかしら身体的障害、精神的障害をおった子供たちが噂を頼ってここにたどりついていた
様々な場所で様々なことを試したあげく絶望するようにしてたどりついた者も少なくなかった
症状や障害はそれぞれ様々であったが、そうした子供たちに共通していたことは
なにかしらの暗さというようなものを背負っていることであった
それが神殿を訪れ数週間、数か月と暮らすうちに陰はすっかりと消えて、明るく楽しそうになっていくのだった
楽名、内田、そして時の人となりつつあった三池沙耶もマスコミの取材は一切受けなかった
それでも救いの神殿の噂は、それを必要とする人々の間で確実に広がっていったのだった




