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約束の契約

 耳元に聞こえる男の声は荒く息吐いている。


(何、この変態っ)


 思わず翁も、携帯から耳を離してしまうのだが。

 すぐに、戻し聞き返した。


「お宅の花嫁になったつもりなんかないし。嫁ぐ気もねぇし、つぅか。おれが娶る側の、新郎ポジだし」


 自身は花嫁ではないことと、遠回しに男であることもいう。

 しかし、電話口の向こうの男は――尾田ダンマルだ。


 ――『《永遠の輪》の意味をご存知ないんですか? 名の通り、末永く生きる伴侶の為の道具なんですよ?』


「それは知り合いに2回、聞かされたから知ってっし! つぅか、お宅の兄さんの電話で不意打ちに電話すんの止めてくんない?? 切っていいかな!? 眠いからさぁ!」


 苛立った口調で言い放った翁に。

 ダンマルも、深く息を吐いた


 ――『何を言ってるんですか? 私の番号を着拒否されているじゃないですか! ですから、兄さんが持ち歩かない社内携帯を拝借してお掛けしてるんですよっ!?』


 その言い返しと、言い返せられない翁も。

 口をへの字にさせることしか出来ない。

「……それは。知り合いのおじさんがしちゃったんだもん、……おれじゃないもん……」

 たどたどしくも、小さな声で言い返す翁だった。


 ――『速攻。解除しろっ!』


「ぁ、とでする。うん……」


 ――『今、すぐにっ!』


「分かったぁ」

(カグヤぁ~~お願い出来るかな??)


(いいですよ。っえい! はい。完了しましたよ)


 渋々、カグヤに言い着拒否を解除すると。

 耳元から切られた音が鳴った。


「あれ? 切られちゃった……ま、いっか! 寝よ寝よ~~」


 携帯を放って寝っ転がると、


『パパ。尾田ダンマルの旦那様から着信ですよ♡』


「出なきゃ、ダメぇ~~?」


 枕に顔を埋めた翁にカグヤも、

『ええ。夫夫同士できちんと話し合った方が、後々と円満にいきますからね。そぅだ♡ 立体映像で相手の顔や、態度を見ましょうか。もちろん、あちらからはこちらは見えませんからご安心下さい♡』

 喜々と両手を回す様子に、翁も「繋いでー」と諦めの声で言った。


「ふぁいぃ~~もっしもっし。弟さん」


 ――『尾田ダンマルです。君の夫ですよ、名前で呼んでください』


 翁はベッドから起き上がり胡坐をかいた。

 カグヤに指先でテーブルの上を差す。

 それに頷くとカグヤも、そこに向こう側のダンマルを映し出した。


「……そんなのはいいよぉ。んで、こんな夜中に何? さっきまで、お楽しみだったじゃないデスカァー~~」


 語尾も棒読みにダンマルに翁も言う。

 それにはダンマルも、

 ――『君を苦しめようと思いましてね。私も、まだ19歳と若いですし。性欲は人一倍ある方なんです。元々、ヤる予約もしていた女性なのでSEXをさせてもらったんです、……っが!』

 淡々と説明を、まるで浮気目的を言う、徐々に口調も荒くなっていく。


「へぇー~~性欲かぁ。おれ、もう歳だし。ヤりたいとかは最近は思わないかなぁ」


 18歳、年齢詐称の実際26歳の翁も。

 そう言い漏らしてしまう。


 ――『まさか! 私まで、こんなっ。もろに《永遠の輪》の影響が身体しんたいに現れるなんて! 頭の中が君でいっぱいなんですよ! この責任を、どうとってくれるんですか!? っふ、ぁ』


 熱のある声に、翁も首を傾げ。


(もう少し、鮮明になるか?)


(……いいですが。あまり、そのぅ、……はい、分かりました)


 さらに鮮明になったダンマルの姿は。

 下半身が裸で、こともあろうに股間の箇所を上下にと。


「っぎゃ!」


 ――『? なんですか? 急に、変な声を出したりして。ああ、私の声に興奮をしているんですね♡ 《初夜》も終えてない上に、私も傍にいない。ふふふ。もう熱いどころじゃ――』


「で。何? 用件は??」


 素っ気なく下半身を視ない様に。

 ダンマルの顔を見る翁だが、カグヤの視線は股間に釘付けだ。


 ――『……君、指輪を嵌めてるんですよね?? どうしてそんなに、平然とされているんですか?』


「は? もう電話切っていいか? 1時、回ってるしさぁ」


 立体的に映し出されたダンマルの頭上には。

 通話時間と、現時間も浮かび上がっている。


 ――『そんなことよりも、君は私に謝らなきゃいけないんじゃないですか? 4日の自宅謹慎から、1週間の自宅謹慎になったあげくに。本社に出頭要請をされて、事情聴取をされるんですよ?? 身に覚えのないことでですよ‼』


 大きく口を開けて吠えたダンマルに。

 思わず翁もベッドの上から下り。


 机の前で正座をして、俯いてしまう。


「ふぁいぃ~~それわぁーあのぅ。すいませんでしたぁ!」


 ――『誠意が足りませんね。そんな言葉なんかじゃ』


 きっぱりと吐き捨てたダンマルに翁も。

 映像のダンマルを涙目で見上げた。


「……じゃあ。どうすりゃあいいんだよぉう」


 ――『逢って下さい』


「いや。それ以外で!」


 翁は顔を高速で左右に振った。

 会えば、流されてしまうと思った。

 そして、言い負かされてしまうのも目に見えるからだ。

 

 ――『じゃあ、写メを送って下さい。毎日です。後は、社内のサイトでアカウントをつくって、そこで毎日、何をしたか、あったかを書いて下さい!』


(それって。ツイッターじゃないの?)

「ぁ、うん。分かったぁ~~じゃあ《GG》で登録すっから。これでいいか?」


 腕を組み、足を組み外した翁。


 ――『良しとしましょう。しかし、今後のことは後日、きっちりと話し合いましょうねっ。それでは、おやすみなさい。私の《花嫁》♡』


「誰が《花嫁》だっつぅの! おやすみっ!」


 ようやく切れ、解放された翁はそのまま床に寝っ転がった。

 そんな彼にカグヤは。

『あの旦那様♡ 2回も射精ってましたよ♡ ど変態さんですねぇ♡』

 口許を抑えて、顔を耳まで真っ赤にさせていた。


「さてと。寝よ寝よ……」


 大欠伸をした翁は、そのままベッドに戻るのだった。

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