夜も深まり暗闇になる
少なからず。
毎日、会社に行くしかない。
それは日課だからだ。
◆
「ごっちそうっさっまっでっしったぁー~~っっっっ‼」
「ご馳走様でした」
「はいはいw ほらほら、食器くれぇ~~きっちんとお片付けしてくんなっ」
つまようじで歯をほじりながら双竜は2人に言う。
言われた2人は「「はー~~い」」とシンクに持って行った。
「洗う? ……洗えるか? 表ちゃん??」
「あー~~まぁ。おう」
腕をまくった2人に双竜は首根っこを掴まえた。
「いいから! そのまま二階の部屋か、テレビでも見ていろ!」
のっしのっし! とソファーの上に下した。
2人の顔は不満を示している。
「「はぁあ~~いぃ……」」
鼻歌交じりに食器を洗う双竜の背中を横目に。
2人は二階へと階段を上がって行く。
その音は水によって双竜には聞こえていなかった。
ラッコの人形を持ち抱える翁の様子に、
「その人形ちゃん。返したら? 表ちゃん」
百目鬼がラッコの人形を触った。
「言って来たら、……返すよ」
素っ気なく翁が抱きかかえた。
彼は可愛い人形や、グッズの収集癖があり。
自身の部屋も、一緒に引っ越してきた人形が、クローゼットの中に隠されていて。
さらに、ベッドの中にも数体いる始末だった。
「そうしなね。んじゃ、おやすみ」
「ああ。おやすみ、百目鬼君」
隣同士の部屋で、扉の前で手を挙げて。
2人は部屋に入って行く。
Myroom:① 百目鬼 重
彼の部屋は、昨日の入室にも関わらず。
すでに、9畳内は散らかっていた。
今は服とペッドボトルだけだが。
もう少し先の物語では、悪化した事態になっており。
双竜との喧嘩が勃発するのである。
だが、それでも百目鬼は治らない。
「っはー~~疲れたぁ~~」
ベッドに身体を放り投げて寝そべってしまう百目鬼。
壁の時計は【19:41:――】を差していたのが視えた。
少し、肌寒い室内で作業着を器用にも寝ながら脱ぎ捨てると。
毛布を被って寝入ってしまった。
一旦寝入ってしまった彼が。
朝まで起きることはなかった。
Myroom:② 翁 表
「ラッコ♪」
室内で翁はラッコに頬ずりをする。
スキップをしてクローゼットを開けた。
瞬間。
「あ」
ズラッと押し込められていた人形の雪崩が起こってしまう。
翁の頭上から降る人形に、彼自身も床に腰を据えた。
「みんなぁーこのラッコちゃんが、今日からみんなの家族だぜ♪」
膝の上に置いたラッコの頭を翁は優しく撫ぜた。
「さてと。みんな、中に戻ってなぁー」
っせっせっと。翁は一体一体を抱き締め、頬ずりをして中に入れていく。
猫に、狸にフェレットに金魚に恐竜。
様々な形と、毛並みの違う人形たちがクローゼットの中へと。
ついには収納が終わり額を手で拭う翁の表情は明るい。
ただ、ラッコの人形だけは手元に残された。
「名前、……どうっしょっかなぁw」
ベッドに置き作業着から部屋着に着替えていく。
半袖にボクサーパンツ。
そう呑気に翁が鼻歌を歌っていたときだ。
リーンリーン、……リーン
「? 携帯が鳴ってる、な」
思いもしなかった相手からの。
電話がかかってきたのは。
「誰、か――……っつ!」
液晶画面に浮かび上がっていた。
相手の名前は――
「ぉおおぉオ、尾田ダンマルっ」
硬直してしまった翁の身体。
指すらも動かなくなってしまう。
しかし、電話は切れることなく鳴り続けた。
ごっきゅ! と生唾を飲み込むと液晶をスライドさせた。
「っも、……もし、もし?」




