第二の人生を謳歌中 な2人
「何? 手前はケーキの洋酒つぅか、酒の類がダメな感じなんか?」
顔を手で覆い翁も、
「果実酒、……洋酒が駄目です」
アップルティーを飲んでいく。
「んなの言ってたらケーキ食えねぇじゃねぇか。あ。んじゃ洋酒入りのチョコもNG的な人間か! 翁ちゃんはっ」
喜々とティラミスを食べ続けていたミドリが。
少し、腰を上げると翁の皿から、ミルクレープをフォークで差し。
自身の皿の上に置く様子に、「あ」と翁も小さく漏らしてしまう。
しかし、ミドリはおかまいなしに頬張る。
「かーいそぉねェ~~君w」
食べ終わると席を立った。
手には皿があった。どうやら、追加らしい。
【60:00:47】
ケーキの大きさは正規品に比べれば、一口サイズ程度だ。
だから余計に食も進む。
「……よくもティラミスだけ、そんなに食えますね」
「好きだからね。幾らでもだよwwww 君も料金の元取るくらいの勢いで食べなきゃダメだぜぇ」
しかし、口腔内は甘ったるく。
アップルティーからコーヒーに翁は代えた。
「あの日。いつの間にか帰ってましたね、……群青翡翠さん」
伺うようにミドリを見た翁。
酔いは、少し覚めている。
「はァ゛??」
真っ赤な目が翁を射抜いた。
「……って。その、お宅が名乗ったから。そうだと思ったのに、……なんか、髭の蛇苺翡翠って人が、早乙女ミドリって名前を言うし。どっちが、本当のお宅の名前なのかな、って……」
目を反らし、唇にカップをつけて中身を飲んでいく。
そんな翁にミドリも頭を掻いた。
「でも。授業で習った群青翡翠さんは去年死んだって言うし。そんなに、同姓同名がいる世界じゃないと思うんです。おれぇ」
淡々と翁はミドリに――群青翡翠に憶測を突きつけていく。
それには翡翠も苦笑する他ない。
「他に、誰かにこの話しはしたのか? 手前は」
「してないですよ。する、必要なんか。ないでしょう?」
上目遣いで翡翠を見た翁の視線に。
「そ。群青翡翠は死んじまったの! 今のオイラは、……ボクぅは第二の人生を謳歌中♡」
前髪を掻き上げて、はにかんだ翡翠――ミドリ。
それに翁も頷いた。
「多分。お宅ならおれの、……事情も知ってるんですよね?」
翁の言葉に、ミドリも紅茶を飲んだ。
それはつまり、無言の肯定である。
「なんで。おれと接触したんですか?」
「別にぃ。野良の《翁》を初めて見たから、からかいたくなっただけだよぉう」
本当と本音と、裏は押し留めて飲み込む。
下心がありありだから、声をかけたのだ。出会ったのだ。
「野良って……まぁ、野良って言えば野良ですけど……」
ショートケーキを頬張る翁は腑に落ちない表情だ。
それにはミドリも、
「もう嫌なら。声もかけねぇけどぉ? そぉするかぁ?」
ティラミスを頬張った。
そんなミドリに翁の目が涙で揺れた。
「今さらそんなことされたら、おれのメンタル崩壊しそうなんで。止めて下さい」
翁が席を立ち、ケーキを取りに行く。
その後ろ姿を見ているミドリ。
「ほんとに扱いやすい奴ぅ。なぁ、未来ちゃん?」
宙を引っ掻くと、後方未来の姿があった。
それには後方も、引き気味の表情をミドリに向けた。
「ぃ、いつから気づいてたの? 翡翠さんったら」
余所余所しくも聞く後方にミドリも。
「いつからならいいのかなぁ?」
不敵な笑みを向けた。
それには後方もほくそくんだ。
「流石は《蛇苺の王》ですねw 群青の嫡男なのに突然変異の《純潔種》」
「ぅっせぇよ。ばぁあかぁあっ!」
裏拳で後方の顔面を勢いよく叩きつけた。
思いもしないことに後方も避けられずに。
「っだ!」
鼻を強打してしまい、鼻血が噴き出し滴り落ちた。
「これにこりたら。ちったぁ、自重するこった」
「そぉじま゛じょ゛う゛が」
鼻先を抑えると、後方も姿を消した。
ミドリは肩を揺らして笑った。
ツボにはまったのか、長い間。
「? 翡翠さん。ケーキのお代わりしないんですか??」
「……ミドリで呼べっつぅの! はァー~~」
席を立つと、ミドリは翁の腹を勢いよく殴った。
「かっは!」
前のめりに倒れそうになった翁から、皿を受け取り。
テーブルに置き、耳元で囁いた。
『オイラの人生の邪魔をすんじゃねぇ』
そして、そのまま席へと乱暴に落とした。
腹を抑える翁。
「さてと。ティラミスを――」
「なぐなってまじだよ゛、……ティラミス」
「はァ!?」
翁の胸ぐらを掴むミドリの表情は蒼白だ。
上下に揺らされるがままの翁。
「調理中だと思いますぅうう」




