バイキングの時間
私服に着替えて翁が向かったのは。
『パパ? どうして――《トーキョー区》に来たんです?』
カグヤも首を傾げるように。
第三都市で、一般的従業員が好む場所。
一番賑やかで、騒がしい第三都市に来ていた。
「ゃ。あの、……こっちに来る前に、調べてた店があってさ? そこに行きたいなぁ~~ってw」
ポケットに携帯を入れ、イヤホン越しにカグヤと話す。
遠目で視れば、電話をしている人に見えるだろう。
マイペースな翁にカグヤも、
『まるで独身最後を愉しむ旅行のようですね』
嫌味たっぷりに言う。
「よくアメリカの映画にあるようなやつのこと? はちゃめちゃで、すっげ~~馬鹿なことしちゃってどったんバッタンなwwww」
しかし、翁はそんな毒に気づかない。
「流石に、それはないでしょ!」
◆
世間は14:OOである。
「この時間からさぁ~~有名なケーキ屋さんでバイキングがあるんだよ」
『……ケーキバイキング、ですか。そんなことよりも、早く、旦那様を探した方がいいんじゃないのかしら?』
カグヤに言葉に翁も眉間にしわを寄せた。
そして、
「んじゃ。またな~~」
電源を切るのだった。
それが最大の失敗とも気づかずに。
ポケットからメモ帳を出せば。
それには付箋が沢山と生えていた。
「住所的に、ここ……のハズだな?」
翁が立ち止まった先には。
【バズ・ザ・バズ】と書かれた古めかしい看板があった。
「あったぁ~~♡」
拳を握る翁の視界に、見慣れた頭が見えた。
入り口の前で、うろうろと。
煙草を咥えた赤い頭の男がいる。
「……えぇ、っとぉ? 早乙女、ミドリさん?」
「あぁ゛? ……あっれぇ?? 君、どうしているのぉう??」
翁に気がついたミドリが、少し頬を赤くさせ。
目を泳がせるのだった。
「それはこっちの台詞でもあるんだけど、……ひょっとして。バイキングに来たんですか? ミドリさんもw」
翁ははにかみ、そう言い頭を掻いた。
「ここのケーキ、美味しいって口コミも、星も沢山あったし。まぁ、おれはそういうのは気にしないけど、一度は食べたいですよねぇ? ケーキをお腹いっぱいw」
ミドリは翁の言葉に、煙草を吸う。
すぅうぅ――……
「そぉ、なのよねぇ。そぉ、そぉうwwww」
っふ、ぅうう~~……
「? なんで入んないです? もう、バイキングの時間じゃないですか! 行きましょうよっ‼」
柱に寄り掛かりミドリが看板を指差した。
表情は不機嫌を通り越している。と翁は思えた。
「?」と翁も首を傾げて、その看板を腕を組み睨んだ。
「えぇー~~っと?」
【90分ケーキバイキング 14:00~18:00】
・大人 1人様 ¥1800
・カップル限定(男女ペア) ¥2000
・こども(小学生) ¥800
・幼児 ¥300
「金額は普通じゃないですか? ホテルとかよかお手頃だと思いますけど??」
「っはぁああ!? あ゛ぁ゛?? っこ、ここだっつぅにぃい゛い゛っ‼」
バンババン‼ とミドリが看板の、違和感の箇所を叩いた。
それには翁の目も丸くなってしまう。
「ぇえっと? ……カップル限定(男女ペア)¥2000、って?」
文字を声に出して読み上げた。
そして、首を傾げた。
「男女って何!? カップル限定で2000円って何?? 1人が1800円ってさぁ~~何ぃいい?! 食う時間も、だいだいの食う量も同じか、ちょっと多めかの差なのに、っさぁ‼︎ シングル様に手厳しくねぇええっ??」
怒涛のミドリの叫びに。
「はぁー~~……」
(どうでもいいし。時間も勿体ねぇしぃ~~もぉうぅうう~~‼)
翁も涙目で頷くしかない。
「つぅうこってw ねぇ? お願いがあんのよぉうぅ。翁君wwww」
身長差もなく、顔の位置も合い。
肩の位置も丁度良く。
がし! と強く掴まれてしまう。
「っは、っひ!」




