万華鏡の視界の中の2人
バクバクバクバクバクッッッッッ!
(ぅ、うううー~~)と翁が倉庫の前で、立ち竦んでしまう。
そんな彼の背中を百目鬼が、ポンポン。と優しく叩いた。
「百目鬼君」
「大丈夫さ、俺が――翁ちゃんから周りを守るからw」
垂れた目が、にこやかに微笑み。
そんな彼の表情に翁も、
「頼むな! こればっかしはおれでもどうにも出来ないからさっ!」
大きく頷くと百目鬼の頭をわし掴みにして撫ぜた。
そんな2人のやり取りに、室星はさらに《機器》で評価を記入していくのだった。勿論のこと、翁の評価はだだ下がりである。
隔離授業:⑬ 実践基礎 担当教員 室星剛太郎
ガッコン! と鉄の扉が堅く閉められた。
中の重い空気と、冷たい温度に翁は身震いをした。
そして、そのまま室星は授業を始め出す。
――《変態化》の授業に移行する。この変態化を何故、行うかと言うと。《異人》たちは人間の体温に反応をする。逆を言えば、人間以外の感知能力が乏しいと言うことでもある。
だから、《決闘》の回避には、変態化は必須と言うことだ。ただ、血の気の多い《従業員》たちがそれを無視し、隊を編成強行を行う場合もある。
そして、その《変態》は《P硬貨》のみでの購入となる。――
「っつ!」
ガタガタ、と身震いをさせる翁の身体は。
大粒の汗が浮かび上がっている。
「もう無理な感じか? 翁っ」
「――~~っぐ!」
顔を、横に振るも――すぐに縦に振る。を何度となく仕草をする翁。
どっちなのよ、と百目鬼も思うのだが。
「室星先生ェー翁ちゃんが、具合悪くなったってェーほら。こんなに!」
床に膝をつけ、荒く身体を動かす翁の様子に。
室星の表情も変えず見ると。
「だから? 終わったら出すよ、それまでは横に転がしておけばいいのさ」
冷淡に言い放った室星に百目鬼の表情も強張った。
「はァ゛??」
睨む百目鬼に室星も目を細めて見下ろした。
「このまま死んじまったら――」
「不慮の事故。一般に《殉職者》の扱いとなる」
掴み掛かろうとする百目鬼の足首を。
息絶え絶えに翁が掴んだ。
「!? 翁、ちゃんっ」
「……ん。も、ちょっとよくなったから。ごえんなぁ」
呂律の回っていない翁の様子に、
「っわ、かった!」
唇を突き出し百目鬼も身体の態勢を戻した。
翁もゆっくりと立ち上がり、口許を手で覆い隠した。
(気持ち悪い、……目も、痛い)
視界が徐々にだったが、万華鏡のようになっているのが分かる。
それを誰も、言わないとことを見ると。視えないのか、と。
ぐるぐると回る万華鏡の視界。
(本当に、気持ち悪ィ~~)
そんな翁の体調を考慮することなく。
室星も、授業を再開させた。




